DOOM - レビュー
この地獄のシューティングゲームは、シングルプレイでは成功している
ゲームの半分を占めるシングルプレイは、1993年の初代「DOOM」がなぜ上手くいったのかをよく理解した上でつくられている。「DOOM」は現代のシューティングゲームの流行を取り入れつつも、昔懐かしの「run-and-gun(主人公が徒歩で戦うタイプのシューティング)」ゲームに仕上がっている。しかし一方で、マルチプレイは、「DOOM」シリーズが時を経て積み重ねた財産と個性を、現代のFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)のお約束という祭壇の前に、全て犠牲にしてしまっている。
タイトルの前に始まるオープニングは、最近のゲームの中でも最も記憶に残るものの一つだ。説明もなしにプレイヤーをいきなり主人公(通称ドゥームガイ)の立場に送りこむやり方は、説明挿入といった最新の手法をはっきりと拒否している。「DOOM」は意図的に他のゲームと境界線を引き、シリーズのプログラマーであるジョン・D・カーマックの名言に従うと高らかに宣言している。つまり「ゲームのストーリーとは、ポルノ映画のストーリーのようなものだ。あることは期待されているが、大して重要ではない」
シューティングしている間、プレイヤーは十中八九、ロックされた部屋に閉じ込められていて、館内放送が「近くにデーモンが多すぎてドアをアンロックできない」とアナウンスするのを聞いている。武器はスーパーショットガンのようなパワフルな武器が揃っているし、デーモンを一匹殺すと、「ちょっとやりすぎじゃないの?」と思うほどゴア感たっぷりなアニメーションを見ることができ、必要不可欠なヘルスをもらえるので、始めは最高に気持ちが良かった。しかし同じパターンを8.5時間のキャンペーン中に、何回も何回も繰り返すうちに感動は少しずつ薄れてしまう-部屋に入ったら後ろ向きに走って、敵が銃口に向かって一列に並ぶのを待つ。数を減らしたら今度は敵に突進して、残りのデーモンを片付ける。しかしパターン化されたシューティングではあるものの、予想外に楽しいボス戦でメリハリがついていた。
今作品が1993年の初代「DOOM」に似ているからと言って、これこそ「DOOM」のあるべき姿だと言う人もいる。失礼ながら、それはいくらなんでも期待値を下げすぎだ。「DOOM」が楽しいゲームではないという意味ではない。「DOOM」シリーズのアクションが古典だと考えられているのは理由があってのことだ。しかし今作品は25年前のゲームプレイを再びつくり直すことで、自らをユニークな存在にするまでには至っていない。
幸運なことにアリーナとアリーナの間の探索要素は、ロックされた部屋でデーモンを殺すのに飽きたプレイヤーに、ちょうどいい休憩時間を与えてくれる。探すものは沢山あり、一番難しいものでは、一種のプラットフォーム・ゲームをクリアしなければならない。
もしマルチプレイがシングルプレイと同じように、ノスタルジックなシューティングゲームの要素を残していたら、もっと良いものになっただろう。その代わりに「DOOM」は、いくつかのマズいアイディアを取り入れた平凡なシューティングゲームになってしまっている。「ロードアウト」はプレイヤーに2種類の武器を与え、「ハッキングモジュール」はperk(スキル強化能力)のような働きをする。近接戦システムはプレイヤーを敵の近くにテレポートさせ、自動でアニメーションが始まるが、このアニメーションは時に非常に馬鹿馬鹿しいタイミングで挿入される。
もっと悪いことには、マルチプレイの古いスタイルのマップは、新しい成長システムと矛盾している。限られたパワーアップアイテムとショートカットの存在は、そのマップを知り尽くした経験者に有利に働く。このことを考えると武器へのアクセスを限定したことと、「コール オブ デューティ」のようなレベルアップシステムを取り入れたのは奇妙としか言いようがない。これもまた、より強い武器とデーモンルーンを持った経験者に有利に働くからだ。
プレイヤーを4種類のデーモンのどれかに変異させるデーモンルーンの存在はとてもバランスが悪い。このパワフルなモードで、どれだけ敵を殺すことができるかを決めるのは、プレイヤーのスキルというよりも、どこに相手がいるのか探す能力だけだからだ。デーモンルーンが現れたら、多くのプレイヤーは今やっていることを放り出してでも、デーモンルーンに向かってダッシュする。なぜなら自分を一撃で終わらせることができる巨大なモンスターに殺されるのは全く楽しくないからだ。もし自分たち以外のチームがデーモンルーンを手に入れたら、君にできるのは逃げることだけだ。もし逃げられるならだけど。
マップエディターの「SnapMap」こそマルチプレイの真のハイライトだ。チュートリアルはしっかりとつくられているので、プレイヤーはこの絶妙にシンプルなマップ作成ツールを使って、自分のマップをつくりCo-opモードで遊んだり、対戦したりすることができる。テンプレートという枠組みの中から出ることはできないが、海外ではプレイヤーたちが既にこの制限を逆に利用してクリエイティブなマップを生み出している。初代「DOOM」の再現マップもあれば、お宝集めのCo-op対戦もあり、中には奇妙としか言えないものもある。すべてのマップはプレイヤーによって作成され、オンラインコミュニティでシェアされ評価される。
長所
- 息をつかせぬアクション
- プラットフォーム・ゲーム要素
- ボス戦
短所
- マルチプレイのロードアウト
- 同じパターンの繰り返し
総評
「DOOM」は2つの全く異なるシューティングゲーム(と風変わりなマップ作成ツール)からなっている。シングルプレイは「DOOM」シリーズの原点を熱心に追求することで、古き良き「run-and-gun」シューティングゲームをつくりだしたが、行き過ぎて模倣作品のようになってしまっている。押さえるべきところは押さえているが、変革的とは言えず、かつての名作の焼き直しのようになってしまっている。マルチプレイは新しいアイディアを使って古いゲームを生き返らせようとしているが、流行主義者と懐古主義者のどちらも満足させられないものになっている 。しかし一方で、奇抜さとシンプルさを兼ね備えた「SnapMap」は我々の心を惹きつけることに成功している。