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軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

間接侵略は始まっている!

先日、中国の対日工作について書いたところ「国会図書館で調べたが、この秘密文書を入手して世に出した西内雅氏の著作の中に入っていない」というコメントがあった。
西内氏は既に故人であるが、元大本営陸軍参謀で、情報畑の専門家、内閣総力戦研究所の所員などを務めた方である。戦後、工学院大学京都産業大学中央学院大学などの教授を勤め、昭和40年後半に香港で日本語学校を経営、このとき、文化大革命で脱出してきた中国人からこの情報を入手したといわれる。当然当初は信憑性が疑われたものだが、調査の結果その内容には極めて高い信憑性がある、と判断されて昭和47年に出版されたという。その後、ご承知のように田中内閣は見事にそれに「引っかかって」日中国交回復をした事もあってか、その後この文書も「まぼろしの書」になったといわれている。
 ところで、前回は月刊誌「WiLL」3月号が、「これが中国の現実的脅威だ」という特集を出している事を書いたが、その中にこの文書の全文が「一挙公開」されていることに気がつかなかった。15ページにわたって、全文が紹介されているが、その中には西内氏が金門島を視察中の貴重な写真や、西内氏の編著の写真も出ているので是非ご一読願いたい。
「偽物説」に固執する方々は、それだけでは信じられない、というのであろうが、私が保有するものの巻頭には、鍋山貞親氏が昭和47年8月に次のような「推薦の辞」を書いているので、長くなるがご参考までに要旨を引用しておこう。(見出しは私がつけた)

1、文書の真贋性
「この冊子は、きわめてショッキングな秘密文書である。字の読める日本人は、一人残らず読んでほしいと思う。読めばかならず、これは大変だと、痛感するにちがいない。そこには、中共の企画している対日革命工作綱領が、無遠慮な言葉で、生々しく述べられているのである。
 この種の文書を読んだ場合、誰の頭にもすぐ浮かぶ疑問は、これの真贋如何ということである。反共の立場から共産側を挑発したり、共産側の出方にたいする世界の警戒を促すために、いかにも共産側のものらしい文書が、作製されてばらまかれるのは、どこの国にもよくあることだ。そこで、これもその一つではあるまいかと疑問を起こすのは、むりもないのである。
 しかし、そのような疑問にたいし、確証を示して真贋を明らかにすることは、この種の文書の性質上、なかなかむつかしいのがつねである。けっきょく,この方面の専門研究家なら、文書全体を貫く論理、用いられている言葉、そしてすでに知っているもろもろの事実などとの関連、等々によって、一定の判断を下し、非専門的な人びとなら、ごく大まかに、思い当たる節があるかどうかを、冷静に考えて評価するよりほかないのである。」

2、三期に分かれた工作
中共は対日革命工作を、三期に分かっている。第一期の工作目標は、日中国交正常化の実現である。これは今や、ほぼ完了したと言ってよい。第二期の工作目標は、民主連合政府の形成である。これがこれから、精力的に推進されることになるわけだ。第三期の工作目標は、人民共和制の樹立である。これは、第二期工作が成功するなら、急速に進められる予定となっているらしい。 
民主連合政府の形成は、それ自体が目的ではなく、次の人民共和制樹立に転じていくための、単なる手段にすぎぬ事が、明記されている。そして、人民共和制の樹立にあたっては、その首途の血祭として、天皇に戦犯の罪名をきせ、処刑する事が予定されているのだ。階級闘争理論の憎悪哲学に立っているゆえか、まことに仮借がない。
 それらの革命による日本改造は、日本国民多数の幸福のためにという発想から考えられているのではない。高度工業国家たる日本を、中共の完全な支配下に置き、中共の意図する世界革命に奉仕せしめるために必要だとしているのである。日本国全体を、中共が追及する国益の一道具として、活用しようというわけだ。」

3、相手の真意を見抜く洞察力を!
「おそらく読者の中には、なにをばかな、そんな事があってたまるものかと思う者もいるだろう。見え透いた手に乗せられるほど、日本は間抜けじゃないと、中共の自惚れぶりに呆れるし、あざ笑うものもいるだろう。しかし、相手の真意を見抜く洞察力なくして、例えば目下の日中国交正常化を、あたかも歴史の流れであるかのように、ひとりよがりな考え方で受け止めていると、いつの間にか、相手の術中に陥ることは、十分にあり得るとせねばならぬ。
その点でこの冊子は、当面の時宜に最適の警告書でもある。あえて江湖にすすめる所以はそこにある。」

続いて西内氏が、「指令通りに進む対日解放戦・・・過去6年の経過」と題して、解説をしているのだが、繰り返して書くが、この文は昭和47年夏、今から34年前の文化大革命時代に書かれた物である。当時はわが国も、これに呼応する形で学園闘争が繰り返されていた時代であった。
前に、王毅駐日大使帰国の報道を受けて、私は「第三期工作」が開始されたのでは?と書いたが、鍋山氏が書いたように、第三期の工作目標が「人民共和制の樹立にある」とすれば、まさにその工作目標の中心に「皇室典範改正」があると考えられる。
この対日工作綱領の「成果」を観察するには、わが国の現実を見ればよい。高度工業国たる日本の支配は見事に達成されている。それもわが国土を支配する以前に、産業界が列をなしてかの国に押しかけるという奇観を呈している。そして中国は経済大国にのし上がった。その上綱領どおり、わが国の経済人達は、靖国問題をはじめ、中国側の要求を自国政府に突きつける≪エージェント≫に落ちぶれている。
天皇に戦犯の罪名をきせ処刑する」という点については、松井やより元朝日新聞編集委員が製作した「天皇裁判劇」を、天下のNHKが教育テレビで放映した。これが朝日の「でたらめ社説事件」に発展し、朝日とNHKの戦いに発展したが、今は不思議と報道されなくなった。これにも何か裏がある。
次は「軍事力の整備」であるが着々と整備されていることは言うまでもなかろう。悲しいことにヤマハ富士重工(今朝の平松氏の「正論」による)のような防衛産業が、「無人ヘリ」を輸出して協力しているのであるからなにをか況やである。

 こう見てくると、今や熾烈な日中間の「第三次≪間接」侵略戦」、いや、穿った見方をすれば「支那事変」は継続中だといえなくもないのだが、政府は全く理解していないように思える。
治安関係機関のこれら≪工作活動≫に対する対策は大丈夫であろうか?
情報、諜報活動に対する警備体制の強化、そして最後のよりどころになるはずの「自衛隊」は大丈夫であろうか?と心配になる。
ライブドア防衛施設庁談合問題などは、敵の「陽動作戦」のように思われ、そんな次元の問題で道草を食っている場合ではないと思うのだが・・・