3.2. 訴訟要件の調査
(1) 調査資料の収集
裁判所は当事者(被告)の申立てを待たず、職権で訴訟要件が満たされているかどうかを調査しなければならない(職権調査主義)。ほとんどの事由は、裁判所が職権で判断の基礎となる資料を収集するが(職権探知主義)、公益性の強くない訴訟要件は、当事者が収集するものとされている(そのため、裁判所は当事者が提出した資料に基づき判断する)。このような事由としては、任意管轄、訴えの利益や 当事者適格(判決に対世効が与えられる場合は除く)が挙げられる。
(2) 調査の順序
前述したように、訴訟要件として多くの事由を挙げることができるが、その調査の順番について民事訴訟法は定めておらず、学説は対立している。まず、訴えの適法性に関する要件について調査し、次に、当事者に関する要件について調査すべきと解される[1]。
(3) 訴訟要件の調査と本案審理の順序
訴訟要件の調査と本案審理の順番についても明文の規定がないが、本案の審理に先立ち、訴訟要件の審査が終了していなければならないわけではない。つまり、訴訟要件は本案審理が終結する時点(つまり、口頭弁論終結時)で備わっていればよく、審理を並行して行うことができる。
(4) 訴訟要件の欠缺と本案判決
訴訟要件は本案判決を下すための要件であるため、原告の請求に正当な理由がないことが明らかな場合でも、訴訟要件の調査が完了するまで請求棄却判決(本案判決)を下してはならない。調査の結果、訴訟要件が欠けていることが判明するとき、裁判所は訴えを却下しなければならないが(原則)、原告の請求を認めない点で違いはなく、審査の継続は訴訟経済に反すると批判されている[2]。
中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編『新民事訴訟法講義』第2版(有斐閣2004年)407頁参照(松本博之)。
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