ざまあみやがれい!の「【追記アリ】プロメテウスの罠が暴く津田大介を用いた「がれき広域処理PR」の裏側……環境省と博報堂によるメディアコントロール」というエントリへの反論
【追記アリ】プロメテウスの罠が暴く津田大介を用いた「がれき広域処理PR」の裏側……環境省と博報堂によるメディアコントロール
上記エントリ、推測でほとんど書かれてますが、違う部分も多いので事実関係だけ書いておきます。
まず、取材期間は2月から3月にかけてしています。
前編と後編に分けられた理由はメディアコントロールをするとかそういう意図はありません。「単純に予算が期末だったから」というしょうもない理由です。
本来なら、この原稿は前編と後編を分けずに掲載予定でした。しかし、取材が大変だったことと、原稿を書くのにいろいろ調べなければいけないことも多かったこと、レギュラーの仕事などが詰まっていたこともあり、最初の締切だった3月末までに原稿を上げることができなかった。しかし、3月を過ぎてしまうと博報堂との契約期間が終わってしまい(その後電通に引き継がれます)、成果物を納品することができないので、予算が執行できなくなる。それに対応するため、前後編に分けました。前編が3月中に掲載できれば予算執行はできるので、後編が4月に掲載されても問題ない、という判断ですね。
児玉先生への取材は3月6日に行ってます。女川・仙台取材、東京焼却場取材とともに児玉先生への取材は今回最初から決めていた話です。そもそも前後編に分ける予定はなかったので、原稿のプロットは最初から決まってました。前編の反応で否定的なものが多かったから方針を変えたとかそういうことはありませんよ。
当然自分としても後編の原稿が言いたいことなので、そちらの方を多く見て欲しいということもありましたし、分割することはイヤでしたが、締切に間に合わなかったということもあったのでやむなくOKせざるを得ませんでした。
京谷さんの下記の指摘についてお答えすると
>広告である以上、クライアントが口を出すのは当たり前のこと。
>一度、仕事を受けて、顎足枕で取材をしたからには、クライアント
>の指示に従わなくてはいけません。ただ、そこらへんのニュアンスを
>はてなが津田氏にきちんと伝えていたのかは問題です。
>また、津田氏がタイアップ広告というものについて、無知、うぶ
>だった可能性はあります。
僕も出版業界に10年以上いる人間ですし、PR記事に対してクライアントが口を出して、その指示に従わなければいけないなんてことは当然知ってますよ。
だから一度はこの仕事がはてなから来たとき、無理でしょと断ろうとしました。
ただ、はてな側から強く依頼され、「単なるPRにはしない。環境省と折り合いがつかなければ最悪の場合、記事をPRではない形にしてでも掲載する。折れないところは絶対折れないから協力してくれ」と言われたので、受けることにしました。PR記事であることは明記するって話ですからね。
では、なぜ受けたのか?
その理由はプロメテウスの罠に書かれている下記の記述と関係してます。
>今年4月中旬、環境省廃棄物・リサイクル対策部に、広域処理に
>ついての取材を申し込んだ。
>担当職員に、取材の趣旨や質問の内容を説明した。何度かのやり
>取りの末、広報室から連絡があった。
>「本件についてはすべて、大臣が答えることになりました」
>続けて、大臣の細野豪志が取材を受ける際の条件が示された。
>「取材時間は20分とする」
>「事前に詳細な質問を提出すること。それ以外には回答しない」
がれき問題を追いかける際、正面切って取材依頼してもこのように断られるのが目に見えています。はてなからの話では、最終的に環境省と折り合いが付かなければ、原稿を出さない、PR記事を載せないorPRにせず取材記事を出すという選択肢もあった。それを引き受ける際の条件にして僕は受けました。PRという形で内部に入らないと取ってこれない情報もあると思ったからです。特にそれまで自分は20km圏内に入ったこともなかったので(何度取材申請しても断られ、フリーの人間が入るのは、一時帰宅の人に付き添う以外の方法はほとんどありません)、取材の過程でそこに入れるのは大きな意味がありました。
その後、後編の記述を巡って環境省との折衝の過程でいろいろな内部の話や情報を知ることもできたので、やったこと自体は後悔してないですよ。ただ、原稿自体は4月中旬には入稿してるので、それが6月まで引っ張られたことについては怒ってますけど。結果的にそれがこのエントリのように、いろいろな邪推を生んでいるわけですしね。
僕個人としては、「環境省には環境省なりのがれき広域処理をしたい理由はある。その正当性についてはいろいろな議論があるし、それを理解してよって言っても、今までのやり方じゃ絶対無理だし、仕切り直しするしかないんじゃない?」ってことが言えれば良かったので(だから僕はこの問題、総論で見たときにがれきの広域処理は反対。ただ、女川のようにがれき処理が進まないと困る場所については各論として安全性確保したうえで対応していくべきってスタンスです)、その意味では原稿は基本的に好きなように書かせてもらってますよ。
最終的に環境省が折れなければ、掲載しない、もしくは僕のブログで発表するというギリギリの判断をはてな側も覚悟してました。いろいろ直せって言われたところもありますが、直したくない場所、削れない場所は削らなかったので、ある意味では環境省が折れた部分もある、ということです。
>環境省のがれきの広域処理PRの一端を担った津田大介さんは、住民
>ではなく、環境省側に立ったわけです。カネを受け取っているわけ
>ですから。
>さらに、津田大介氏がどの程度の報酬を得ているかについては、
>報じられていないわけで。そういう意味では、プロメウスの罠が暴いた
>のは、津田大介さんにとって都合の良い一面にすぎないのではないかと
>僕は思っています。
で、僕は環境省から直接ギャラをもらったわけではなく、その博報堂のPR業務に協力したはてなから原稿料をもらっています。
さて、いくらか。
前後編合わせてあの記事は大体4万3000字くらいです。
一般的なノンフィクションの原稿料は、400字3000円~5000円くらいが相場(http://www.1book.co.jp/003653.html)なので、通常のルポ原稿として、文字数だけで考えるなら30~50万円くらいがギャラになります。
でも今回はPR記事だから、その相場が高くなって100万とか200万円になるかという問題がある。僕は今回の記事ではてながどれくらいもらったのかはしりませんが、僕に対するギャラはそんなに多くないです。通常の原稿料の相場とは離れてない感じですね。つーか「PR仕事」として考えればめちゃくちゃ安いですよ。はっきりいってかけた労力、そしてこのエントリのように勝手に邪推されてネガティブな情報を流されるリスクとかと比べると全然割に合ってないです。
でもさっきも言ったように僕はがれき問題を調べる手段としてPR記事の執筆をやったので、まあ正直ギャラが0円だろうが10万だろうが構わないわけです。
だから、「津田は金に目がくらんで環境省のPR仕事やった」って論評が一番腹が立ちますね。この仕事でもらえるギャラなんて、自分がやってるメルマガから得られる1カ月の収入のせいぜい5分の1とかそんな程度ですから。そんなはした金得るためになんでわざわざこんな仕事受けたのかって話ですよ。はっきり言って自分にとってはほとんどメリットありません。
>津田さんが「取材ができる」ことを優先してPR記事を書くことを
>優先させたということと、報酬を寄付したということの2点の
>情報提供です。
この仕事のギャラは、取材をしたときに感じた「女川のために何かしたい」という気持ちに従い、女川のメディア(女川さいがいエフエム http://onagawafm.jp/)と、女川の学習支援施設(女川向学館 http://www.collabo-school.net/?page_id=13)に、ギャラの全額を等分して寄付しています。
>なぜ津田大介さんは、カネを受け取ってこのエントリーを書くの
>だろうか。カネを受け取らずにご自身のメルマガで書けば、個人
>的な考え方を個人的な手段によって発表することができたのに。
>それならば意見の多様性という視点で理解できるのに。
僕はプロなので、書いた原稿については対価を得たいという話です。でも、単純なPR記事で環境省の望むようなパブをしろっていうなら断りましたよ。個人で取材をするには、時間と手間がかかり過ぎるので、今回中に入ることでそういう取材をある程度効率的にできた。いずれにせよ「最終弁」として、記事は引っ込めることが可能、という条件がはてな側からあったからできたことです。まあ、PR記事という体裁を取っている以上、今回のような批判が出ることはわかりきっていたので、それは甘んじて受けざるを得ないんだろうな、とは思います(腹は立ちますけどね)。
>「自由」「透明性」「多様性」を旗印にするネットジャーナリズ
>ムは、すでに、買収可能なものである、ということを津田大介さん
>は身をもって証明して下さったのかもしれません。
この結論、物言いは、できれば取り下げるか、謝罪してほしいです。非常に不愉快です。
僕は別にこの問題で「買収」されてませんし、答えられることにはすべて答えています。だから、プロメテウスの罠の取材にもきちんと協力しました。これで「透明性」に疑問があるとか言われたくないです。バカにしないでください。
だから
>あの記事の前編に関しては、それがまことにうまくいき、クライ
>アントも満足した。ところが掲載した途端の反響に津田氏が
>うろたえた(ここで「広告とは知らなかった」と主張した可能性が
>あると思います。
という京谷さんの推測もまったく的外れな邪推でしかありません。彼に指摘されるまでもなく俺は「大人の世界」を知ってますし、そのうえでこの仕事を受けています。ベルギーのリスクコミュニケーションの事例をこの問題に絡めて語っているような人はほかに見ませんし、そういうところの価値もPR記事という形だけにとらわれて見逃されている現状がもどかしいです。
さて、このエントリで僕を批判する依拠としている「プロメテウスの罠」ですが、取材に来た朝日新聞の吉田記者は、取材時に前後編のはてなの記事を「PR記事とは思えない、きちんと取材した、痛快な記事だった」と褒めてくださいました。
僕個人としても、この記事の掲載をめぐるゴタゴタをきちんとオープンにすること自体が、がれき広域処理問題の背後にある複雑さを考えるきっかけになれば、と思って、プロメテウスの罠の取材に協力しています。
吉田記者からはプロメテウスの罠掲載後に、丁寧な謝罪メールを頂きました。自分としてはきちんと取材して書いたつもりだが、思ってもみないネガティブな反応を結果として僕にもたらしてしまっている、と。
吉田記者としては、「こう読み取って欲しい」「ここに反応して欲しい」という思いとはまったく違う部分への反応がツイッター上では予想外に多く見られたようで、意図的な悪意を持った解釈で読み解かれたものが検証も咀嚼もされず拡散していくソーシャルメディアの課題を感じたそうです。
個人的に吉田記者の感じた違和感、課題というのは、本エントリーのような邪推、そして結論ありきで構成された記事も含まれるのだと思います。
今回のはてなの記事が自分にとってベストな仕事だったとは思っていません。本来ならPRという形でなく、自費ですべて取材して、単行本を作るなり、メルマガで発表するなり、ほかの方法でやった方がベターだっただろうとは思ってます。それでも、時間のない中で、多くの人に問題を考えてもらうきっかけとなる記事を作ることはできたとは思っていますし、それが結果として女川の支援につなげることができたのはまあ良かったかな、と。
とはいえ、本エントリーで指摘されているようなことすべてが間違っているとも思いませんし、PR記事をジャーナリストが受けることについて(僕個人は通常のPR記事として受けたつもりはありませんが、それは外部からはそう見られないだろう、ということもわかりますし)倫理上の問題があるという意見もわかります。
ただ、1つだけ先ほども書いた
>「自由」「透明性」「多様性」を旗印にするネットジャーナリズ
>ムは、すでに、買収可能なものである、ということを津田大介さん
>は身をもって証明して下さったのかもしれません。
という1点についてだけ、取り下げていただきたく存じます。僕だけでなく、ネットジャーナリズムの可能性を真剣に考えている人たちに失礼ですから。
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このPR記事を発注された段階で、復興予算に使われるべき税金が、単なる瓦礫の広域処理事業のPRに浪費された事を問題視すべきだろう。 私は、瓦礫の日本全国への広域処理を行う事がどれほど無駄な税金を必要とするか訴えてきた。...
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ざまみやさんが突っついたら、津田氏が舞台裏と状況を公開してくれた。 もやもやがちょっといい景色に落ち着いたかもしれない。
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