2012年4月に発生した、関越自動車道の高速バス居眠り運転事故以来、高速バス運行のあり方が問われています。格安価格を打ち出す一方で、安全な運行管理ができていない会社の実態が明るみになり、快適な移動を求めるユーザーからは不安の声が上がっています。
イランを旅行した記者(私)は、もしも可能ならイランの高速バス運行に見習って欲しいと感じています。というのも、格安であるうえに、安全かつ快適だからです。長距離バスのドライバーは、一台に三人が乗車しており、交代で運転しています。これだけでも十分な安全確保と言えるのではないでしょうか。
イランのバスは大別して、普通の高速バスとVIPバスがあります。普通のバスは4列シートで席数は35~40席。これに対してVIPは、3列シートで20~22席。車内は広く、座席の前後がゆったりとしていて、リクライニングシートにフットレストがついています。さらに車内には、お菓子やジュースが用意されていて、小腹を満たすことができます。
車両下部にはドライバーのための仮眠室が設けられており、三人のドライバーは交代で走行。居眠り運転の対策はバッチリです。運行上問題がないように、さまざまな配慮がされているのですが、驚くべきはその価格。20時間走行のバスで16万6000イラン・リヤル(約1050円)、12時間で13万8000イラン・リヤル(約875円)、そして6時間で5万5000イラン・リヤル(約350円)です(いずれも2012年9月現在のレート)。
相場の違いがあるとはいえ、世界各国で高速バスに乗車した記者の感覚では、コストパフォーマンス最強レベルと言わざるを得ません。価格はさておいても、日本のバス運行会社も、安全面についてはイランのバスに見習うものがあるのではないでしょうか。格安で提供できないのは仕方ないとして、せめて乗客ならびにドライバーにとっても、危険の少ない運行管理をお願いしたいと思います。
取材、写真:Photographer Koach
執筆:フードクイーン・佐藤