『少女少年』(しょうじょしょうねん)とは、後に休刊となった小学館の学年雑誌「小学五年生」と「小学六年生」を中心に連載されている、シリーズ漫画作品である。 単行本化もされており、学年雑誌で連載された7作は「てんとう虫コミックススペシャル」に、残りの2作は「ちゃおコミックス」にそれぞれ分類される。
作者は、アニメ化もした『水色時代』や小学館漫画賞(児童向け部門)を受賞したエロ漫画『ないしょのつぼみ』で有名なやぶうち優である。
概要
1997年4月号の「小学六年生」で連載開始、以降ほぼ年度ごとの区切りで1作品ずつ発表し、2003年2月号の「小学六年生」を以って学年雑誌での連載が終了…というよりは一先ず完了した。 「ちゃおデラックス」で不定期連載された作品を含めて全8作品であり、当時におけるやぶうち優作品の最長シリーズであった。
連載された作品全てに共通するのは、女装した小学生の男の子が軸となる物語であることで、8作目を除いて「主人公の男の子が女装の状態で芸能界で活動する」ということも共通する。 また、学年雑誌での7年間は、1年ごとにストーリーや登場人物がほぼ入れ替わる面倒臭さ大変さであるが、これは年度ごとに読者が総入れ替えになる学年誌の特徴を考慮しているためと推測される。(『ポケットモンスターSPECIAL』は新規読者置いてきぼりでそんなんじゃなかったけど。)
元々は「ちゃお」での連載を念頭に、シリーズ初代の連載の10年前に構想されていたが、同誌編集部の方針転換で男性主人公が不可となったために、「ちゃお」での連載を断念したという。 その後、1996年に作者の代表作である『水色時代』のアニメ化に合わせて、「小学六年生」掲載の番外編を執筆した事から同雑誌編集部との繋がりが出来、10年の時を経てついに連載開始となった。
そして2012年、「ちゃお」4月号で、男性主人公不可は変わらぬものの、新シリーズ連載開始となった。
各作品のあらすじ
この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
少女少年
ある日、同い年の人気女性アイドルである青野るりの曲を家のカラオケセットで唄っていた少年、水城晶(みずき あきら)。 その綺麗な高音とルックスにより姉の瞳から「どーせなら」と無理やり女装され、しかしノリノリでそのままカラオケを唄うことに。
その歌声に惹かれ、偶然にも外から観ていた、とある芸能事務所の関係者である村崎ツトムは彼の才能を見出すものの、女装しているとは気づかないまま家に押しかけて、晶を「女性アイドル」としてスカウトしてしまう。 後で男だと知って落ち込む村崎だが、彼が勤める事務所は、るりに匹敵するアイドルを売り出さなければ潰れてしまう状態であった。
才能があると観た晶を捨てきれない彼は、なんと「女装して女性アイドルとしてデビュー」することを晶に提案。 渋る晶であったが、るりのファンであることを見透かされたのか、「るりちゃんに会えるのに…」という村崎の釣り文句にまんまと釣られる形でその案を呑むことに。
…しかし、これが伝説の始まりになろうとは、この場にいた3人の誰もが知る由もなかった。
少女少年II -KAZUKI-
外見から少女によく間違えられる少年、星河一葵(ほしかわ かずき)。
ある日街を歩いていると、とある芸能プロダクションの関係者である村崎ツトムに、ある映画の子役のオーディションを受けてみないかとスカウトされる。 その理由が、その映画の主役である女優の大空遥(おおぞら はるか)に一葵がそっくりであるからだという。
思わぬ話に浮かれていた一葵は、帰宅後さっそく父親に相談するが、その映画の資料を目にしつつ、スカウトされた時の話を聞いて、父親の表情が曇る。父親は一葵に、突然あることを告げる。
実は、一葵は遥の実の息子であり、父親は理由あってその事を隠さねばならなくなった遥の元マネージャーであった。 彼は「大空遥のマネージャーとしての最後の仕事」として、一葵を引き取る事を決心し、育ての父親となった。 そして今、成長した一葵に「母さん(遥)を怨まないでやってくれ」とこれまでの経緯を話したのだった。
しかし、話を聴いても納得のいかない一葵は、真相を確かめるべくそのオーディションに受けることを決意したが、そのオーディションは女の子だけが参加可能で、一葵は村崎に女の子と間違えられてスカウトされたことに気付く。
それでも、「父さんが言った話が本当なのか…?」という思いで、一葵は押し切る形で村崎の協力を得て、女の子としてオーディションに臨むのであった。
少女少年III -YUZUKI-
香川県丸亀市のとある島に住む少年、橘柚季(たちばな ゆずき)は、毎回二人の兄たちにイタズラされてしまうことが悩みの種だった。
彼にはちょっとした野望があった。それはテレビで放映されている『発掘!タレントオーディション』という素人オーディション番組に出演して、うまくいけば東京で芸能活動をしつつ有名(スター)になることで、兄たちからのイタズラから解放されることだった。 その話を柚季から聴かされた、学校内の唯一の同級生で幼馴染の佐倉ちよ子から「ゆずきがスター?そんな女みたいな顔で…ムリよ」と笑われるが、柚季の意思は固かった。
だが、後に兄たちからオーディションの話がバレてしまい、何も知らぬまま性別を女に書き換えられてしまった応募書類を出してしまったが、なんと書類審査に通ってしまった。
オーディション本番、某男性ヒップホップダンスボーカルユニットの唄を歌うつもりだったが、急遽自分の声の特徴に合わせて女性歌手の白川みずきの曲で勝負し、見事合格した。 そして彼はここで初めて、自分が女の子のみのオーディションを受けていたことにようやく気づき、その後丸亀に帰って真相を知ると愕然とした。
だが彼は、このチャンスを得たことでこれ以上兄たちからの邪魔が入らないと確信し、女として芸能活動をやっていくことを決意した。 …同時にそれは、長年の付き合いであるちよ子との辛い別れを選択したことをも意味するのであった。
少女少年IV -TSUGUMI-
「世の中には女のほうが何かと得なことが、いっぱいあるんだよ!」という理由で、普段から女装することが多い少年、白原允(しろはら みつる)。
普段は幼馴染の美少年である大嵩雪火(おおたか せっか)と共に、ビックリマンのシール収集に熱心であるのだが、いざ女装する際はどこからどうみても美少女にしか観えない美女装少年に変身する。 なお、雪火からはあのような理由でわざわざ女装することについて理解してもらえていない。
ある日、女と間違えられて女の子タレント専門の芸能事務所の関係者である村崎ツトムにスカウトされかけられるが、允は村崎を変質者と勘違いしてその場からすぐさま立ち去るものの、その時村崎に女装していたことがばれてしまう。 しかし後日、村崎本人からアプローチされて改めてスカウトされる。 だが、それは「女装して、女の子として芸能活動やってみる気、ない?」という条件付きであった。
どのみちバレたら格好悪いと思った允だが、村崎から「ひと目で『売れる!』ってビシバシ感じた」と言われ、さらに決まり文句として「ホント、キミなら上手くいけば億単位で稼げるよ」とまで言われる。 「(売れれば)ビックリマンチョコが100万個以上買える…!」と思った允は、まんまと村崎の口車に乗ってしまった形で、女装して、女の子として芸能界入りすることを決意した。
…しかしこの選択が、後々もっと自分の首を絞めることになるなどと、允は思いもしなかったのだった。
少女少年V -MINORI-
女顔であることにコンプレックスを感じている少年、蒔田稔(まきた みのる)は、ある日クラスメートの女の子である植原茜(うえはら あかね)の姉であり、超人気タレントの植原忍(うえはら しのぶ)が久々に家に帰ってくることを聴きつけ、忍に会わせてもらう為に茜と一緒に彼女たちの家に向かっていた。 ただ、植原家は基本的に男子禁制(身内以外の男は出入り禁止)であったために、稔は道端の途中で女の子の格好にされてしまう破目に。
しかしその忍の帰宅は、実は帰ってきた茜を強引に芸能界デビューさせ、「植原忍の妹・デビュー」という記事にしようとする、芸能事務所の社長である彼女たちの父親の計画の手の内であった。 さらに忍との差別化を計ろうと、その父親は忍にあこがれて伸ばしていた茜の長い髪を無理やり切ってしまう。 一方、茜は忍と比べられてしまうのを恐れて「タレントになんかなりたくない!」という思いを稔に打ち明ける。
稔はそんな茜を救おうと、この状況を逆手にとって、半ば強引に「女の子二人組」としてデビューすることにした。 稔はこうした理由を、時期がきたら業界をぶち壊すつもりで茜の父親に一泡吹かせるためだと、茜に説明した。 その作戦に納得のいかなかった茜だが、稔が自身のためにやってくれたことであると受け止めた。
だが、稔にはこの選択を取った理由が他にもあることを、茜がまだ知ることはなかった…。
少女少年VI -NOZOMI-
ある日、同級生で幼馴染の少女である児玉なすのと買い物をしていた少年、谷川光(たにがわ ひかる)は、自身と瓜二つの「少年」にぶつかって遭遇する。
光たちはその後、芸能事務所の関係者である村崎ツトムと出会い、前に遭遇したその「少年」だと思い込まれた光は強引にもグラビア撮影の現場に連れて行かれる。 後にその「少年」でないと誤解は解けるが、スタイリストの小町さんから「もう撮影まで時間がないですよ…!」と言われ悩んだ末に出した村崎の結論…それは、瓜二つの光を身代わりとして撮影に参加してもらうことだった。
そして光は、遭遇した「少年」の話を聴いて驚愕する。「少年」は男ではなく女で、U-15アイドルの中でもトップクラスのアイドルである青葉のぞみであった。彼女が仕事を抜け出す際は、必ず男装するのがお決まりであった。
そんなこんなで、普段ののぞみと瓜二つの女装姿にされた光は、初めてで且つ不慣れなグラビアの撮影に途惑うも、なんとか乗り切ってみせ、村崎からその才能を見出される。 そういうこともあって、以降度々サボるのぞみの代役を、嫌々ながらも、だがちょっとずつではあるがノリノリで、光は引き受けることを決めた。
しかしこのことが、後にとんでもない事態を招くことになるなど、光は思いもしなかったのであった。
少女少年VII -CHIAKI-
通学先の演劇部に所属する少年、十河太一(とがわ たいち)は、「アニメ声」と言われるぐらいのボーイソプラノの声と女顔であることにコンプレックスを感じていた。 (ちなみに声のイメージとしてなのか、作中に某ハムスターアニメのキャラクターが描かれているが、このことについて作者から何も言及はされていない。)
太一はあることを目的に芸能界入りしようと演劇に取り組んでいるが、番組のオーディションに落ちたりしている。 逆に同じオーディションを受けた親友の京極瞬(きょうごく しゅん)は合格し、芸能界デビューを果たしている。
そんな中、太一にあるチャンスが訪れた。演劇部が公演する白雪姫をテレビ番組の紹介コーナーで偶然にも知った芸能事務所「村崎プロダツク」の村崎ツトムは、白雪姫の主役を張る小学生に釘付けとなり、だが演じているのが女の子であると自ら思い込んでしまったまま、早速スカウトしに行った。
そして村崎は、白雪姫を演じたのが男の子である事実に気づかされて落ち込むが、直後に気を取り直して…というよりは開き直ったような形で、改めて太一に「その『声』を生かして、声優になる気ない!?」と持ちかけ、スカウトを試みた。 「声優」としてスカウトされることを思ってもいなかった太一だが、目的を果たすための手段としてコンプレックスを感じていた自分の声を逆に生かすために、「声優」として芸能界入りすることを決意した。
だが後に、村崎の策略による「女の子として」のデビューが待ち構えていようなどと、このとき太一は思ってもいないのであった。
~少女少年~ GO!GO!ICHIGO
小学5年生の女の子である宮坂杏(みやさか あんず)は、ある日隣に引っ越してきた、幼稚園の時に一緒に遊んでいた章姫いちご(あきひめ いちご)と再会した。 再会するや否や、フレンドリーに接してくる美少女ないちごだが、全く覚えていない杏は「…こんな可愛い子、幼稚園の時居たっけ?」と思いつつ、反面、心の何処かに、何か引っかかるものを感じていた。
その翌日、いちごは転校生として杏のいるクラスに転入した一方で、杏は前日に幼稚園のアルバムを観て、いちごが通っていた幼稚園にいたことを確認したが、未だに何かモヤモヤしたものがあった。
そして1時間目の体育…更衣室でいちごと一緒に着替える杏だが、ここでようやくあることを思い出した。
「う~ん、昔は何て呼んでたんだろ…。いちご…、いち…ご…、一(いち)…、一(いち)…期(ご)!」
完全に思い出した杏は、いちごに真相を確かめるべく話しかけたが、更衣室にいる他の皆に聴かれるわけには行かなかったのか、いちごは杏を別の所へ颯爽と連れて行った。
杏が完全に思い出したこと…それは、「章姫いちご」こと、章姫一期(あきひめ いちご)は、実は男の子だったのだ。
杏は一期に、男なのに女の成りをしていることを指摘するが、一期は「ノープロブレム!ボク、身体は男だけど、心は女の子なんだ!」と言ってのけた。 その発言にますます放っておけなくなった杏だが、一期は「ボクはただ、自分に正直に生きているだけで、周りの皆もボクのこと女の子だって思ってる、それでいーじゃん」と楽観気味であった。
逆に杏は一期から、もし男だという事実をバラしたら、杏の片思いの相手に、ガキ大将だったという杏の過去をバラすと言われ、そのまま弱みとして握られてしまった。
気づけば思わぬ事態に巻き込まれていた杏。 一期との関係は、今後どうなってしまうのであろうか…。
~少女少年~ ドーリィ♪カノン
- 【「ちゃお」2012年4月号より連載中】
- 【番外編連載期間:「ちゃおデラックス」2012年初夏の超大増刊号】
- 単行本では『ドーリィ♪カノン』というタイトルで発売されている。(関連商品参照)
- まさかの実写ドラマ化となった。ちゃお付属のDVDか公式サイトの配信のどちらかで視聴できる。
参照→「ドーリィ♪カノン」
少女少年0話
- この話は第1作目のプロトタイプである。
- 後の第1作の主人公に「スポーツ万能」と「女装好き」の両設定は入れておらず、また、雑誌の特徴に合わせてか、主人公の身分が小学生に変更されている。その後、設定に入れなかった内の1つである「女装好き」という設定は、『IV』の主人公に引き継がれている。
- なお、この話はちゃおコミックススペシャル『やぶうち優ファンBOOK やぶうち優の♂♀(おとこのこ おんなのこ)な話』に掲載されている。(関連商品参照)
『少女少年0話』あらすじ
ある日、通学先の文化祭で行われたミスコンテストに女装姿で参加し、なんとグランプリを受賞してしまった。 そのミスコンテストがきっかけで、芸能事務所のスカウトマンである曲(まがり)という男に才能を見出されて、初めは男とは知られずにスカウトされる。
後に千里は曲の強引さもあって、女装して、女性アイドルとして芸能界デビューすることになるが…。
別冊少女少年
作者本人が発行した同人誌。一部作品の裏設定とかが明かされているので、観かけたらチェックしてみるべし。
こぼれ話
- 作者はこの『少女少年』を「小学六年生」で連載されるべく、プロットを提示してみたところ、編集部からは主人公が男ということであまり良い顔をされなかったという。なお、その編集部からは『水色時代』の続編を提案されたとのこと。
- 実はこのシリーズ自体、作者の中では第1作目で終わっていたが、編集部から「もう1年やりませんか?」と言われ、これを軽くも引き受ける。しかし、作者の面倒臭がりな性格により、『II』の方向性はかなり安直に決まったとのこと。また、作者による後付けではあるが、このシリーズは『III』までの「3部作」として終わらせる方向であったものの、その後は周知の通りである。…長期連載のキッカケを作った当時の編集部は、まさにGJと言えよう。
- 作者の調査不足か、香川県を舞台にした『III』の主人公が住む場所を「村」としたが、後に同県には「村」が無いことに気づき、単行本では「島」に修正されている。
- 作者の好みで毎回登場人物の名前に縛りが入っている。1巻から順に色→自然→植物→鳥→農業→新幹線→数→果物→音である。
- 『VI』の連載中、夏休みに「やぶうちとお茶会」という和やかな雰囲気で行われることはなかったイベントが催された。そのイベントでは「少女少年カルトQ」というクイズコーナーがあったが、かなり盛り上がったという。
- シリーズ連載開始と同時に飼い始めた文鳥が、『VII』の終わり際に天国へ旅立ったとのこと。作者は連載開始時に「(飼っている文鳥は)シリーズが終わったら死んだりして。」と述べていたという。
- 『GO !GO !ICHIGO』は作者曰く、元々は単発の読み切りだったという。ちなみに、過去の7作と比べて話数は少ないが、予定通りであったとのこと。
- ~少女少年~ ドーリィ♪カノンの連載予告がされた「ちゃお」の2012年3月号で『少年少女』と誤植されてしまった。作者曰く、よくある間違いとのこと。しかし公式で誤植されるとは複雑だったに違いない。ちなみにこの件は作者のブログ(外部リンク)に詳しく書かれている。
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関連動画
少女少年 -MAKOTO-
ゆき☆Pが製作した、アイドルマスターのキャラクターを用いて『III』のストーリーをほぼなぞった二次創作。
原作者も実際に視聴していたことが後に発覚し、ゆき☆Pは一躍時の人となる。
当作品の公式サイトもあるので、是非閲覧してみよう。
少女少年 -Len-
ゆき☆P作品の『少女少年 -MAKOTO-』から丁度1年前に投稿された二次創作。
レンの担当声優はリンと同じなので、ピッチを高めにいじってもあまり違和感は無い…と思う。
関連項目
- 2
- 0pt