KDDI決算会見、2009年度は減収増益
小野寺社長、Twitter利用やSIMロック解除にも触れる
KDDI小野寺氏 |
KDDIは、2009年度決算を発表した。同社では23日、都内で決算説明会を開催し、同社代表取締役社長兼会長の小野寺正氏から説明が行われた。
会見冒頭、小野寺氏は、同日に発表された人事異動に触れた。今回の人事異動は、6月の株主総会で正式に決定する形となるが、代表取締役副会長の天野 定功氏と代表取締役執行役員副社長の長尾哲氏が退任し、元総務審議官の有富寛一郎氏が副会長に就任する。また、取締役執行役員専務の両角寛文氏、取締役執行役員常務の田中孝司氏と高橋誠氏がいずれも代表取締役に昇格する。質疑応答の際、小野寺氏は事業規模の拡大でより一層迅速な判断ができるよう取締役を増やすほか、必要な人材を代表取締役に据えると説明。代表取締役となる人物が計5名にのぼることには、「数は問題じゃないと思っている」と述べ、他意はないとした。
証券関係者向け説明会で、新たな代表取締役3人について問われた小野寺氏は「コンシューマーとソリューションのボーダーがいろいろある。中小FMCマーケットで、auとソリューションのコミッションで矛盾があった。田中常務にはトータルで調整してもらおうと思っている。また商品開発についてもスマートフォンが遅れたのは間違いないので、彼にしっかりみてもらおうと思う。両角専務には、きっちりと会社の守りを固めてもらい、逆に伸ばすところは高橋常務に、とそれぞれに役割を果たして欲しいというのが、今回の布陣の一番大きな理由になる」と説明した。
なお、田中孝司氏はUQコミュニケーションズの社長から会長となり、新社長は現顧問の野坂章雄氏が就任する。こちらも6月の株主総会を経て正式に決定する。
■2009年度実績と2010年度の見通し
KDDIの2009年度(2009年4月~2010年3月)における連結決算を見ると、営業収益は3兆4421億円(前期比1.6%減)、営業利益は4439億円(同0.1%増)、経常利益4429億円(同4%減)、当期純利益2128億円(同4.5%減)となった。
セグメント別に見ると、移動体通信事業の営業収益は2兆6501億円(前期比2.5%減)、営業利益は4837億円(同3.5%減)、経常利益は4906億円(同3.6%減)、当期純利益は2932億円(同7.3%増)となった一方、固定通信事業の営業収益は8392億円(同1.1%減)、営業損失は442億円、経常損失は568億円、当期純損失は684億円となった。なお、持分法適用の重要性を踏まえ、これまでセグメント外にしていた企業の実績が今回よりセグメント別実績に反映されるようになった。移動体事業ではUQの実績が反映されている。
決算総括 | 2010年度の業績見通し |
2010年度の業績見通し(その2) | 2010年度の課題 |
2010年度の見通しとして、連結決算における営業収益は0.1%減、営業利益は0.3%増とされている。移動体通信事業の営業利益は4300億円(11.1%減)になるとされているが、音声APRUなど全体的な収益が落ち込むことが主要因で、ネットワーク関連費用や販売手数料は2009年度よりも圧縮する方針が示された。
このほか設備投資については。2009年度が5180億円(前期比9.9%減)、そのうち移動体通信が3768億円(同12.8%減)となっている。2010年度は引き続き設備投資が減少し、全体で4900億円(同5.4%減)で、そのうち移動体が3600億円(同4.5%減)となる予定。移動体通信事業では、2010年度中にRev.Aのマルチキャリア化を進める方針が示された。
■オペレーションデータ
今回の会見では触れられなかった部分も含め、移動体事業に関するさまざまなデータが示された。まず2009年度の純増数は103万契約で、純増シェア21.9%となった。そのうちIP接続(EZweb)での純増数は78万4000契約で、純増シェアは38.2%となった。
解約率は0.72%で、前期に比べ0.04ポイント低下。2010年度の解約率は0.69%になると予測されている。販売手数料平均単価は、前期比3000円減の3万6000円となった。四半期毎にみると、第1四半期は4万1000円、第2四半期は4万4000円で、第3四半期と第4四半期は端末調達価格の低廉化により、各3万円となった。2010年度の販売手数料は2万9000円で、今期よりもさらに減少するとされている。ただ、小野寺氏は端末価格が上昇する要因が販売手数料の減少だけではなく、端末開発コストの増加もあり得るとして、手数料減少が与える影響は一概に言えないとした。またあくまでも平均単価であり、機種ごとに実際の手数料は変わるとも説明した。
ARPUについては、前期比390円減の5410円となった。音声APRUが引き続き減少する一方、データARPUが微増となったものの音声ARPUの減少をカバーするほどではなく、2010年度も減少傾向となり、5010円(音声2690円、データ2320円)になると見られている。
解約率 | 周波数再編について |
シンプルコースについては、3月末時点の契約数が1252万件、契約率は41%。シンプルコースを選んだユーザーのうち、分割払いを選ぶユーザーは全体の42%(24回払いが31%、18回が4%、12回が7%)で、一括払いは58%となっている。
2012年7月に行われる周波数再編の影響で、一部の周波数帯(KDDIでは旧800MHz帯と呼ぶ)が利用できなくなり、新旧800MHz帯と2GHz帯のトライバンド端末への移行を今後促進する方針が示され、2010年度決算には約800億円のコスト増になると見込まれている。
このほか新規分野への取り組みも重要とされ、今期売上高が前期比31%増の586億円となったコンテンツ・メディア事業が2010年度、さらに伸ばして721億円の売上にするという。また海外事業への取り組み、金融ビジネス(じぶん銀行、損保への準備)、モバイルWiMAXも紹介された。
■J:COMとの戦略的パートナーシップ
固定関連の取り組みとして、ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(J:COM)へ資本参加し、互いのリソースを活用して、4つのテーマでワーキンググループを設置し、シナジー効果の発揮を目指して取り組むことが示された。またTOB(株式公開買い付け)によりJ:COM筆頭株主となった住友商事との関係について、22日、協力していく方針が示された。小野寺氏は「法的な規制で住友商事さんとコンタクトできたのは昨日のこと。加藤社長(住商社長の加藤進氏)と昨日会って、短期的・中期的に協力することで合意した。できるだけ早く事業シナジーを実現する」と説明した。
J:COMとの連携 | 4つのテーマでWGを組織 |
また、J:COMとの関係強化により、既にKDDI傘下にあるCATV第2位のジャパンケーブルネット(JCN)とあわせ、国内ケーブルテレビユーザーの半数をカバーできることから、小野寺氏は「フェムトセルの設置にブロードバンド回線は必須。J:COMユーザーへ提供すれば大きな影響がある」と説明した。ただCATVの活用例として、フェムトセルはあくまで代表例とし、他の活用もあるとした。
■Twitterは「やらない」、SIMロックは「民間に任すべき」
総務省でガイドライン策定の方針が示されたSIMロック解除について、小野寺氏は「反対というわけではない。ただ、解除されたとしても我々にはほとんど影響がない、auユーザーに大きな利便性が出るかというとそうではない、ということ」と述べ、SIMロック解除のメリットが薄いと指摘した。
これは、周波数帯や通信方式が事業者ごとに異なることが大きな要因。小野寺氏は、「旧800MHz帯は(CDMA2000方式のなかでも)日本だけの周波数(の使い方)で、LTEが1.5GHz帯というのも日本だけ。海外メーカーがメーカーブランドで入れてくれば販売へ影響を受けるだろうが、そこまでやるメーカーがない。国内市場には日本メーカーにこちらからお願いして、我々がリスクを負いながら展開している。メーカーが自主的に販売し、オペレーターがリスクを負わずに端末が流通すれば話は別だが、現状、なかなかそうはいかない」と語る。
同じW-CDMA方式を採用するNTTドコモとソフトバンクモバイルであっても、NTTドコモは800MHz帯を利用し、ソフトバンクモバイルは利用しないため、「もしソフトバンクモバイル端末にドコモのSIMカードを装着しても800MHz帯のエリアで利用できないというクレームが出てくる。これに対し、どうオペレーターが責任を負わなければいけないのか」と述べ、課題が山積しているとした。周波数について小野寺氏は「GSMは900MHz帯が標準となり、1800MHz帯、1900MHz帯の3つでほぼカバーしている。LTEも国際的にあわせるような流れがあるが、これは当然の話。全ての国で使える周波数を全て網羅する端末が出てくれば、SIMロック解除は便利だ」と指摘した。
さらに「海外でもオペレーターブランドの端末が出てきており、その事業者特有の機能も入れている。ある事業者では使えたが、他の事業者では使えないということが当然出てくる。(こういった点は)基本的に“ユーザーの選択”という問題だと思っている。強制的に外せと言っている国はほとんどない」と海外事情を紹介する。
規制当局主導で、従来の商習慣を変更しようとする動きについては、「またビジネスにお役所が絡むのかと。(分離プラン導入は)端末販売数が間違いなく減る、それでもやるのかと言ったが、実施された。(SIMロック解除について)ルールをどうするか知らないが、ビジネスはビジネスに任せたほうが絶対うまくいく」と述べ、民間の競争環境に委ねるべきとの意見を示した。
個人的にTwitterを利用しない意向を示した |
このほか、ソフトバンクの孫正義社長や、原口一博総務大臣らも利用する「Twitter」について、「小野寺氏は始めるつもりはないか」と問われると、「Twitterをやるつもりはない」と回答。ただ、「Twitter自体は良い仕組みだと思う。あの中で呟いてたことが責任ある形でできればいいが、ついうっかりというか、つい本音が出るというほうが正しいかもしれないけれど(笑)、あとでTwitterで呟いたことと逆のことを言おうものなら、皆さんからすると『なんだ』ということになる。私は、責任ある立場の人間が闇雲にやるべきではないと思っている。ただ、(米国大統領の)オバマさんが選挙時に利用してものすごく効果があった。そういう形の使い方はいいと思う。(孫氏が使っていることをどう思うか、という問いに対して)孫さんは非常にお上手なので、うまく使っておられると思う」と述べ、小野寺氏個人としての利用は避けつつも、Twitterそのものの効能は認め、使い方次第で有用になるとの見方を示した。
ライフログサービスについて、その定義によっては、アドレス帳保存など既に手がけているサービスもあるとしながら、Twitterのようなサービスはスマートフォンのほうが使いやすいとして、(ISシリーズ発表によって)スマートフォンにも注力する方針を示しているとした。
連結決算 | 販売手数料 |
移動体通信事業の営業利益への影響要因 | 固定通信事業の業績 |
固定事業への影響要因 | 設備投資 |
フリーキャッシュフロー | 配当額 |
Rev.Aのマルチキャリア化について | モバイルインターネットの進展は固定網の強化で支えられるとした |
コンテンツ・メディア事業について | 海外事業について |
WiMAXについて | 金融ビジネスについて |
固定系アクセス回線の伸びについて |
2010/4/23 19:46