[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/コンテンツにスキップ

ヤマニシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
株式会社ヤマニシ
Yamanishi Corporation
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
986-0843
宮城県石巻市西浜町1番地2
設立 1920年3月[1]
業種 輸送用機器
法人番号 7370301001364 ウィキデータを編集
事業内容 造船業、船舶修理業、鉄構造物製造業
損害保険代理業、生命保険代理業
代表者 管財人兼代表取締役 鈴木正巳
資本金 1億円[2]
売上高 198億円(2010年3月期)[3]
純利益 1億0656万4000円
(2022年02月28日時点)[4]
総資産 33億9466万2000円
(2022年02月28日時点)[4]
従業員数 145名[1]
決算期 3月31日[1]
主要株主 東日本大震災事業者再生支援機構
ヤマニシ持株会、七十七銀行[1]
主要子会社 ヤマニシテクノサービス株式会社
外部リンク 株式会社ヤマニシ ウェブサイト
テンプレートを表示

株式会社ヤマニシは、宮城県石巻市造船会社である。

歴史

[編集]

1920年(大正9年)に山西造船鉄工所として創業し、1973年(昭和48年)に現在の本社工場の操業を開始した[1]。創業から昭和40年代までは漁船を多数建造しており、1960年代には「北転船のヤマニシ」[5]としてオホーツク海ベーリング海での操業に耐えうる堅牢な設計を得意としていた。漁業実習船・調査船以外の遠洋漁船は遠洋漁業の衰退など需要の変化により、1994年竣工の第一榮久丸以降は建造実績がない[6]

1975年から東南アジア向けの貨物船の建造を開始し、1980年代からはフェリーおよびRO-RO船の建造を開始した。2003年には、建造が困難で他の造船所が引き受けなかった19,000DWT型のばら積み貨物船を船主の要望により受注して20隻以上のシリーズとなり、船型を拡大した24,000DWT型も建造している。同様に他の造船所の船台に空きがなかったため、船主の要望により受注したLPG船もシリーズ化するなど、外航船にも進出している[6]

1977年9月に会社更生法を申請し、1992年に会社更生手続が結了した[7]。1993年に社名を現在のヤマニシに変更した。

東日本大震災による被害

[編集]

2011年3月11日に発生した東日本大震災に被災し、同日15時45分頃に到達した津波により工場設備は壊滅状態となった。到達した津波の高さは5メートルで、2階までの浸水に従業員は避難して全員無事だったものの、創業以来の図面や顧客情報などは全て流失した。また、建造中だった2隻のばら積み貨物船石巻港内へ流出し、損傷した。3号船台で建造中の3月19日に進水予定だったTULIPANは、定川河口の宮城県道247号石巻工業港矢本線の道路橋に衝突して落橋させた後、東水路で擱座した。艤装岸壁で作業中だったSIDER JOYは、対岸の防潮堤に乗り上げた。TULIPANには81名、SIDER JOYには31名が乗船したままになっており、3月12日に海上保安庁海上自衛隊のヘリコプターにより全員が救助された[8][6]SIDER JOYは後に修理されて船主に引き渡されたが、損傷の大きかったTULIPANは解体された[9]

新造船事業と修繕事業の再建には約170億円が必要となり、七十七銀行の協力と企業再生支援機構の支援の下、事業再生が行われた[9]

受注中の建造契約に対応するため、2011年7月にはカナサシ重工と業務提携を結び、震災前に受注したばら積み貨物船2隻をカナサシ重工の設備を借り受けて建造した[3]。その間、本社工場の再建を進めて2012年8月に新造船部門を再開すると、同年11月21日に震災後初となる島根県漁業実習船神海丸進水式を実施し、2013年2月22日には震災後初めて受注した南日本汽船貨物船うりずんの進水式を実施した[9]。更に修繕事業の再建のため、東日本大震災事業者再生支援機構による出資や、三菱商事復興支援財団による融資を受け、修理用のドライドックと修繕工場の復旧と改修を実施した。2014年1月にはドライドックが復旧し、修繕部門の受け入れを再開したことで、概ね震災前の設備へ回復した[10]

しかしその後は受注が伸び悩み、災害の復旧費用や減価償却費が重荷になり、財務状況が悪化した[11]。2019年3月期の売り上げは約111億7600万円であり、ピークであった2010年3月期の6割にも満たなかった[12]。2020年1月31日に東京地方裁判所へ2度目となる会社更生法適用を申請。同日付で監督命令、調査命令並びに弁済禁止の保全処分を受けた[7][13]。同年2月17日に東京地方裁判所から会社更生手続開始決定を受けた[14]

建造設備

[編集]

石巻港西側に敷地面積245,108平方メートルの本社工場を有している。1号船台と2号船台は建造修理兼用、3号船台は建造用で、その他、修理用のドライドック、艤装岸壁、修繕岸壁、各種工場がある。

建造船一覧

[編集]
建造船一覧[15][16][17]
船番 船名 船種 船主 竣工 備考
S-1110 最上丸 漁業試験調査船 山形県 2019年
S-1108 翔洋丸 漁業実習船 大分県香川県 2018年 大分県立海洋科学高等学校 香川県立多度津高等学校

共同運航実習船

S-1107 熊本丸 漁業実習船 熊本県 2018年 熊本県立天草拓心高等学校 水産実習船
S-1106 ASTRAEA 冷凍運搬船 2018年
S-1103 うりずん21 RO-RO船 鹿児島荷役海陸運輸 2018年
S-1105 福島丸 漁業実習船 福島県 2017年 福島県立いわき海星高等学校 漁業実習船
S-1102 琉球エキスプレス5 RO-RO船 マルエーフェリー 2017年
S-1101 玄武 RO-RO船 日之出海運 2016年
S-1100 デイブレイクス ベル RO-RO船 プリンス海運 2016年
S-1098 琉球エキスプレス3 RO-RO船 マルエーフェリー 2015年
S-1096 SIDER MOON ばら積み貨物船 2015年
S-1095 海翔 漁業実習船 岩手県 2014年 岩手県立学校沿岸漁業 共同実習船
S-1093 琉球エキスプレス2 RO-RO船 マルエーフェリー 2014年
S-1092 みやしお 漁業調査船 宮城県 2013年
S-1091 うりずん 貨物船 南日本汽船 2013年 震災後、初の受注船
S-1090 神海丸 漁業実習船 島根県 2012年 島根県立水産高校の共同実習船、震災後、初の進水船
S-1072 SIDER LUCK ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2012年
S-1071 特維 MARGARET SW ばら積み貨物船 2011年
S-1064 SIDER JOY ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2011年
S-1088 鳥海丸 漁業実習船 山形県 2010年 山形県立加茂水産高校の実習船
S-1063 ALBATROSS ばら積み貨物船 2010年
S-1062 SPRING WIND 自動車運搬船 2010年
S-1085 GAS BANGKA LPG船 2010年
S-1061 SPRING SKY 自動車運搬船 2010年
S-1083 GAS MADURA LPG船 2010年
S-1087 千葉丸 漁業調査船 千葉県 2010年
S-1082 ANNE LPG船 2009年
S-1080 ANGELA LPG船 2009年
S-1079 MARIANNE LPG船 2009年
S-1078 JOAN LPG船 2009年
S-1060 CALLISTO ばら積み貨物船 2009年
S-1059 HELEN BOLTEN ばら積み貨物船 2009年
S-1058 SIDER AZZURRO ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2009年
S-1057 SIDER WHITE ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2009年
S-1056 菊羅 GAILLARDIA SD ばら積み貨物船兼木材運搬船 2009年
S-1077 あさかぜ21 フェリー 北日本海運 2008年 青函フェリー青森~函館航路で運航中
S-1066 ELISABETH LPG船 2008年
S-1065 MAGDALENA LPG船 2008年
S-1055 晟維 TRUMP SW ばら積み貨物船兼木材運搬船 2008年
S-1054 SIDER BLACK ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2008年
S-1053 SIDER RED ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2008年
S-1052 IMPERATOR ばら積み貨物船兼木材運搬船 2008年
S-1051 SIDER GREEN ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2007年
S-1050 SUNRISE MIYAJIMA ばら積み貨物船 菅原汽船 2007年
S-1048 EQUATOR ばら積み貨物船兼木材運搬船 2007年
S-1047 AVIATOR ばら積み貨物船兼木材運搬船 2007年
S-1046 IKAN TAMBAK ばら積み貨物船 2007年
S-1045 IKAN TAMBAN ばら積み貨物船 2006年
S-1044 SIDER PINK ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2006年
S-1043 KINATSI ばら積み貨物船 2006年
S-1041 LALINDE ばら積み貨物船 2006年
S-1040 SUNRISE MISEN ばら積み貨物船 2005年
S-1039 IKAN TERBANG ばら積み貨物船 2005年
S-1037 ASIAN HOPE ばら積み貨物船 2005年
S-1036 GLAD MATE ばら積み貨物船 2005年
S-1035 SIDER TIS ばら積み貨物船 Sider Navi S.p.A. 2004年
S-1034 MAGNATE ばら積み貨物船 2004年
S-1033 プリンセスわかさ フェリー コスモライン 2004年
S-1032 PALOMA REEFER 冷凍船 2004年
S-1031 GOOD SAILING ばら積み貨物船 2003年
S-1030 宮城丸 漁業実習船 宮城県 2002年
S-1028 琉球エキスプレス フェリー マルエーフェリー 2002年
S-1027 神泉丸 RO-RO船 栗林商船 2001年
S-1023 神瑞丸 RO-RO船 栗林商船 2001年
S-1025 りあす丸 漁業実習船 岩手県 2000年 岩手県立水産高等学校の共同実習船
S-1022 神明丸 RO-RO船 栗林商船 2000年
S-1021 うりずん21 RO-RO船 南日本汽船 2000年
S-1018 フェリーこうち フェリー 大阪高知特急フェリー 2000年 航路廃止により2006年4月にギリシャへ売却、Fast FerriesTHEOLOGOS Pとなる
S-1020 神王丸 RO-RO船 栗林商船 2000年
Y-1302 メガフロート(Fユニット) 実証モデル メガフロート技術研究組合 1998年
S-1015 あさかぜ5号 フェリー 北日本海運 1998年 青函フェリー青森~函館航路で運航中
Y-1316 GCS-1 運用研究用標的 防衛省技術研究本部 1997年
S-1017 福島丸 練習船 福島県 1997年 福島県立いわき海星高等学校の練習船
S-1016 第三十八北上丸 交通船 1997年
S-1014 CHO YANG HARMONY コンテナ船 1996年
S-1013 興貴丸 貨物船兼砂利運搬船 1996年
S-1012 海豊丸 貨物船兼砂利運搬船 1996年
S-1011 ガリンコ号2 旅客船 オホーツク、船舶設備公団 1996年 流氷観光船、紋別港発着で運航中
S-1010 新釧路丸 RO-RO船 栗林商船船舶設備公団 1996年
S-1007 フェリー東京 RO-RO船 晴海汽船船舶設備公団 1995年
S-1009 はぎ 油回収船 東北石油 1995年 JX日鉱日石エネルギー仙台製油所の油回収船
S-1008 雲龍丸 漁業実習船 福井県 1994年 福井県立小浜水産高校の実習船
S-1006 第一榮久丸 遠洋漁船 今野水産 1994年 サケマス流網・マグロ延縄・サンマ棒受網漁船
S-1005 翔洋 漁業実習船 岩手県 1993年 岩手県立水産高校の共同実習船
S-1004 北上一号 作業台船 宝栄建設 1993年
S-1003 第二十八共勝丸 貨物船 株式会社共勝丸 1993年
S-1001 フェリー屋久島2 フェリー 折田汽船 1993年
S-1002 しいふれんど2 旅客船 シーフレンド 1992年 軽合金製双胴型多目的旅客船
S-1000 雄勁丸 自動車運搬船 晴海汽船船舶設備公団 1992年
S-995 SOCOFL STAR 貨物船 三菱商事 1992年
S-994 SOCOFL WAVE 貨物船 三菱商事 1991年
S-993 SOCOFL PEARL 貨物船 三菱商事 1991年
S-992 LESOZAVODSK 貨物船 三菱商事 1991年
S-997 フェリーきりしま RO-RO船 晴海汽船船舶設備公団 1991年
S-996 新宮城丸 漁業調査船 宮城県 1990年 宮城県水産業振興課所管の漁業指導船、東日本大震災による津波で沈没
S-991 第百五拾八俊洋丸 遠洋漁船 兼藤漁業 1990年 マグロ延縄漁船
S-987 第三十五新栄丸 遠洋漁船 個人 1990年 マグロ延縄漁船
S-986 シーフレンド1 旅客船 シーフレンド 1990年 軽合金製双胴型多目的旅客船
S-985 第三瑞寶丸 遠洋漁船 枝幸漁業 1990年 マグロ・サンマ漁船
S-983 第三十八鹿島丸 遠洋漁船 鹿島漁業 1990年 マグロ延縄漁船
S-982 第三十八三王丸 遠洋漁船 浜屋漁業 1990年 マグロ延縄漁船
S-981 第十一龍神丸 遠洋漁船 鈴木漁業部 1990年 マグロ延縄漁船
S-980 第百六拾八俊洋丸 遠洋漁船 兼藤漁業 1990年 すり身加工船
S-978 第三十八海洋丸 遠洋漁船 稚内海洋 1990年 すり身加工船
S-977 フェリーたかちほ RO-RO船 晴海汽船船舶設備公団 1989年 マルエーフェリー「たかちほ」として東京~沖縄航路で運航中
S-976 第三十八幸洋丸 遠洋漁船 伊妻漁業 1989年 沖合底曳網漁船
S-975 あすか 旅客船 ニュー松島観光船 1989年
S-973 第八十八瑞寶丸 遠洋漁船 枝幸漁業 1989年 すり身加工船

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d e 会社概要”. 株式会社ヤマニシ. 2015年3月22日閲覧。
  2. ^ a b 株式会社ヤマニシへの支援決定について』(プレスリリース)公益財団法人三菱商事復興支援財団、2012年11月28日http://www.mitsubishicorp-foundation.org/pdf/mcdrfpr121128.pdf2015年3月22日閲覧 
  3. ^ a b “ヤマニシ、震災後初の造船 静岡の同業と提携し来春完成へ” (日本語). 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2011年7月26日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASFB2103M_R20C11A7L01000/ 2015年3月22日閲覧。 
  4. ^ a b 株式会社ヤマニシ 第37期決算公告
  5. ^ 株式会社ヤマニシに対する支援決定について』(プレスリリース)株式会社企業再生支援機構、2012年2月9日http://www.revic.co.jp/pdf/news/2012/120209newsrelease.pdf2015年3月22日閲覧 
  6. ^ a b c No.68 社長インタビュー 震災からの復興 ― 株式会社ヤマニシのご紹介 ―」『人とシステム』第68号、NTTデータエンジニアリングシステムズ、2013年1月1日、2015年3月22日閲覧 
  7. ^ a b 倒産・動向速報記事 株式会社ヤマニシ帝国データバンク 2020年1月31日
  8. ^ 海上保安庁海上保安レポート2012 特集 東日本大震災 ― 海上保安庁の対応と今後の対策 ―』(レポート)、日経印刷株式会社、2012年5月12日。2015年3月22日閲覧
  9. ^ a b c 復興庁被災地での55の挑戦―企業による復興事業事例集― 事例2-10 造船会社ヤマニシによる多方面の制度を活用した事業再開 (PDF)』(レポート)、2013年5月23日。2015年3月22日閲覧
  10. ^ “被災の東北最大級造船所が修復 ヤマニシの修理用ドック” (日本語). 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2014年1月24日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASFB2404A_U4A120C1L01000/ 2015年3月22日閲覧。 
  11. ^ 宮城・石巻のヤマニシ、更生手続き開始決定日本経済新聞 2020年3月18日
  12. ^ 倒産速報 ヤマニシ帝国データバンク 倒産速報 2020年1月31日
  13. ^ TSR速報 (株)ヤマニシ東京商工リサーチ 2020年1月31日
  14. ^ 更生手続開始決定のお知らせ ヤマニシ 2020年2月17日
  15. ^ 造船実績”. 株式会社ヤマニシ. 2015年3月22日閲覧。
  16. ^ 建造実績(平成元年~平成9年)”. 株式会社ヤマニシ. 2015年3月22日閲覧。
  17. ^ 工事経歴 Ⅲヤマニシ請負建造分の当社請負実績(平成元以降)”. 株式会社川口工業. 2015年3月22日閲覧。

外部リンク

[編集]