NECは11月9日、IoT(モノのインターネット)の基盤を支えるICTプラットフォーム製品事業を強化し、モノから発生したデータに対しゲートウェイで情報処理を担う“エッジコンピューティング”を中核に、デバイスを含めた統合運用管理やデータ分析などIoT関連技術に注力すると発表した。
これに伴い、2016年度中に開発要員を現在の300人から1000人に増強する。グループ全体で1万人の技術者のうち、1000人をIoT関連事業に振り分ける。「現在700億の売り上げがあるこの分野を2020年には3000億円にする。世界の市場は20兆円を試算している」(執行役員常務 システムプラットフォームBU担当 庄司信一氏)
執行役員常務 システムプラットフォームBU担当 庄司信一氏
NECはIoTを「デバイス」「近距離ネットワーク」「エッジコンピューティング」「広域ネットワーク」「クラウドコンピューティング」コンピューティング」という5層モデルに分けて製品やサービスを提供。この5層に対応する次の5点をICTプラットフォームの強化方針として注力、製品の開発や拡販を推進する。
- 大量データをリアルタイムに処理し有効に活用するための「高速・高精度な分析処理」(高速処理サーバや分析ソフトなどとともにクラウドの強化)
- 負荷の変動に応じて、アプリケーションを最適な層で実行させ、効率的なシステムを実現する「分散協調型処理」(エッジコンピューティングの強化)
- 多数のデバイスから収集されたデータを安全かつ効率的に処理する「デバイスの仮想化」
- 5層全層にわたる「セキュリティ」の確保
- デバイスやネットワークを含めた「統合運用管理」の強化
製品強化の第1弾として、データ分析向け高集積サーバ「DX2000」や、離れた場所にあるCPUやGPUなどのリソースを最大40Gpbsで接続する「ExpEther 40G」を11月9日から発売する。さらに、スマートデバイスからクラウドを介してセンサなどを遠隔で操作できるソフトウェア「Collaboration Assistant」を2016年度に発売、2017年にもラックあたり10倍の性能を持つというベクトル型プロセッサを搭載したスーパーコンピュータの発売を予定している。
DX2000はデータ分析向けに1ラックあたり572台のサーバを収容可能。1シャーシ14サーバ搭載時の税別価格は1140万円から。インメモリ分散処理に適した設計により、大量・大規模・多様なデータの高速処理が必要なリアルタイム分析に適していると説明。分散並列処理プログラミングフレームワーク「Apache Hadoop」と組み合わせることで、従来システムで数時間を要する分析を数秒~数分で処理できるとしている。高集積化により省電力や省スペース化を実現し、既存モデルより運用コストを30%削減可能としている。
ExpEther 40Gは、コンピュータの設置場所や筐体サイズなどにかかわらずCPUやGPU、ハードディスクなどのコンピュータリソースをEthernetで接続する。複数のサーバの拡張スロットに「ExpEtherボード」を挿入することで1つのコンピュータリソースとして利用できる。「I/O拡張ユニット」は、GPGPUやソリッドステートドライブ(SSD)といったPCI Express準拠の各種周辺装置を挿入でき、柔軟に拡張でき、NEC独自の通信暗号技術「TWINE」にも対応している。ExpEtherボードとI/O拡張ユニットをセットで税別価格55万円から。
執行役員の福田公彦氏
Collaboration AssistantはSaaS版として2016年度の発売を予定している。デバイス層での、センサや周辺機器を活用したデータ収集や、機器操作、アプリケーション利用を可能という。例えば現場作業者がスマートフォンなどを用いて、収集したデータや作業状況がCollaboration Assistantを介して熟練技術者などと共有し、現場作業の効率化に寄与するとした。
競合他社がひしめくIoT領域で、他社との差別化をどこで図るのか。執行役員の福田公彦氏は「NECはこれまでIoTで必要となるサービスや技術分野に取り組んできており、ビッグデータ、クラウド、セキュリティ、SDNの4領域ですでにシステムやサービスのポイントを抑えている。IoTの一部分だけでなく、総合的にサポートするための知見をもっている。エッジコンピューティング分野や分散協調型の処理が必要になる中、全体のシステムをしっかり動かし運用していく技術的な土壌がある点がわれわれの優位点」と語り、IoT分野への注力戦略に自信をのぞかせた。