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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

妻がXVIDEOSの真実を知ってしまった。

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 XVIDEOSとXEVIOUSが似ていることに気付いたとき、僕は己の天才を畏れた。 僕は生来独り言が多く、気になっていることが状況に関係なく飛び出すものだから、隠し事が出来ないし不気味に思われるしで難儀してきた。最近は無意識のうちに「エックスビデッ」と口にしてしまうのが悩みだった。
 
  即座に僕は発見を活かした。《xvideosはxevious》と暗示をかけることで僕は独り言による秘密の漏洩を回避しようとしたのだ。爾来、独り言は「ゼビウス!」となり、xvideos鑑賞に備えて気になった女優さんの名をメモ帳に書き留めるときなども次のように記述している。「ゼビウス/峰なゆか」「xevious/mine nayuka」。
 
 
  二カ国語でこのような姑息な隠蔽をしなければならないのは、妻がアダルト動画を忌み嫌っているからだ。理由はわからない。夕暮れ時、台所に立つ妻の背中に訊いたことがある。「僕がアダルト動画を見ていたらどうする?」すると妻は振り返ることもなく「毛を剃ります」と低いテンションで答えた。「頭を剃ったら営業マン失格だよ」「大丈夫よ。アンダーだから」夕陽を跳ね返す包丁がただ眩しく、そこに冗談の余地は見受けられなかった。この文章はそんな僕と妻の間で起こった紛争の記録だ。なお、大人の事情によりこれ以降はxvideosをxeviousと記述させてもらう。各自脳内変換されたし。
 
 
  諸君らが愛してくれたxeviousを、僕も愛してやまない。愛しているからこそ、アップされた動画が無修正の名に反し、モザイクがかけられていたり、通常のイメージビデオだったり、外国産動画によくあるが編集により終始《フラッシュダンスのテーマ》のような音楽が被せられていると、本気で怒り、嘆いた。限られた時間を割いて試聴する動画に裏切られるダメージは甘く切なく、痛いものだ。遠距離恋愛していた恋人に裏切られるようなものだ。僕は時折の裏切りすら含めてxeviousを楽しんでいた。そんな時間は唐突に終わった。鑑賞がバレたのだ。剃毛の危機だ。
 
 
  妻はxeviousの存在に薄々気づいていた。パート先で懇意にしている若い男からxeviousについて吹聴されていたのかもしれない。妻からxeviousとはどういうサービスなのか訊かれたことも何回かある。そのたびに僕は、WOWOW、スカパー!みたいな有料放送サービスの一つだよ、料金を払ってないから僕は見られない、内容はエックススポーツ中継だよ、つって誤魔化してきた。完璧な隠蔽だった。
 
 
  xeviousバレは思わぬところからであった。あのときのことは一生忘れられない。いつものように妻が寝静まったあと。丑三つ時。寝床を抜け出した僕はパソコンを立ち上げxeviousを鑑賞しはじめた。朝5時から17時までの勤務に疲れていたのだろう、僕はいつの間にか寝落ちしていた。そして翌朝、下半身だけ生まれたままの姿をした僕と共にxeviousが妻に発見されたのである。
 
 
  直後の妻による実況検分は地獄そのものだった。非人道的であった。パンツを上げることも許されずにパソコンの前に正座させられた僕の傍らに鎮座した妻は「これは何だ」と刑事のように言った。「エックスビデオです」容疑者Xは答えた。複数形を略したのは最後の抵抗のつもりだった。
 
  妻は僕に命じて僕が見ていた動画を確認した。動画に反応しないEDでよかった。無修正でなくてよかった。あれほど憎んだ忌々しいモザイクが神のように僕には思えた。死にたいほど憧れ求めた無修正動画だったら離婚されていたかもしれない。青い空と海、白い砂浜。峰なゆかさん。南国のビーチが薄暗いマンションの部屋を照らした。銃声のような音とそれに応じるような女性の声が虚ろに響いた。
 
 
  いつもならまばたきをせず血眼になるまで見るはずの動画を直視出来なかった。妻が「こんな粗い画質で…よく…」と呟くのが全人格を否定されたようで悲しかった。これほどの辱めを受けた上でアンダーを剃られるのか。そんな暗黒の絶望が僕の全身を浸していった。
 
 
  「許す」妻の意外な一言だった。「もう一回やったらアウトだからね」。モザイクのおかげか、不能の僕を弄びたいだけなのか、よくわからないが僕は救われた。残機一。まだだ。まだ終わらんよ。
 
 
  僕はパソコンでのxeviousをやめ、布団を被り、その中でiPhoneを使用して鑑賞することにした。目が疲れるが剃毛の危機を回避するためだ。仕方ない。
 
 今夜も丑三つ時になれば僕は最新鋭戦闘爆撃機ソルバルウになってxeviousと戦う。危険を冒し、睡眠時間を削ってまでなぜ戦うのか。そこにxeviousいやxvideosがあるからとしか言えない。戦いとはそういうものだ。でも本当は僕はxeviousではなく妻に向かってブラスターを発射したいのだ。そんな叶わぬ夢と剃毛の恐怖を胸にしまいこんで今夜も僕は戦場に向かう。
 

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追記)id:solidstatesocietyさんよりいただいた画像。かっこいい!

 

 

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■「かみぷろ」さんでエッセイ連載中。「人間だもの。」(http://kamipro.com/blog/?cat=98

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