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2012.08.30

アダム・スミスの「生きるヒント」 第11回
「所得格差は本当に問題か?」

第10回はこちらをご覧ください。

 スミスは、分業と資本蓄積が国民の富を増やしていくために必要だと説きました。しかしこれは「もっと上を! さらなる成長を!」という無意味な経済発展を意味していたわけではありません。

 スミスが生きていた時代は圧倒的な「モノ不足」の時代です。つまり「もっと多く! もっと上を!」ではなく、「少しでも不足分を補うために!」の経済発展だったのです。

 ここを理解していないと、スミスの意図を勘違いしてしまうことになります。スミスが意図した経済発展は、単なる金儲けではなく、「貧困をなくすため」でした。

 スミスは、分業と資本蓄積の結果、富が増産され、それが社会の最下層まで広がると考えました。この「社会の最下層」つまり貧困層を救うための分業であり、資本蓄積なのです。

格差は「悪」なのか?

 ここで考えてみたいことがあります。それは「格差」についてです。

 分業が貧困を救うとはいえ、分業によって商品を大量に生産できるようになればそれだけ資本家が儲かります。ここで持てる者と持たざる者の格差が拡大するのではないか、という懸念がわいてきます。

 その「格差」について、スミスはどう考えていたのでしょうか? もしくは、当時はそこまで認識が届かなかったのでしょうか?

 結論を言いますと、スミスは分業によって格差が拡大することを認識していました。そしてそのうえで「貧困を救うためには格差が生じても仕方がない」と考えていました。

 現代では、格差は「非常に大きな問題」と捉えられています。たしかに社会に不公平感が蔓延し、暴動やデモが起きるなど社会が不安定になるかもしれません。しかし、だからといって富が増えなくていいのでしょうか?

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