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「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
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印刷2014/10/04 00:00

インタビュー

「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた

 少し前の話になるが,東京ゲームショウ2014には,AMDの幹部であるDavid Bennett(デイビッド・ベネット)氏とRitche Corpus(リッチー・コーパス)氏が訪れており,4Gamerは会場で二人とコンタクトを取ることができた。2014年3月8日に掲載したインタビュー以来の登場となるBennett氏は,アジア太平洋および日本(Asia Pacific and Japan,以下 APJ)メガリージョン担当副社長。Corpus氏はAPJメガリージョンでゲームデベロッパやパブリッシャとの協業およびサポートを担当する部門の責任者だ。

左から順にDavid Bennett氏(Corporate Vice President, General Manager - Asia Pacific and Japan, AMD),Ritche Corpus氏(Director, AMD Graphics Business Unit, APJ Mega-Region, AMD Far East)
画像集#002のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた

 そんなBennett氏とCorpus氏との対談なので,当然のことながら主なテーマは今後のビジネスやゲームバンドルといったところになるのだが,実際には,それ以外にもいくつか興味深い話を聞くことができたため,今回はその内容をお伝えしてみたい。


来日の目的,1つは「国内におけるMantleのサポート拡大」。日本市場向けのゲームバンドルは今度も強化


4Gamer:
 お二人ともお久しぶりです。まずは,このタイミングで来日した目的を教えてください。

David Bennett氏(以下,Bennett氏):
DQX
画像集#005のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
 ご存じのように,最近の弊社は,ハードウェア関連で日本市場に特別な試みをいくつかやっています。日本市場限定モデルとなる「Radeon R7 250XE」(以下,R7 250XE)の投入や,スクウェア・エニックスさんとの協業による,PC版「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」(以下,DQX)のバンドルキャンペーンなどですね(関連記事)。
 今回は,これらを展開いただいている日本のパートナーの方々に,新しい情報を紹介するため,やってきました。たとえばR7 250XEの価値をお伝えしたり,といった感じですね。スクウェア・エニックスさんをはじめとする,ゲームメーカーさんとの関係を深めていきたいと思っています。

Ritche Corpus氏(以下,Corpus氏):
 私はAMD本社で全世界規模におけるゲーム関係のパートナー管理を担当しています。今回はDavidとともに日本のメンバーをサポートするため来日しました。いまDavidがDQXのお話をしましたが,日本においては,もっともっとエキサイティングなバンドルをしていきたいと考えています。

Bennett氏:
 Ritcheの発言に付け加えると――今日の時点で具体的に発表できることはないのですが――我々としてはMantleでも日本のゲームメーカーさんと協業を進めていきたいと考えていまして,今回二人でやってきた理由の1つはそこにあります。近々,Mantleに関して何か発表できるかもしれません。

4Gamer:
 それは興味深いですが,要するに,日本のパブリッシャから出るタイトルにMantleが採用されるということですか? それこそスクウェア・エニックスやカプコンがMantleのサポートを検討しているとか……。

Bennett氏:
 えーっと(笑)。
 繰り返しになりますが,まだ具体的にお話できることはありません。ただ,1つだけ。スクウェア・エニックスさんやカプコンさんとはすでにパートナーとして協業させていただいていまして,Mantleでは新しい会社さんとも,より広いパートナーシップを結んでいくという目標があります。

4Gamer:
 おお,それはそれは。楽しみにしています。ちなみに今回,お二人とは別に,Mantle関係の技術者は同行しているのでしょうか。

Corpus氏:
 Mantleのエンジニアは頻繁に来日していますし,将来的にも来日するでしょう。そのような(Mantleの技術者の)来日については我々が交渉やマネージメントといったことをしていますが,今回の来日について私の口からはなんとも言えません。

Bennett氏:
 では,私からお答えしましょう。同行していますよ。この発言で何か問題が出るようなら私が責任を取ります(笑)。

 2013年は,PlayStation 4とXbox Oneという最新世代の家庭用ゲーム機に私達の製品が採用されたことで,ゲーマーに向けてAMDの名前を大きくアピールできたと思います。それを踏まえて今年はというと,PCゲームで躍進する年という位置づけです。なので,いま重視しているのはパートナー各社との関係強化ですね。今年の残り,そして来年と,強気に攻めていきます。

画像集#006のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
4Gamer:
 バンドルについて言うと,AMDでは世界市場において,Radeon搭載グラフィックスカードを購入すると,リストアップされた複数のゲームタイトルから好きなものを選んでフル版をゲットできる「Never Settle Forever」キャンペーンを実施していますよね。非常にユニークで,かつ効果的だと思いますが,一方で,この手の全世界が対象のキャンペーンだと,ゲームタイトルのラインナップと日本のゲーマーの好みがズレることが多く,実際,Never Settle Foreverでもその点は否定できませんでした。

Corpus氏:
 はい。

4Gamer:
 なので,日本市場限定でDQXのバンドルキャンペーンが始まったのはとてもいいことだと思うのですが,一方で,「キャンペーンのスタートが遅すぎる」という問題もあるのではないでしょうか(※PC版DQXの発売は2013年9月。対してDQXバンドルキャンペーンが始まったのは2014年8月)。
 DQXの発売とバンドルキャンペーンがほぼ同時に始まっていれば,もっとアピールできたと思うのですが。

Bennett氏:
 私が日本市場を担当しているので私からお答えします。
 私達は,日本市場にぴったりハマるようなバンドルタイトルに強い関心を持っています。Never Settle Foreverのラインナップに入れるか,あるいはDQXのように日本市場へ特化したキャンペーンとして実施するかは別にして,何かしら日本市場向けのバンドルが必要だと思っています。

 いずれにしても,今回は日本のパブリッシャと協業した久しぶりの――というか,もしかしたら初めてかもしれませんが――バンドルキャンペーンです。その経験を通していろいろと学んだことも多かったと思います。

画像集#003のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
Corpus氏:
 「初めて」ですね。今回私達は初めてスクウェア・エニックスさんと協業し,日本でバンドルキャンペーンを実施しまして,そこで,ロジスティクス(logistics,ここでは「ビジネスにおける統合管理」くらいの意味)的に多くの作業が必要になることを学びました。
 キャンペーンの骨子を作ったり,公的な処理を行ったり,契約書を締結したりといった作業が必要だと分かったわけです。

 この経験を糧に,次回はもっと早くできるようにしたいと考えていますし,実際,(キャンペーン実施タイミングの問題は)すぐに改善できると思います。

4Gamer:
 改善に向けた具体的な動きで,すでにスタートしたものはありますか。

Bennett氏:
 バンドルキャンペーンの改善という点について言えば,日本のリソースを拡大させるという投資も行っています。

4Gamer:
 それは日本にバンドル関連の担当者を置いたということですか。

Bennett氏:
 そうです。バンドルキャンペーンに関して専属のリソースを割り当てました。また,ゲームパブリッシャさんと接点を持つスタッフも拡充しています。

4Gamer:
 外部からだと,ここ1〜2年は森本さん(※日本AMDの森本竜英氏)に案件が集中していたようにも見えましたが……。

日本AMDの森本竜英氏(※9月27日のイベントより)
画像集#004のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
Bennett氏:
 社内事情をよくご存知のようですね(笑)。確かに森本はマーケティングのリーダーなので,彼もバンドルに関与することにはなるのですが,パブリッシャさんとのやり取りは,必ずしも彼一人で対応できるものではなく,また,他の仕事をやりながらバンドルの面倒を見るのが難しいと分かったので,他のメンバーを入れたというわけです。

Corpus氏:
 通常,我々はパートナーとの接点になる人間を3名置く体制を取っています。リレーションシップを管理するアカウントマネージャーをグローバルに置いて,その下にマーケティングのオーナーを置いています。森本はこのオーナーですね。オーナーはある契約におけるマーケティングの全要素をカバーするのが仕事です。
 もう1人は技術面の担当者で,この担当者がデバッグやテスト,Q&Aといった技術的な内容をサポートします。

 日本でもこの体勢になったので,バンドルのサービスをもっと充実させていけるはずですよ。


「現在のRadeon搭載カードは,必ずしもAMDの期待した国内販売価格にはなっていない」


4Gamer:
 現状の課題についても聞かせてください。現在,AMDのGPUは,同じ価格帯で比較すると競合より優れていることが多いと感じているのですが,しかし,その「同じ価格帯」が,北米市場に限っての話になってしまっているケースが多い印象も受けます。この点が,Radeonの新製品が日本市場でいまひとつ上手く立ち上がらない(=発売と同時に人気とはならない)ことにつながっていたりはしませんか。

Bennett氏:
 確かに,たとえばRadeon R9 200シリーズではローンチ時に競争力がある価格にならなかったということがあったと思います。それにはいろいろな理由があったのですが,そのときに学んだので今後は改善していけると思います。

4Gamer:
 具体的にはどういう経験を積んだのでしょう。

Radeon R9 290X」リファレンスカード
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Bennett氏:
 当時は,例外的な事情がありました。Radeon R9 200シリーズを発表した当時,世界規模でBitcoin現象(※仮想通貨BitcoinのマイニングにはRadeonが有利という情報が広まって,人気となった)が発生し,Bitcoinを“採掘”している人達がこぞってRadeon R9 200シリーズを購入したため,(とくに値下げをしなくても)売り上げが非常に好調だったのです。しかしそれは,競合製品との比較において,ゲーマーの期待には必ずしも応えられない価格設定でもありました。

 その後,Bitcoin現象はさまざまな理由により収束したわけですが,そのときにゲーマーはもう,高止まりしていたRadeon R9 200シリーズを避けて,すでにほかのグラフィックスカードを購入した後だった,というわけです。
 ここで私達は,非常に厳しい現実を見て,大きなミスを学びました。同じことは二度と繰り返しません。

4Gamer:
 ただ,現在でも,完全に改善されたとはいえないと思いませんか。

Bennett氏:
 私達の製品は世界規模での価格設定になってしますが,日本ではご指摘のとおり,必ずしも私達の期待した販売価格になっていません。もっと日本の(販売)パートナーと話し合っていかねばならないと考えています。

 販売価格は,最終的には日本のパートナーとの交渉によって決定されるわけですが,ただ,インターネットを通じてユーザーは世界の情報を得ていますよね。その点はパートナーの方々も認識していただく必要はあるのかなとは,正直思います。

4Gamer:
 今後,さらに改善の方向へ向かいそうで安心しました。
 日本市場といえば,先頃,R7 250XEを日本市場限定で投入しましたが,その経緯を聞かせてください。

R7 250XE搭載カード
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Bennett氏:
 最大の理由は,私達が日本市場を重視していることを示すためです。グラフィックスカードとAPUで市場シェアを高めていくことが日本市場におけるミッションです。日本の方々は,日本だけに向けた特別な提案というものにとてもよく反応してくださいますから,そこを狙ったというのもあります。
 R7 250XEの市場投入は初めての試みで,もう少し売れてくれたら本当はもっと嬉しかったのですが(笑),それでも結果には満足しています。今後も,ゲームのバンドルや特別なハードウェアといった,日本に対する特別な提案というものを続けていきたいと思っています。

4Gamer:
 R7 250XEはエントリー市場向けモデルですが,ミドルクラス以上のグラフィックスカードでも展開される可能性があるということでしょうか。

Bennett氏:
 はい,可能性はありますし,実際に検討していますよ。まだ具体的にお話はできませんが,期待していてください。

4Gamer:
 R7 250XEのような製品は誰が提案しているのでしょう。日本のパートナーですか。それとも台湾などのパートナーだったりするのでしょうか。

Bennett氏:
 実は,以前インタビューいただいたときにアイデアが浮かんできたんですよ。なので,4Gamerさんがきっかけと言えるかもしれません(笑)。
 ただ,そういったアイデアを実現するには,お客さまの声やパートナーの声をよく聞き,ニーズを把握する必要があります。そのうえで,APJメガリージョンのヘッドクォーターに持ち込んで協議し,最終的には台湾のパートナーと調整して製品化したということになります。

 なので,今後もいいアイデアがあったら,ぜひ教えていただきたいですね。私がAPJのヘッドクォーターに持ち帰って検討しますので。


Never Settle Foreverで「日本語パック」を選択できるようになる!?


4Gamer:
 Ritcheさんに伺いたいのですが,Never Settle Foreverのようなバンドルキャンペーンは,グラフィックスカードの販売促進に,かなりの効果があるものなんでしょうか。

Corpus氏:
 もちろんです。ただ,先ほどDavidがお話ししたように,どのリージョンでも受け入れられるというタイトルを1つ見つけるというのは,なかなか大変なことです。
 しかし,ときには誰もがプレイしてみたいと思えるようなAAAタイトル,たとえば「Destiny」(PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360)であるとか,「Dragon Age: Inquisition」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360),「Battlefield 4」(PC / PS4 / PS3 / Xbox One / Xbox 360)といったものはありますよね。私達は,そうしたAAAタイトルをバンドルできないか,常に検討しています。

4Gamer:
 Never Settle ForeverにそういったAAAタイトルが入ることもありますよね。

Corpus氏:
 ええ。Never Settle Foreverでは,他社に真似のできないサービスが実現できたと思います。1枚のグラフィックスカードに1つのゲームがバンドルされているのは珍しくありませんでしたが,10タイトルや20タイトルから好きなものを選べるというのは,これまでになかったものです。
 なので,Never Settle Foreverプログラムは非常に大きな成功を収めています。

TOMB RAIDER
画像集#010のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
4Gamer:
 そんなNever Settle Foreverに関して,2つ,「こういうことができたらいいんじゃないか」というのを思っていたので,提案させてください。
 それは,おそらく日本独自の販売方式についてです。「TOMB RAIDER」(PC / PS3 / Xbox 360)などいくつかのタイトルで,Steam配信版において,日本語の言語パックが「Japanese Language Pack」として別売りになっているのをご存じですか。

Corpus氏:
 いえ,知りませんでした。そうなんですか?

4Gamer:
 細かい話は端折って簡単にお話しますと,日本で買えるSteam配信版のTOMB RAIDERは英語などいくつかの言語に対応する一方で,日本語で楽しみたい場合は,ボイスと字幕が入った言語パックを追加購入する必要があったのです。

Corpus氏:
 お金がかかるんですよね。おいくらですか。

4Gamer:
 Steamなので,発売から時間が経ったいまでは安価になっていますが,売り出し価格は30ドルでした(関連記事)。

Corpus氏:
 ゲーム本体に追加して30ドル支払うんですね。それで日本語パックは売れたのですか?

画像集#011のサムネイル/「日本向けの企画を今後も実施する」「カードの国内価格はなんとかしたい」――AMD幹部2名に日本市場攻略のカギについて聞いた
4Gamer:
 Steamでは売れたかどうか公開されないので分かりませんが,少なくともSteam内のTOMB RAIDER日本語レビューには「お勧めしません」が並びました。
 ここで伺いたいのは,たとえば日本語パックをNever Settle Foreverのバンドルキャンペーンに加えることはできないのか,という点です。Never Settle Foreverで日本語パックを選べるようになると,「海外で人気らしいけど,英語版だからプレイしない」というような人もプレイできるようになるので,喜ばれるのではないかと思うのですが。

Corpus氏:
 それはとてもいいアイデアですね。そのようなものが別売りになっているということ自体,私は知らなかったので,いいことを聞きました。今後,パートナーと言語パックのバンドルについても話し合いができると思いますよ。

4Gamer:
 日本語にはじめから対応しているタイトルも少なくないだけに,日本語パックが必要な一部タイトルは本当にもったいないと思うんですよね。

Corpus氏:
 正直にお話すると,バンドル時の契約では,アジア地域でいつリリースされるのか明記されていないことが多いんですよ。もっというと,「まず北米でリリースしてみて,成功したら他の地域でも出そう」という動きになることが多く,弊社とパブリッシャとの契約時点では,日本だけでなく,中国や欧州での発売時期も未定というケースは少なくありません。
 なので私のほうでも「米国以外の地域でどうするつもりなのか」は確認する必要があると思いますが,言語パックをNever Settle Foreverの中に入れるというのは,さらに付加価値を高められるアイデアだと思います。

Bennett氏:
 APJの代表として私からRitcheの部署に言いたいのは,もう少し率先して日本の状況を把握して,日本のリリースのタイミングを計った上で契約に盛り込んでもらいたいということですね。

4Gamer:
 期待しています。
 もう1つは,“Never Settle Forever for Japan”的なものができないか,ということです。先ほどの日本語パックもそうですが,たとえば日本で流行しているFree-to-Playのタイトルに向けたクーポンなども選べるようにすれば,形になるのではないかと思うのですが,いかがでしょう。

Corpus氏:
 Free to Playに特化した形のサービス自体はすでに実装しています。Never Settle ForeverでAAAタイトルを選ぶ代わりに,Free-to-Playのゲームを1〜3タイトルくらいを選ぶと,それぞれ30〜50ドル相当のクーポンがもらえるといったサービスですね。
 ご質問に答えると,“Never Settle Forever for Japan”をできるかできないかといえば,できると思います。Davidがサポートすると約束してくれれば,ですけど(笑)。

4Gamer:
 それは面白そうですね。

Bennett氏:
 4Gamerさんもいろいろなデベロッパとお話をされていると思うので,もし今後このタイトルが“Never Settle Forever for Japan”にあるといいなというものがあればぜひ教えてください。

4Gamer:
 そうですね……。これから正式サービスを控えているという意味では,「World of Warships」とかでしょうか。

Corpus氏:
 Wargaming.netの? あれはいいですね。gamescomで私もWorld of Warshipsを見て,すでに彼らと話はしていますから,楽しみにしていてください。


TrueAudioとTressFXは,今後もゲームデベロッパのニーズに応じて進化


4Gamer:
 冒頭で,Mantleのお話が出ましたが,AMDにはほかにも,「TrueAudio」や「TressFX Hair」がありますよね。このあたりの今後はどうなっていますでしょうか。

Alien: Isolation
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Corpus氏:
 TrueAudioとTressFX Hairには,共通の特徴があります。それは,「それをフルに活用できるタイトルでこそ大きな効果がある」というものです。すでにご存じでしょうが,「どんなタイトルでもTrueAudioやTressFX Hairの効果がある」というわけではありません。
 たとえば,TrueAudioを採用したPC版「Alien: Isolation」では,真っ暗闇の中を歩いて行くような状況が生じるので,プレイヤーは音から多くの情報を得なければありません。そういうシーンでは音のリアリティや品質がとても重要で,そういう局面でこそ,TrueAudioは絶大な効果を発揮するのです。

 ちなみに,TrueAudioでは,現在もデベロッパからのフィードバックを受けて改良を進めており,次のバージョンの検討も始めています。現時点でも高い評価はいただいているのですが,「もっとパワーが欲しい」「サラウンドサウンドにおける位置の認識周りを強化したい」という要望は多くのデベロッパから寄せられています。

4Gamer:
 ただ,TrueAudioって,GPUやAPUに組み込まれたハードウェアDSP(Digital Signal Processor)の機能を使っていますよね(関連記事)。簡単に「パワーアップ」と言っても,それをやろうとするとハードウェアから刷新することになって,難しいのではないですか。

Corpus氏:
 さまざまな検討を行っているところです。デベロッパから要望されている機能の中には,ミドルウェアレベルの最適化で対応可能になるものもありますし,「それをやるとしたらハードウェアの開発が必要」というものもあります。最終的にどうなるかは,具体的なニーズの動向によって決まることになるでしょう。ソフトウェア側で対応するのか,新しいハードウェアを作ることになるのかは,デベロッパからの要望に応じて都度検討していきます。
 TressFXも同じです。TressFX HairはもともとTOMB RAIDERのデベロッパであるCrystal Dynamicsからの要望を基に,髪の毛を表現するために作ったものです。なので,すべてのユースケースに対応するわけではありません。今開発しているTressFXのバージョン2では,別のデベロッパからの要望を基に,草とファーに対応していく予定です。


「日本のゲーム市場はAMDにとって非常に重要」

「『日本だけの企画』を今後も続けていきたい」


4Gamer:
 Davidさんにお尋ねしますが,3月にお会いしてから,だいたい半年くらい経って,その半年の間,アジアにおけるPCゲーム市場は堅調だったように思います。しかし,PC市場全体は少し落ちているようにも見えるのですが,その点,APJを率いる立場からはどう見えていますか。

Bennett氏:
 PC市場は落ちているか,という質問の答えは,YesでもありNoでもあるという感じですね。
 コンシューマ向けのPCマーケットを見てみるとやや落ちた感じがしますが,これから少しずつ戻ってくると考えています。というのも,タブレット市場がほぼ成熟したというか飽和して,ユーザーがPCに戻ってきているからです。

 以前お話ししたとおり,デスクトップPCは安定していますから,それ以外が戻ってくれば,いい感じになるのではないでしょうか。

4Gamer:
 翻って日本はいかかでしょう。

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Bennett氏:
 日本市場は唯一の例外といったところです。2013年第4四半期と2014年第1四半期が絶好調で,それ以降は落ちている。これは消費税増税があったためで,四半期ごとの比較というのが,日本に関してはとても難しい状況にあります。
 ただ,アジア全体としてみればPC市場は安定もしくは若干の上振れが期待できると見ています。PCに自然な需要が起きているということで,いい感じの流れにはあると思いますよ。

4Gamer:
 半年前と比較して,KaveriベースのノートPCやタブレットPCが日本市場では手に入りにくいという点は,残念ながら変わっていません。それを受けて,日本市場においては,堅調なデスクトップPC市場に軸足を移すのか,あるいはノートPCやタブレットといったものにも引き続き力を入れていくのか,どちらでしょうか。

Bennett氏:
 PC用のプロセッサは次世代が近づいてきているので,それほど種類は出ないかもしれませんが,ただ,KaveriベースのノートPCやタブレットPCは,世界を舞台に活躍しているパートナーから,年末商戦までにいくつか日本市場へ投入されるはずです。
 日本のパートナーの皆さんは,どちらかというと来年に予定されている次世代の製品を採用するところが多くなりそうです。それは,ハイエンドの製品になるでしょう。

4Gamer:
 分かりました。最後に4Gamerの読者にそれぞれメッセージをいただけますか。

Corpus氏:
 はい。日本のゲーム市場は私達にとって非常に重要です。だからこそいま私は日本にいるのです。日本のパブリッシャさんとは世界規模でとても良好な関係を築いていますので,この関係をさらに強化し,日本の皆さんに喜んでもらえるような,いいバンドルを行っていきたいと思います。

Bennett氏:
 私からのメッセージはシンプルです。日本はR7 250XEの市場投入やDQXのバンドルを行っている世界で唯一の国です。このような「日本だけの企画」を今後も続けていきたいと思っています。
 また,それ以外にもソニーや任天堂といった企業と非常に良い関係を築いていますから,それを活かし,APU製品やRadeon製品を日本に広めていきたいと考えています。期待していてください。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

(インタビュー:佐々山薫郁,構成:米田 聡)

AMD公式Webサイト

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