●HDDの冷却強化 猫対策PCの連載も今回で最後となる。ここまでの経緯については「前編」と「中編」をお読みいただきたい。 さて、HDD冷却の仕組みである。これはもう簡単、シャドウベイにファンを搭載し、HDDは3.5インチベイに移動するだけである。ファンはちょっと悩んだが、結局70mm径のものを利用した(写真54)。取り付けだが、まずドライブベイの裏面に取り付け穴と、もともと空いていた穴を繋ぐような穴(写真55)を空け、後はドリルとハンドニブラ、ヤスリで穴を広げて吸気口を作成(写真56)、ファンを取り付けた(写真57、58)。
●隙間塞ぎ 最後がこちらである。テープを使って全部張ってもいいが、面積が広いともう少し効率的な方法が好ましい。そこでプラ板(写真59)を購入して加工することにした。まず間違って空けた右側面はこんな感じで紙両面テープを使って素直に張り付け(写真60)。底面のパンチングホールも、やはり同じサイズにプラ板を切って貼り付けた(写真61)。 一方のフロントパネル(写真62)だが、こちらは先のすきまテープを活用する方向に切り替えた。底面の大きなスリットはプラ板を張ったが(写真63)、この状態でもフロントパネルとシャーシの間に細かな隙間がある。そこでフレーム側にすきまテープを張り巡らし、隙間を防ぐ形にした(写真64)。 ドライブベイとのすきまも写真65のように完全にカバーすることで、こちらからの吸い込みも防止した。またフロントパネルのコネクタ部についても、カットテープ(写真66)を張り重ねる(写真67)事で埋めてある。ケースカバーについても、こんな具合に内側をすきまテープできちんと囲う事で隙間からの流入を防ぐようにした。
さて隙間はこれでいいとして、もう1つ作業が残っている。それは中編写真18のコンデンサの冷却。色々考えたのだが、こんなガイドを作り(写真69)、両面テープを使って電源の下にこんな具合に固定した(写真70)。さて、このコンデンサの冷却のために、40mmのファンを用意(写真71)、これを住友スリーエムの超強力両面テープで貼り付けた(写真72)。電源の底面、ケースカバー、マザーボードと今取り付けたガイドで簡単なエアトンネルが構成されるので、そこにこのファンで風を送り込む事でコンデンサへの冷却風を確保する、という仕組みだ。
さて、テストである。ここまでの構成で先ほど同様に耐久ベンチマークを掛けた結果は、やはり室温26度、稼働時間1日の時点で CPU 52度/GPU 62度/HDD 45度 であった。グラフィックカードのすぐそばに大穴を空けたからGPU温度が多少下がったのは良いとして、ファンをつけてもさっぱりHDD温度が下がらないとか、CPU温度(正確にはSystem温度)が更に上がった事はちょっと問題であろう。 ●改造編その2:冷却能力強化 もっともこれは半ば予想された話ではある。開口部そのものの面積は同等程度に確保したとは言え、GPUで熱せられた空気を吹き込んでいるわけだから、どうしてもケース内温度は上がる方向に行く。で、対策も実は考え付いていて、それは排気能力の強化である。もうとにかく排気を抜くというのが大前提である。そのためには排気ファンを追加するのが得策なわけだが、ケース内部にはこれ以上ファンを入れる場所が無い。そこで当然外付けとなる。要するに中編写真6のラジエータ部の後ろに、更にファンを取り付けて強制的に排気しようというわけだ。 実際、ケース裏面には手頃な位置におあつらえ向きの穴が用意されている(写真73)。 そこで手頃なファン用の電源コードを用意し(写真74)、ホットボンドで取り付けた(写真75)。ファンは92mm径の2,000rpmのものを用意し(写真76)、これにファンガード(写真77)と防振ゴム(写真78)を組み合わせた(写真79)。もっとも防振ゴムに関しては、この時点では問題なさそうだったのだが、実際に取り付けると締め付けられてフィンと干渉してしまい、最終的には放棄することになった。 さて、問題は取り付け方法だ。中編写真6でラジエータの周囲の4つのネジを外し、そこにファンをネジ留めすることになるわけだが、寸法はぴったり一致していたがネジが合わない。もともと使われていたのは(PCには多いのだが)インチネジ(UNIFY)のNo.6-32という奴である。直径が約3.5mm、ネジの山数が32山/インチという規格だが、これに対応していて、しかも長さが35mmなんてネジはどこにも無い。一番近いのは4mmのミリネジで、これはどんなDIYショップでも簡単に手に入る(写真80)が、これをねじり込むのは不可能だ。
で、ネジを受ける部分(写真81)を見ると、割とちゃんと作ってある。これだけしっかりしていれば、タップでネジを切りなおせば簡単だ(写真82)。実際5分強で作業は終了し、特に問題もなく4mmネジが使えるようになった(写真83)。 そんなわけで、背面に排気ファンを追加した状態での性能は……ということで、再び実験してみた結果は 室温 26度/CPU 51度/GPU 59度/HDD 43度 といったところ。微妙に温度が下がっては居るが、効果があるとは言いにくい。次なるトライは、ファンの2段重ねである。タンデムファンという形式で、流速そのものは増えないのだが、トルクが増すために確実に排気を引き抜けるようになる。ネジを4mm径×35mmのものから、4mm径×60mmのもの(写真84)に替え、防振ゴムも自作し(写真85)、同じファンを2つ重ねて搭載してみた(写真86)。 この効果はかなり大きく、やはり耐久テストをしてみると 室温 26度/CPU 47度/GPU 48度/HDD 39度 まで温度が落ちた。ここまで落ちると、だいぶ許容範囲である。 ただ、ここで気になるのは室温26度ですらこの結果なこと。ケースそのものも暖かいし、ファンの排気もさることながら、電源部の排気がかなり熱い。ケースを開けると、電源がかなり発熱している。そこで、ファンから一番遠いコンデンサと電源部に温度センサーを貼り付け、こちらの温度を確認すると共に、消費電力も測定してみた。結果は表1に示す通りである。 意外にコンデンサは常時40度程度で安定しており、ファンをつけた威力があったということだ。しかしながら問題は電源で、特に200W近い消費電力の場合、電源がそのまま50度以上の発熱をしており、これが大きな問題であることが容易に想像される。道理で電源からの排気が熱いわけである。
【表1】テスト結果
このまま常用するのはかなり危険な感じがするので、CPUを当初の想定どおりPentium Dual-Core E2160に変えたらどうなるか、を試したのが表2である。表2ではなぜかCPUが2項目あるが、これはEVERESTの仕様である(写真88)。待機時はともかく稼動時の消費電力が半減しており、いかにNetburstの消費電力が大きいかがわかるというものだが、それはともかく電源の温度が高くても41度で収まっており、結果内部の温度もぐんと下がっている。実際、排気温度も明らかに下がっており、長時間運用しても安心できるレベルだ。
【表2】Pentium Dual-Core E2160換装後のテスト結果
ついでにビデオカードを抜いたらどうなるか、を試したのが表3だ。CPUコアこそ負荷に応じて多少上下するが、あとはきわめて安定している。さすがに3D性能がそれなりなので、ゲームをするのにやはりビデオカードを追加したほうが良さそうではあるが、それでも表2の結果を見る限り安心して使えそうだ。
【表3】ビデオカード取り外し時のテスト結果
●最後に 「ところで温度はともかく、本当にこれで埃が取れるのか?」という疑問は当然ある。筆者宅でも1週間以上マシンを動かしているのだが、撮影やら改造やらで煩雑に開け閉めしてるのが悪いのか、たいして埃が付かない。 そこで、他のマシンやら扇風機やらにこびり付いた埃をかき集めてフィルタ部になすりつけ(写真89)、この状態でエアを噴いて細かい埃を強制的にフィルタ内部に送り込んでみた。結果、中のフィルタは一瞬で茶色くなったが(写真90)、茶色いのは手前だけで、2枚重ねとなった裏側は白いままだった(写真91)。2段重ねのフィルタの効果は確かにあるようで、とりあえず一安心である。 で、猫にはどうか? というと、天板のちょっとすべる感触があんまりお好みではないらしい(写真92)。もっとも騒音に関しては気にならないようであるが(写真93)。
今後はHDDをまともなものに交換して、長期利用を始める予定だ。そこでまた何か発見などあったらレポートしてみたいと思う。 それにしても、このシステムはShuttleのXPCシリーズだから出来たというところで、タワーケース類に応用するためにはもう一捻り、二捻り必要な感じはする。最近のケースはフロントパネルの背後にドライブベイが並ぶから、フィルタを噛ますためにはフロントパネルを切断して、そこにフィルタを噛ますという作業になりそうだし、他にもあちこちから吸気するケースが多いから、こうしたところをどうやってカバーするかは熟考を要しそうだ。機会があったらやってみたい気はするが、まずこうした作業に適したケースが見つかるかどうか、が問題な気はする。いいケース、ないものだろうか?
□関連記事 (2007年9月5日) [Reported by 大原雄介]
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