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主要50雑誌の「部数激減(秘)データ」

元気なのは経済誌だけ。業界トップとなった小学館でさえエビちゃんに頼る「総負け」の惨状だ。

2007年8月号 DEEP

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出版業界の売上高万年2位といわれてきた小学館が常勝・講談社をついに抜いた。しかし、これは副業の伸びに支えられた歪(いびつ)な勝利。出版業界はいま、「総負け」の氷河期に喘いでいる。

小学館の2006年度の売上高は1470億円と、ライバル・講談社(1456億円)を初めて上回った。だが、東京・一ツ橋の小学館本社から凱歌は聞こえず、創業以来の2位に転落した東京・音羽の講談社からも、反転攻勢の狼煙は上がらない。小学館にしても売上高が前年度比0.8%落ちており、勝ち取った首位ではなく、同5.8%減の講談社よりも落ち幅が小さかったにすぎないからだ。小学館のある幹部は「06年度は05年度並みの1480億円を目指したのに、結果は10億円下回った」と浮かない表情だ。首位奪取は敵失によるもので、役員報酬も減額を余儀なくされた。

一方の講談社の幹部も「ウチはここ数年、新雑誌創刊、書籍発刊を絞り込む縮小均衡が続いており、首位奪回を目指す意欲を失っている」とぼやく。同社の屋台骨を長く支えた雑誌は『週刊少年マガジン』だが、「この10年間に部数が300万部減った。一冊200円として1週間に6億円、年間では300億円の減収になる。この大きな穴はさすがに簡単には埋められない」と諦め顔だ。

講談社の旗艦誌といえば、この『マガジン』に『週刊現代』『with』を加えた3誌だが、『週刊現代』はこの5年間に部数が61万8千部から41万6千部へと32.7%減少。『with』も同じく40.5%減った。この結果、06年度の雑誌部門の売上高は908億円と前年度比で8.9%減となった。講談社は10年前に全社の売上高が2千億円を超えたが、以後はずるずると数字を落とし続けている。

一方の小学館の雑誌はファッション誌がテレビなどとの連携で踏ん張った。人気モデルの蛯原友里(エビちゃん)を専属で起用した『CanCam』が06年度下期は62万3000部と5年前の1.9倍の部数に育った。左ページに掲げた主要50誌の販売部数の中で断然トップの伸び率だ。さらに世代別に揃えた女性向けファッション誌が好調。これらが過去5年間で部数が45.3%も落ちた『週刊ポスト』を支えた。

(日本ABC協会調べ)
主要50誌 販売部数の推移
濃い緑は01年と比較して20%以上の激減、淡い緑は20%未満の部数減を示す。
雑誌名01年
7~12月
06年
7~12月
対5年前
比(%)
発行元
週刊朝日305,984202,84566.3%朝日新聞社
サンデー毎日104,29672,62569.6%毎日新聞社
週刊新潮489,206495,146101.2%新潮社
週刊文春602,569550,68591.4%文藝春秋
週刊現代618,161415,85967.3%講談社
週刊ポスト682,072373,11154.7%小学館
週刊アサヒ芸能241,060165,88568.8%徳間書店
週刊大衆346,375226,40965.4%双葉社
ニューズウィーク日本版110,13184,15376.4%阪急コミュニケーションズ
週刊東洋経済80,36878,50197.7%東洋経済新報社
週刊ダイヤモンド120,938112,08892.7%ダイヤモンド社
日経ビジネス344,858333,03996.6%日経BP社
プレジデント171,042197,249115.3%プレジデント社
オール投資28,43235,524124.9%東洋経済新報社
日経ベンチャー92,51369,56375.2%日経BP社
日経情報ストラテジー25,74720,47779.5%日経BP社
日経レストラン21,75120,69995.2%日経BP社
週刊女性294,069220,55375.0%主婦と生活社
女性自身421,631341,80681.1%光文社
女性セブン475,127352,85874.3%小学館
主婦の友252,53859,40523.5%主婦の友社
婦人公論166,663129,57777.7%中央公論新社
ESSE455,454471,923103.6%扶桑社
クロワッサン219,033184,45384.2%マガジンハウス
家の光832,636646,20877.6%家の光協会
non-no557,426317,95157.0%集英社
Can Cam323,553622,660192.4%小学館
JJ470,555175,63437.3%光文社
with635,055377,84459.5%講談社
オール讀物58,83445,25576.9%文藝春秋
特選街74,04276,011102.7%マキノ出版
文藝春秋461,427415,97590.1%文藝春秋
SAPIO135,94587,03564.0%小学館
日経エンタテインメント!125,05594,53475.6%日経BP社
週刊プレイボーイ418,087251,21560.1%集英社
Tarzan83,60695,506114.2%マガジンハウス
Boon160,68246,90029.2%祥伝社
Goods Press127,90273,05257.1%徳間書店
日経コンピュータ57,45848,04883.6%日経BP社
日経ソフトウエア39,72323,53559.2%日経BP社
日経パソコン349,762232,89366.6%日経BP社
週刊アスキー187,847143,21076.2%アスキー
日経PC21174,132159,72591.7%日経BP社
日経サイエンス25,29223,80994.1%日経サイエンス社
日経アーキテクチュア49,81744,92890.2%日経BP社
Casa BRUTUS59,81744,93975.1%マガジンハウス
Tokyo Walker137,06492,09467.2%角川クロスメディア
ナンバー168,119141,18584.0%文藝春秋
CARトップ144,804129,10889.2%交通タイムス社
ザテレビジョン730,572502,20268.7%角川ザテレビジョン

総合週刊誌の時代は終わった

その小学館ですら、雑誌部門全体の売り上げは05年度比3.6%減という惨状。他社は推して知るべしだ。その背景には市場の縮小という構造問題がある。

出版科学研究所によると、06年のわが国の雑誌の市場規模は1兆2200億円で、前年に比べて4.4%縮小。1999年の4.2%減を上回る、過去最大の落ち込みとなった。98年から9年連続で縮小が続いており、歯止めがかからない。

左表の主要50誌のうち、5年前より部数が増えている雑誌は『CanCam』(92.4%増=小学館)、『オール投資』(24.9%増=東洋経済新報社)、『プレジデント』(15.3%増=プレジデント社)など7誌と、全体の2割に満たない。なかでは経済誌の健闘が目立つ。『週刊東洋経済』(2.3%減=東洋経済新報社)、『日経ビジネス』(3.4%減=日経BP社)、『週刊ダイヤモンド』(7.3%減=ダイヤモンド社)など、たとえ減少組でも落ち幅は小さい。

半面、古い歴史をもつ総合週刊誌は微増の『週刊新潮』を除いて、軒並み部数を大きく落としている。なかでも『週刊ポスト』(小学館)、『週刊朝日』(33.7%減=朝日新聞社)、『週刊現代』(講談社)、『サンデー毎日』(30.4%減=毎日新聞社)の4誌は30%を超える暴落ぶりだ。政治も経済も文学もゴシップも、といった万人向けの旧来型総合誌は急速に支持を失いつつある。

既存雑誌が沈没する中、雑誌創刊も振るわない。06年度の創刊(復刊を含む)は161点で、前年度より40点、19.9%減少した。一方、休刊・廃刊は前年より27点多く、19.3%増えた。

電通がまとめた06年版「日本の広告費」によると、インターネットの広告費が前年比29.3%増の3630億円と雑誌(3887億円)に肉薄している。雑誌は同1.5%減と落ち込みが続いており、07年中にネットが雑誌を上回るのは必至の情勢なのだ。

しかしファッション誌に典型的にみられるように、コンテンツ(情報の内容)よりブランド商品や化粧品、宝飾品などの広告で安直に稼ぐ「カタログもどき」の雑誌は花盛り。小学館は昨年度、こうした広告収入が過去最高の247億円に達し、講談社(187億円)を60億円上回った。さらに「ドラえもん」「ポケモン」といった人気キャラクターの映画化等にまつわる著作権といった副次的な収入も講談社より53億円多かった。いわば本業の不振を副業で補ったのが小学館の「勝因」であり、対策が遅れた講談社は首位陥落した。

新潮社のある編集者は「エビちゃん効果やメディアミックスはいつまで続くだろうか。結局は優れたコンテンツや書き手を抱え続ける出版社だけが生き残る」とみる。

講談社のある中堅幹部は若手編集者のチャレンジ精神の低下を憂え、「社内に『俺は絶対こんな雑誌がつくりたい』という気骨のある編集者が少なくなった」と、編集者のサラリーマン化を嘆く。

出版衰退の負のスパイラルを脱する出口はあるのだろうか。

   

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