初の国産哨戒機、日本が英国に売り込み検討

初の国産哨戒機、日本が英国に売り込み検討
 1月7日、日本が初の国産哨戒機であるP1を英国に売り込もうと検討している。写真は同型機。同日入手(2015年 ロイター/Japan Maritime Self-Defense Force/Handout via Reuters)
[東京 7日 ロイター] - 防衛装備品の輸出規制を緩和した日本が、初の国産哨戒機であるP1を英国に売り込もうと検討している。
政府はP1を広く世界に輸出したい意向だが、武器市場に参入したばかりの上、実戦経験のない日本の装備は認知度が低い。英国という武器先進国に採用されれば国際的な評価が高まり、その後の輸出に弾みがつくとにらんでいる。
日英の政府関係者は昨年7月、ロンドン近郊で開かれたファンボロー国際航空ショーで防衛装備の協力について協議。次期戦闘機F35用ミサイルを共同研究することで合意した。関係者によると、この場でP1の輸出も話題に上ったという。
両国は次回の実務者協議を来月にも開く予定で、P1も議題の1つになるとみられる。また、1月12、13日にロンドンの王立防衛安全保障研究所で開催される日英安全保障協力会議で、日本の政府関係者が同機をアピールする見通しだ。
<最有力はボーイングのP8>
英国では配備から40年以上たった哨戒機ニムロッドが、2011年に退役。英BAEシステムズが後継機を開発していたものの、計画の遅れと予算超過で2010年に中止へと追い込まれた。今年5月の英総選挙後に、後継機導入の選定が本格化する可能性がある。
しかし、最有力候補はP1ではなく、民間機B737をベースにした米ボーイング のP8とみられている。実績のある世界的なメーカーが手掛け、同盟国の米軍がすでに配備している。関係者によると、英国にとってリスクの少ない選択肢だという。
それでも日本が英国の要望に沿った機体を競争力のある価格で提案できれば、P8の対抗馬になる可能性があると、複数の関係者は話している。P1は20機まとめて購入したとして1機当たり約190億円。一方のP8は、昨年2月に米軍が1機当たり1億5000万ドルで16機を追加調達している。
また、P8はプログラムコードが厳密に管理されている一方、日本はP1の機体のみを提供し、英側が作ったシステムを搭載する共同開発も視野に入れている。英国にとっては、自由に仕様変更ができるなどのメリットがある。
「たとえ候補に上がっただけだとしても、英国が真剣に検討してくれることに意味がある」と日本の政府関係者は期待を示す。「P8と競合する機種であるということが、国際的に認知される」と同関係者は話している。
<ニュージーランドやカナダにも>
P1は川崎重工業 <7012.T>を中心に、日本企業だけで初めて手掛けた国産哨戒機。4発のジェットエンジンを搭載する。米ロッキード・マーチンからライセンスを取得して自衛隊向けに生産した現行のP3Cに比べ、速度と航続距離がそれぞれ1.3倍、1.2倍に向上している。
ただ、開発途中で翼や胴体に強度不足が見つかり、計画より1年遅れて2013年3月に配備が始まった。自衛隊は今後5年間で23機の調達を計画している。
日本は昨年4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出や他国との共同開発を認める防衛装備移転三原則を導入した。これまでに決まった主要案件は、米国へのミサイル部品の輸出と、英国とのF35用ミサイル共同研究。政府は防衛産業の維持・育成の観点から完成品の輸出も推進したいと考えている。
「(P1は)英国以外にも、ニュージーランドやノルウェー、カナダなど広い領海を持った国々が輸出先になる可能性がある」と、日本の英国大使館で武官を務め、現在は軍事コンサルタントのサイモン・チェルトン氏は語っている。

久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦

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