紙の漫画雑誌は、ついに3億部割れ。最大時から10億部減ってるという事になります。販売金額も、1000億円を割り込みそうな所まで来ています。*1
しかし、単行本は、電子が前年から31.8%と大幅に伸び、紙と電子の合計販売金額では3400億円越え。史上最高に達しました。
紙の雑誌の売り上げは電子単行本の1/3以下に・・・。
ということで、出版月報2017年2月号、特集「紙&電子コミック市場2016」に掲載されたデータなどより。
そう、ついにタイトルが「紙&電子コミック」になってるんです。
2016年の簡単なまとめ
- コミック市場全体の販売額を見ると、前年より微増
- 一重に、電子単行本が伸びたおかげ
- 電子単行本は伸び続け、早ければ2017年には紙を超えるかも
- 単行本の、電子+紙の合計販売額は、史上最高に
- 紙の漫画雑誌は、さらに下がり続けてる。前年比13%減と、最大の落ち込み。
- 電子版漫画雑誌は、紙の3%程度しか売れていない。数字に出ない部分があるにしろ、少なすぎる。
- 単行本点数はそれほど変動せず、雑誌銘柄数は減っている
2016年販売金額(億) | 販売部数(万冊) | |
---|---|---|
雑誌(紙) | 1,016 | 29,900 |
雑誌(電子) | 31 | - |
単行本(紙) | 1,947 | 37,021 |
単行本(電子) | 1460 | - |
以下、データは出版月報からの引用になります。
全体の販売金額は、紙は雑誌・単行本で9.3%減。
しかし、電子は31.8%の大幅増。
これにより、紙と電子を合わせた単行本販売額は、3407億円と、過去最大の規模に膨れ上がったのです。
ここ5年の傾向と電子コミック
紙での販売部数、販売金額は、雑誌激減、単行本も減。
紙の雑誌は昨年比で10%以上落ち込んで、21年連続のマイナス。
販売部数 | 雑誌計(万冊) | 前年比 | 単行本計(万冊) | 前年比 |
2012 | 48,303 | 93.6▼ | 43,584 | 96.4▼ |
2013 | 44,075 | 91.2▼ | 43,856 | 100.6△ |
2014 | 39,755 | 90.2▼ | 44,038 | 100.4△ |
2015 | 34,788 | 87.5▼ | 40,250 | 91.4▼ |
2016 | 29,900 | 85.6▼ | 37,021 | 92.0▼ |
販売金額 | 雑誌計(億) | 前年比 | 単行本計(億) | 前年比 |
2011 | 1,650 | 92.9▼ | 2,253 | 97.3▼ |
2012 | 1,564 | 94.8▼ | 2,202 | 97.7▼ |
2013 | 1,438 | 91.9▼ | 2,231 | 101.3△ |
2014 | 1,313 | 91.3▼ | 2,256 | 101.1△ |
2015 | 1,166 | 88.8▼ | 2,102 | 93.2▼ |
2016 | 1,016 | 87.1▼ | 1,947 | 92.6▼ |
電子コミック市場はさらに伸びて、もう止まらない。
まとめ買い需要の踊り場が来るのかすらわからない。
少年誌の新刊は電子率10%程度だが、女性・青年向けでは30%を超える物もあるとのこと。
これがさらに増えるかどうか?
ただ、それは単行本だけで、雑誌は電子乗り換えがうまく進んでいない様。
2016年でも30億円規模と、全然少ない。
ただこの数値、どういう計算なのかなあ。読み放題タイプの中に漫画雑誌も含まれてるとかあると、数字として出すのが難しいのでは、とも。
サイトでの無料連載>単行本化、という場合には雑誌売り上げには入ってないとは思うんだけど、広告貼ってる場合とかもあって、PVによっては黒字化されてるのでは、とも。
電子コミック(単行本) | 販売金額(億) | 前年比 |
2005 | 34 | - |
2006 | 106 | 311.76△ |
2007 | 229 | 216.04△ |
2008 | 330 | 144.1△ |
2009 | 428 | 129.7△ |
2010 | 496 | 115.89△ |
2011 | 492 | 99.19△ |
2013 | 731 | 127.35△ |
2014 | 882 | 120.66△ |
2015 | 1,149 | 130.27△ |
2016 | 1,460 | 127.07△ |
コミック文庫は24%減、コンビニコミックは8.1%減。
電子のあおりをもろに受けるジャンルだけに、仕方ない。
雑誌銘柄数と、単行本の点数
紙の漫画雑誌の数はどんどん減っている。
ただし、電子雑誌やサイトで更新されるものの数は含んでいないため、漫画が発表される量そのものは全体として増えているのではないかと考えられる。
単行本の年間新刊点数は微増ではあるがほぼ横ばい。
月1000冊超えているのは変わらないが、電子のみで発売されるものを含めると実際の点数は増えているかもしれない。(同計測すればいいのかわからないけど)
雑誌銘柄数 | 前年比 | 単行本新刊点数 | 前年比 | |
2010 | 288 | 96.0▼ | 11977 | 100.4△ |
2011 | 295 | 102.4△ | 12021 | 100.4△ |
2012 | 288 | 97.6▼ | 12356 | 102.8△ |
2013 | 276 | 95.8▼ | 12161 | 98.4▼ |
2014 | 252 | 91.3▼ | 12700 | 104.4△ |
2015 | 237 | 94.1▼ | 12562 | 98.91▼ |
2016 | 231 | 97.5▼ | 12591 | 100.2△ |
雑誌種別を見ると、減ったのは青年と趣味・スポーツ。
通勤電車で漫画読む人が減ってる、みたいな影響にも見える。
種類 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 |
少年向け | 31 | 30 | 27 | 28 | 28 |
少女向け | 36 | 34 | 35 | 33 | 33 |
青年 | 60 | 57 | 53 | 50 | 47 |
レディスコミック | 61 | 59 | 53 | 47 | 47 |
4コマ | 22 | 22 | 20 | 20 | 20 |
パチンコ・パチスロ | 13 | 13 | 10 | 9 | 8 |
BL | 17 | 16 | 16 | 16 | 16 |
趣味・スポーツ・その他 | 7 | 9 | 7 | 7 | 5 |
成年 | 41 | 36 | 31 | 27 | 27 |
合計 | 288 | 276 | 252 | 237 | 231 |
人気作品
さらに伸びた物、映像化絡みで売れたもの、様々。
「キングダム」は16年内で500万部増刷。電子の売り上げも好調。
「逃げるは恥だが役に立つ」はドラマのヒットに合わせ、100万部増刷。
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「ヲタクに恋は難しい」は累計300万部突破。
「この世界の片隅に」は映画の影響で累計100万部を超えた。
電子で読まれたことが切っ掛けで売れた作品も色々とあった。
「食糧人類」、「ちいさいひと」、「GAME スーツの隙間」、「宇宙を駆けるよだか」など。
初版で終わる単行本も多いので、ある意味特異例なんですがね。
指標の取りにくい事。
おわりに
漫画雑誌の売り上げを、電子コミックがあっさりと抜き去っていきました。
東京オリンピックの頃には、単行本も電子の方が圧倒的に多い、てな状況になりそう。
過去作品の(広告付き)無料配信や、一日一話読めるアプリなど、電子の便利さ・手軽さが存在感を増し、その読者が「漫画を読む」という楽しさをさらに求めて電子、または紙のコミックスを買う。
読者は作品を物理的にどう読むのか、というのが個々人で差があるという状況になりつつあるのです。
ジャンプ+やマガポケの様な、ネット・アプリで掲載された作品が、そのまま電子コミックになって、それを買う。
そういういい連鎖が出来ているのかもしれません。
ただ、これが漫画雑誌が売れない、減るという事は、作品はどこから供給されることになるのか、というのの答えになっているのかどうか。
リアル書店がどんどん減って行き、コンビニで扱われない雑誌も増え、どこで買うのか、というのもまた。
読者が作品とどこでどうやって出逢うのかは、さらに変容していくのでしょう。
漫画の未来は、いったいどっちだ。
といった所で今回はここまで。
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- 2010年のコミックス市場における「ONE PIECE」の占有率は8%弱だと思われます
*1:2017年には確実に割り込む