携帯電話の販売不振が続いている。社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)の発表によれば、2008年4月〜11月の携帯電話の販売台数は2486万台(前年同期比75.8%)とふるわず、携帯電話の販売数は5か月連続で前年割れが続いている。
こうした状況に陥った理由はいくつかあげられる。1つは、携帯電話の世帯普及率がすでに90%を超えており、携帯電話の新規契約数が鈍化していること。もう1つは、携帯電話の買い換え(機種変更)需要が、2007年末から導入された「新販売方式」(割賦販売)などによって抑制されたことである。これによって月額料金自体は安くなったのだが、それまで比較的安く購入できた携帯電話の端末価格が、消費者側からすれば「大きく値上げされた」出来事だっただけに、消費者側の購買心理に与えた影響は大きい。昨今の不況感とも相まって、消費者側の携帯電話の買い換え需要は冷え込んでいると見られる。
こうした消費者の携帯電話に対する購買心理が今回のリサーチでは明らかとなった。この1年以内に携帯電話を購入したユーザーは全体の4割強。半数以上のユーザーは1年以上、あるいは2年以上、携帯電話を買い換えていないという結果になった。その理由だが、「端末の料金が高すぎる」「違約金の縛りがあるため購入できない」というもののほかに、「現状の携帯で満足している」「購入したいと思うような魅力的な端末がない」という意見も多く見られた。端末販売方式の見直しによる端末価格の高騰の影響も大きいが、その端末価格に見合うだけの魅力的な製品が登場していないことも、携帯電話販売の不振につながっているといえる。
携帯電話の端末購入価格は、NTTドコモがもっとも高く、5万円以上が24%、3万円以上になると6割を超えるという結果になった。auやソフトバンクについては、ここまで端末価格は高くないものの、複雑な割引プランなどによって端末価格が月額料金に添加されていることが多く、結果として、どのキャリアでも多くのユーザーが端末に2万円以上の金額を支払っていることになる。これに対し、多くのユーザーが考える携帯電話の妥当な端末価格は、5,000円〜2万円くらいのゾーンであり、端末販売価格のイメージに大きなギャップが存在することが明らかとなった。
逆に、「今の携帯電話に望むもの」という質問に対しては、「機能をアップしてほしい」という意見はほとんど聞かれず、「機能を絞り込んで端末や料金を安くしてほしい」という声が圧倒的多数を占めた。携帯電話の機能は年々増えており、便利になった半面、実際には使わない機能なども多く搭載されている。その結果として、携帯電話のボディサイズが大型化したり、バッテリーの持ちが悪くなるなど、マイナス面の影響も少なくない。また、パケット料金を含む携帯電話の使用料金がいっこうに安くならないのも、こうした機能過多の端末料金によるものだという批判的な意見も目立った。
キャリア側やメーカー側にしてみれば、なるべく多くの付加価値をつけて、他社と差別化した携帯端末を売りたいところだろうが、今回の調査結果を見る限り、こうしたキャリア/メーカー側の意図が、ユーザーニーズと大きくかけ離れてしまっているようにも感じる。昨今の携帯電話の販売不振も、単純な端末価格の高騰だけが原因ではないようだ。
前回調査時と比べ、シェアに大きな変動はない
所有する携帯電話のキャリアを聞いた。前回調査(2008年4月)時と比べても、シェアに大きな変動はないが、シェア1位のNTTドコモが2.2ポイント上昇しているのに対し、2位のauが1.3ポイント減少している。ここのところ純増数No.1を誇るソフトバンクに関しては0.8ポイントの増加にとどまっており、さほど大きな増加にはなっていない。
【図1-1、現在契約している携帯電話会社】
【図1-2、前回の調査時の携帯電話会社のシェア】
(第17回価格.comリサーチ 携帯電話最新調査!-あなたの携帯料金は安い?高い?-)
携帯電話の購入時期:最も多いのは「1年〜2年以内」で32.1%
次いで「2年以上前」が25.2%
現在所有している携帯電話の購入時期をうかがった。
もっとも多かった回答は「1年〜2年以内」というもので、全体の32.1%。次いで、「2年以上前」が25.2%となり、半数以上のユーザーが、携帯電話を1年以上前に購入したという結果になった。
これに対して、「半年〜1年以内」は19.6%、さらに最近の「半年以内」は総計でも22.7%となっており、1年以内に携帯電話を買い換えたユーザーは全体の4割強。半年以内に買い換えたユーザーは全体の2割強という結果である。
この数字を多いと見るか少ないと見るかは難しいところだが、現在多くのキャリアで採用されている新販売方式」(割賦販売)によって端末代金が高騰した結果、多くのユーザーが安易な機種変更を避け、少なくとも2年程度は使用するようになっていると見ることができそうだ。
【図2、現在所有している携帯電話の購入時期】
この1年以内に携帯電話を購入した人の多くが、
2万円以上の金額を端末に支払っている
この1年以内に携帯電話を購入したという人を対象に、端末の購入金額(総額)をうかがった。なお、この購入金額は、月ごとの分割支払いも加味しての金額となる。
この結果を見て驚くのは、もっとも多かったレンジが「5万円以上」で、実に17.4%にもなることだ。若干のバラつきはあるものの、購入金額は高めのレンジのほうが多くなっており、多くのユーザーが2〜3万円以上の高額な金額を端末に支払っていることが明らかとなった。一時期よく見かけた「0円」「1円」といった破格の携帯電話はなりをひそめており、その割合は1割程度。1万円未満で購入したというユーザーの割合もわずか3割程度であり、それ以外の7割近いユーザーが、少なくとも1万円以上の料金を端末に支払っている。
この割合は携帯キャリアごとに大きな違いが出た。もっとも端末料金が高いと出たのが「NTTドコモ」で、「5万円以上」、「4万円台」、「3万円台」の3つのレンジの合算が6割を超えている。これに比べて、auは比較的低価格のレンジが広く、1万円未満の合算が半数を超える結果だ。ただ、auの料金プランでは、端末購入時に割引が受けられる「フルサポートコース」の加入率が高く、結局は端末価格を月額料金で補っている形となるため、一概には比較できない。多くのユーザーが2〜3万円程度の端末価格を支払っていると見たほうがいいだろう。
一方のソフトバンクに関しては、NTTドコモとauの中間くらいの分布を示しており、比較的端末価格は安めという印象だ。「5万円以上」のレンジが19.8%と高いが、これは2008年7月に発売された「iPhone 3G」の販売価格(7〜8万円)の影響が大きいと見られる。この部分を差し引いて考えると、ソフトバンクの端末価格はauの端末価格のレンジに近くなり、端末価格で見る限り、NTTドコモの端末価格が頭一つ抜けている印象だ。
【図3-1、携帯電話の購入金額で実際に支払った金額、支払う予定の金額】
(図2で1年以内に購入した方に質問)
【図3-2、携帯電話の購入金額で実際に支払った金額、支払う予定の金額(キャリア別)】
(図2で1年以内に購入した方に質問)
春商戦も買い控え傾向!
春先にかけては、携帯電話の新モデルが続々登場する時期だが、この時期に新しく携帯電話を購入するかどうかを聞いてみた。
結果から見ると、積極的な購入希望を持っているユーザーは23.3%で、図2で「この半年以内に携帯電話を購入した」と答えたユーザーの数とほぼ同数となった。その一方で「購入予定なし」と答えたユーザーが43.1%にものぼり、次いで「購入したいが金額が高すぎる」と答えたユーザーが23.6%と大半を占めている。2009年の春モデルについても、携帯電話の販売量は引き続き低調に推移しそうな感じである。
さらに、「購入しない」と答えたユーザーに対し、その理由をフリーアンサーで聞いてみたが、多かった回答としては以下のようなものがあげられる。
- 現状の製品で満足している
- 購入したいと思うような魅力ある製品がない
- 分割払い/2年縛りによって、今買い換えると高くついてしまう
- そもそも端末の価格が高すぎる
- 買い換えたばかりだから
携帯端末自体の料金が高くなった以外に、端末自体に買い換えるほどの魅力を感じていないという意見も多く、高騰した料金に見合うだけの端末が登場しないことが、買い控えの大きな原因となっている様子がうかがえる。
【図4、3ヶ月以内に携帯電話を機種変更、または新規購入したいと考えていますか?】
【図5、購入しない理由】
(図4で「機種変更、または新規購入したくない」を選択した方に質問)
購入しない理由 | 性別 | 年齢 |
---|---|---|
価格が高いので控える。また新しい機種に値段なりの魅力がない。 | 男性 | 40代 |
今の機種で満足しているし、現在、魅力のある機種がないので気に入った機種が出るまでは機種変更の予定はない。また解除料などの違約金を払いたくないので機種変更の予定はない。 | 女性 | 40代 |
現在使用している機種で十分であること。 携帯電話の価格が高額になった為になかなか機種変更に考えが行かない |
男性 | 30代 |
1月に買えたばかり。長期利用割引を利用しているので2年は替える予定なし。 | 女性 | 40代 |
頻繁に新機種がリリースされる割には割賦金システムの2年縛り等購買意欲を削ぐ内容となっているので。 | 男性 | 30代 |
携帯電話の購入金額の限度:1位「1〜2万円」で24.0%
次いで、「5000円〜1万円」で22.5%
携帯電話を購入(機種変更)する場合に、どれくらいの予算をかけられるかうかがった。
もっとも多かった価格レンジは「1〜2万円」で24.0%。次いで「5000円〜1万円」が22.5%となっており、現状の販売価格との価格差にかなり大きな開きがあることがわかった。NTTドコモなどの最新端末はそのほとんどが3万円以上という価格設定になっているが、3万円以上出せると回答したユーザーは総計しても11.0%と非常に少ない。従来の販売支援金含みの価格設定に消費者の側が慣れてしまったこともあるが、この意識ギャップの大きさが、今の携帯電話の販売数ダウンに影響していることは間違いないだろう。
【図6、今後携帯電話を機種変更、または新規購入する際、携帯電話の購入金額の限度】
携帯電話の料金
「月額使用料金が安いほうがいい」ユーザーが65.2%!
携帯電話の料金について、端末の価格は安く抑えて従来のように月額利用料金に上乗せする形がいいか、それとも現状のように端末価格は端末価格として考え、月額利用料金を安くするほうがいいか、聞いてみた。
結果としては、端末料金と月額料金を分けた料金体系を支持する人が多く、65.2%の人が「月額使用料金が安いほうがいい」と回答した。これに対し、「月額料金は若干高くても端末料金を下げてほしい」と考えている人も27.1%おり、この傾向は、キャリアが異なってもほぼ変わらない。
ただし、月額料金を下げてほしいとは言っても、現状の端末価格に対しては「高すぎる」とする声が多いのも事実で(図8フリーアンサー参照)、決して現状の端末料金に対して納得しているわけではないということは付け加えておきたい。
【図7-1、携帯電話の料金について】
【図7-2、携帯電話の料金について(キャリア別)】
今後携帯電話に期待していること
機能を絞り込み、端末価格を安くして欲しい!
今後の携帯電話に期待していることをフリーアンサーでうかがった。
多く見られた回答は以下のようなものだ。
- ユーザー側で使う機能を選べるようにしてほしい。不要な機能が多すぎる
- 端末価格がまだまだ高すぎる
- パケット料金を安くしてほしい
- 通信速度を速くしてほしい
- 料金体系がわかりづらすぎる
- バッテリーの持ちをよくしてほしい
全体的に見て、携帯電話にこれ以上の機能を求める声はきわめて少なく、むしろ「機能を絞り込んで薄くしてほしい」「機能を絞り込んで価格を下げてほしい」という声が圧倒的に多く聞かれた。携帯電話へのワンセグ機能の搭載率は今や9割を超えているが、「ワンセグを使うとバッテリーが持たない」などの意見もあり、ワンセグを不要と感じているユーザーもかなりの数にのぼる。逆に、バッテリー持続時間への要求は強く、性能が上がるにつれバッテリーの持ちが悪くなる、という悪循環に対しても不満を持っているユーザーは多いようだ。
料金面では、端末価格が高くなったことへの不満が多く聞かれた。また月額料金プランに関しても、割引システムが複雑でわかりづらく、結果として、数年前から携帯電話の料金は安くなっていないとする声も多い。通話料金自体は安くなってきてはいるが、パケット定額などと合わせると結局それなりの料金となってしまい、端末の料金も以前に比べて高くなったという感覚が強いため、ユーザー心理としてはどうしても端末を買い控えしてしまう傾向にあるようだ。
【図8、今後携帯電話に期待していること】
今後携帯電話に期待していること | 性別 | 年齢 |
---|---|---|
機能が選択できるようになるべきだと思う。例えば電話の機能だけで良いとかデジカメは不用またはワンセグ機能はいらないというように。そしてそれが品物の価格に反映して通信料金に転化するのをやめて欲しい。 | 男性 | 60歳以上 |
電池の持ち!多機能はいいが、ワンセグTVとか観るとすぐに電池が無くなってしまう。 メールすると手が痛くなるので、手が痛くならないケータイを発明して欲しい。 |
男性 | 40代 |
機能の簡素化。カメラ機能を充実してほしい | 女性 | 30代 |
機能については、十分な気がするので、本体価格の低価格および通話・サービス料金の低額化を期待したい。 | 男性 | 50代 |
携帯電話はどうしても必要なのでもっておかなければならないのですが、本体価格、利用料金ともに安い方が家計としては助かりますね。別の携帯会社も検討していこうかなと考え中です。 | 女性 | 30代 |
- 調査エリア:
- 全国
- 調査対象:
- 価格.comID 登録ユーザー
- 調査方法:
- 価格.comサイトでのWebアンケート調査
- 回答者数:
- 8,517人
- 男女比率:
- 男88.7%:女11.3%
- 調査期間:
- 2009年1月22日〜2009年1月27日
- 調査実施機関:
- 株式会社カカクコム
- 価格.comプロダクトアワード2008 携帯電話部門賞 (2009年1月掲載)
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(2007年9月掲載)
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