アイルランドの市民権も持つサンフランシスコの著名な詩人で、世界中にファンがいるWilliam Talcott氏が、骨髄のがんのため6月に亡くなった。そのときTalcott氏の娘は、同氏の知人の大半にその死を知らせることができなかった。それというのも、Talcott氏のメールアカウントとオンラインのアドレス帳がパスワードでロックされていたからだ。
ビートニク(ビート族)Neal Cassadyの友人だったTalcott氏(69)は、どうやらパスワードも墓の中に持って行ってしまったようだ。
これは、残された遺族にとって厄介な問題であり、最近多くなってきている。生活、アドレス帳、予定表、財務情報の管理をオンラインに移行する人たちが増えている。そうした人たちは、フォルダやデスクトップに生前しまいこんだ情報を2度と復元できなくなる危険を冒している。言い換えれば、セキュリティ上の脅威となるパスワードの共有をしない限り防ぐことができない危険だ。
「父はアドレス帳を紙に印刷していなかった。すべてオンラインにあると思う」とTalcott氏の娘であるJulie Talcott-Fullerさんは言う。「私では連絡をとるのが難しい人がいることを父もわかっていた。大変だった」(Talcott-Fullerさん)
「Yahoo(Talcott氏が契約していたプロバイダー)は、プライバシー保護法の規定により情報を教えることはできないと言っているが、父は死んだのだからそんな理屈は通らないと思う」
これはプライバシー上の権利というより財産権の問題だ、とElectronic Privacy Information Centerの常任理事Marc Rotenberg氏は指摘する。
「いわゆるプライバシーの侵害に関する権利は本人の死亡とともに消滅するが、財産権は消滅しない。私的なメールというのは今まで取り上げられたことのないケースだ。どのように扱うべきかすぐには分からないが、ある種のデジタル資産ということになるだろう」(Rotenberg氏)
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