虹の彼方に
CNNでトニー・ブレアの記者会見を見る。自分でさくさく仕切って能弁に答える姿は変わらないが、みるからに老けた。過激なムスリム司祭の国外追放案に関して、なんども「ここに来たからにはここに従ってもらわないと、それだけだ」とくりかえし、「どこが追放と寛容の境界なんだ」という質問に対しては、「コモンセンスだ、それがイギリスだ」とくりかえす。べつに異様なことを言っているわけではないが、全体の態度が異様に弁明じみている。自分で言いたいわけではないことを、しかしそれを言うしか選択肢がないから、それ以外の方策がないから言っている、という雰囲気が濃厚。「現実主義」の哀れな姿というべきだろうか。共感する部分がないではないが。
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他では、短い枚数のなかに形式主義的なイメージ分析をきっちり試みる菅野優香の『オーランド』他の章が走っている。また、新田啓子の『カラーパーブル』論はさすが。映画版は、原作にある逐字的なレズビアン要素がまったくないのだが、そこでやっぱりハリウッドはダメだ、となるのではなく、シャグがブルースシンガーであるということ自体にセクシュアリティ表象を見いだしている。個人的には、『エデンより彼方に』に寄せて、古典的ハリウッド・メロドラマへの愛とそのクィア的擾乱の可能性を語る斉藤綾子の一文が、いちばん泣けた。
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