第56条(終了、廃棄又は脱退に関する規定を含まない条約の廃棄又はこのような条約からの脱退)
1 終了に関する規定を含まずかつ廃棄又は脱退について規定していない条約については、次の場合を除くほか、これを廃棄し、又はこれから脱退することができない。
(a)
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当事国が廃棄又は脱退の可能性を許容する意図を有していたと認められる場合
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(b)
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条約の性質上廃棄又は脱退の権利があると考えられる場合
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2 当事国は、1の規定に基づき条約を廃棄し又は条約から脱退しようとする場合には、その意図を廃棄又は脱退の十二箇月前までに通告する。
第60条(条約違反の結果としての条約の終了又は運用停止)
1 二国間の条約につきその一方の当事国による重大な違反があつた場合には、他方の当事国は、当該違反を条約の終了又は条約の全部若しくは一部の運用停止の根拠として援用することができる。
2 多数国間の条約につきその一の当事国による重大な違反があつた場合には、
(a)
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他の当事国は、一致して合意することにより、次の関係において、条約の全部若しくは一部の運用を停止し又は条約を終了させることができる。
(i) 他の当事国と違反を行つた国との間の関係
(ii) すべての当事国の間の関係
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(b)
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違反により特に影響を受けた当事国は、自国と当該違反を行つた国との間の関係において、当該違反を条約の全部又は一部の運用停止の根拠として援用することができる。
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(c) |
条約の性質上、一の当事国による重大な違反が条約に基づく義務の履行の継続についてのすべての当事国の立場を根本的に変更するものであるときは、当該違反を行つた国以外の当事国は、当該違反を自国につき条約の全部又は一部の運用を停止する根拠として援用することができる。
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3 この条の規定の適用上、重大な条約違反とは、次のものをいう。
(a)
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条約の否定であつてこの条約により認められないもの
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(b)
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条約の趣旨及び目的の実現に不可欠な規定についての違反
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4 1から3までの規定は、条約違反があつた場合に適用される当該条約の規定に影響を及ぼすものではない。
5 1から3までの規定は、人道的性格を有する条約に定める身体の保護に関する規定、特にこのような条約により保護される者に対する報復(形式のいかんを問わない。)を禁止する規定については、適用しない。
第61条(後発的履行不能)
1 条約の実施に不可欠である対象が永久的に消滅し又は破壊された結果条約が履行不能となつた場合には、当事国は、当該履行不能を条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができる。履行不能は、一時的なものである場合には、条約の運用停止の根拠としてのみ援用することができる。
2 当事国は、条約に基づく義務についての自国の違反又は他の当事国に対し負つている他の国際的な義務についての自国の違反の結果条約が履行不能となつた場合には、当該履行不能を条約の終了、条約からの脱退又は条約の運用停止の根拠として援用することができない。
第62条 事情の根本的な変化
1 条約の締結の時に存在していた事情につき生じた根本的な変化が当事国の予見しなかつたものである場合には、次の条件が満たされない限り、当該変化を条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができない。
(a)
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当該事情の存在が条約に拘束されることについての当事国の同意の不可欠の基礎を成していたこと。
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(b)
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当該変化が、条約に基づき引き続き履行しなければならない義務の範囲を根本的に変更する効果を有するものであること。
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2 事情の根本的な変化は、次の場合には、条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができない。
(a)
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条約が境界を確定している場合
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(b)
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事情の根本的な変化が、これを援用する当事国による条約に基づく義務についての違反又は他の当事国に対し負つている他の国際的な義務についての違反の結果生じたものである場合
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3 当事国は、1及び2の規定に基づき事情の根本的な変化を条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができる場合には、当該変化を条約の運用停止の根拠としても援用することができる。
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