2022年カタールW杯決勝、アルゼンチン対フランスのレビュー 「サッカー史上最高の試合の一つ」
はい、こんにちは、私です。
カタールW杯はアルゼンチンの優勝で終わりました。御覧になった方は知っているとは思いますが、あまりに、あまりに素晴らしい試合でした。自分が見たサッカーの試合ではベスト3に入ります。試合前のストーリー、試合内容、監督の采配、試合後のアルゼンチンの熱狂、それら全てが素晴らしい、本当に素晴らしい試合でした。
あまりに素晴らしい試合だったので、備忘録もかねて試合のレビューを残しておこうと思いました。未だにあの試合の余韻が抜けてません。それほどの試合でした。
一生のうちに、数試合しか見れないであろう、そんなスポーツ史上に残る試合であったと思います。
試合前のストーリー、メッシの旅の終わりとムバッペ伝説の始まり
先にこの試合の前のストーリーの話から始めたいと思います。
カタールW杯はサッカー界を長い事牽引し続けた二人のスーパースター、そして今後長らくサッカー界を牽引するであろうスーパースターが出場した大会です。
一人の名前はリオネル・メッシ。いわずと知れたサッカー界のスーパースターであり、サッカー界の主要タイトルの全てを取った選手でした。たった一つ、W杯を除いて。過去4大会に出場していますが、いずれの大会でも失意と涙と共にピッチを去っています。皮肉な話ですが、サッカーの世界においてはW杯とはフットボーラーの目指す究極のタイトルであり、ベストの選手であることを証明する為にはW杯を取らなければなりません。それゆえにメッシは史上最高の選手ではない、そういう言説がしばしば聞かれていました。メッシは彼の背中を見て育った若手選手たちと共に最後のW杯に挑む。
そのリオネル・メッシの最大のライバルの名前はクリスティアーノ・ロナウド。メッシと双璧を為すサッカー界のスーパースター。彼も又、W杯優勝を目指し続けた男でした。しかし、今大会は彼にとって残酷な結果になりました。今大会で躍進したモロッコに敗れ、ポルトガルはベスト8で姿を消しました。しかし、彼にも又後継者がいるのです。彼に憧れ、彼から多くを学び、そして彼のような選手になりたいと願った1人の少年が成長し、世界最高の選手となり、彼がこれからのサッカー界を背負っていくからです。
その名前こそ、フランスのキリアン・ムバッペ。クリスティアーノ・ロナウドのポスターを部屋にベタベタと張り付けていた少年の名前が世界に轟いたのは2018年ロシアW杯でした。わずか19歳にしてメッシのアルゼンチンをベスト16で打ち倒し、フランス優勝の原動力になりました。類まれなスピードと、そのサッカーセンスは4年間でさらに成長し、今大会においては、間違いなく世界最高の選手といってふさわしい次元に達していました。
カタールW杯決勝はメッシが「これが最後のW杯になる」と公言して臨んだ大会です。
メッシは悲願のW杯を手にし、自身の旅の終わりに史上最高の選手である事を証明出来るのか。
ムバッペが二度目のW杯を獲得し、史上最高の選手への旅の始まりとなるのか。
カタールW杯決勝は、新旧二人のサッカー界の英雄がぶつかった試合として、長く語り継がれる試合になる事でしょう。もはや二度とは見られない、夢のカードが実現したのです。
フランス代表とアルゼンチン代表のサッカーについて
さて、試合の話になる前にフランス代表とアルゼンチン代表のサッカーについて触れておこうと思います。
この二チームはフォーメーションや攻撃方法、守備方法の違いはあれど、「一人の王様と10人の僕」といっていいチームになっています。王様は守備をしません。その代わりにエネルギーの全てを攻撃に使います。そして、残りの10人が献身的に攻守でそれを支えるチームとなっています。
この手の王様チームは、守備戦術に縛りが出ます。一人守備しない王様がいる為、そのスペースをどう埋めるか、それが問題となります。
この試合の基本フォメは
こういう形です。アルゼンチンは433,フランスは4231。しかし、守備時になると、
フランスは
こういう形に変化し、
一方のアルゼンチンは
こういう形に変化します。
ムバッペの後ろはラビオがカバーし、メッシの後ろはデパウルがカバーします。これは大会通じて双方のチームの変わらない形であり、監督がこの二人を守備をしない王様のカバーを任せるセンチネルとして絶大な信頼を寄せていることがわかります。
王様サッカーの欠点は、守備をしない王様のカバーをどうするのか、そこにつきます。王様は高い位置を取り続けてこその王様です。だから王様のカバーをする強力なガードが必要になります。それがアルゼンチンではデパウル、フランスではラビオになるわけです。
また攻撃においてもいかに王様に良い形でボールをつけるか、それがチーム構成上の最大の問題になります。
アルゼンチンの場合、メッシが最も力を発揮できるのはPA近く、中央でプレーした場合です。その為、幅を取るWG、深さを作るCFを配置する必要があり、スカローニ監督はメッシを最大限に活かす為の選手を集めています。さらにカウンターはメッシにボールが入った時に後ろの選手がメッシを追い越していく形を取っており、速攻にしろ遅攻にしろ、メッシに強く依存するチームです。メッシがあまり関与しないのは、相手が高い位置でコンパクトな守備ブロックを敷いている時です。この場合はメッシでなくサイドチェンジからのサイドアタックや裏へのフィードでCFを走らせ、相手のラインを下げる攻撃を行います。
一方のフランスはムバッペに良い形でボールをつけるためにレフティが多いチームを作っています。ジルー、デンベレ、グリーズマン、ラビオ、Tエルナンデスがレフティであり、ジルーの左足のポストプレー、左サイドの底からの縦パス、右サイドから左サイドへのサイドチェンジ、全てレフティの得意技であり、ムバッペに良い形でボールをつけられる選手たちが集められています。デシャンがどれだけムバッペを評価しているのかがよくわかるスタメンです。
双方のチームが王様を活かす為に設計されています。全ては一人の王様の為に。
今大会の決勝はそういうチーム同士の対戦でした。
アルゼンチン対フランス、前半戦
まずは動画へのリンクから。
https://abema.tv/live-event/70c9ebf7-61c2-4ff2-9b13-f6478e58cb3a
いつものabemaTVの奴です。基本的にこの動画内の時間軸で話を進めます。
この試合の前半戦は一方的な試合になりました。前半戦、フランスはシュートを一本も打てず、アルゼンチンに一方的に押し込まれる事になります。
一体、何故、そういう事が起きたのか?それは前の項目で述べたフランスの守備方法と関係があります。
今大会、多くのチームはメッシをPA近くでプレーさせない為に、自陣内で最終ラインを高めに保ちつつコンパクトな守備ブロックを敷いてメッシをPA近くでプレーさせないという守備方法を取っていました。そういった相手とどう戦うかというのが今大会のアルゼンチン代表の攻撃面における課題と言えました。そういった相手に対して、最終ラインを引かせる為の両サイドに張り出したWGからのサイドアタック、深さを作るCFというチョイスであるのは前述しました。
しかし、フランスはそういった守備方法を苦手とするチームだったりします。ムバッペが守備をろくにしないのでどうしてもムバッペの裏にスペースが生じてしまうタイプのチームなんです。前述した通り、その裏のスペースはラビオがカバーするチームな訳なんですが、そのスライドには若干の時間がかかります。アルゼンチンはそこを狙いました。
この試合の前半のアルゼンチンのゲームプランなんですが、簡単に言えば、ムバッペの裏のスペースを使い、フランスの守備ブロックを右サイドに寄せてから、左サイドのディマリアへ展開というものです。左サイドのディマリアはレフティですから、左サイドの高い位置ならまずボールは失いません。そこを起点にアルゼンチンはひたすらフランスを押し込みました。
こうなると困るのはフランスなんです。右サイドを集中的に狙われると、良い形でカウンターに結びつけるのは困難なのです。なぜなら最もムバッペから遠いサイドだから。
一方で、ムバッペがいないサイドを攻撃するわけですから、アルゼンチンはSBを遠慮なく攻撃参加させられます。ボール失ってもSBが上がったスペースをムバッペに使われて爆速カウンター喰らう危険性がないですからね。結果として、ムバッペは前半は試合からほぼ消えてました。
この試合、ラビオのカバーが上手くいかなかった理由がもう一つあって、要はメッシです。メッシがラビオの裏をふらふらしてて、そこが気になってラビオがムバッペの裏のカバーに強く出られないのです。その結果、ムバッペの裏に入ってくるアルゼンチンのボランチを捕まえきれず、そこから逆サイドのディマリアへ展開される。
フランスが一失点目を喫したシーンはまさにそれでした。
これ、前半20:39からのアルゼンチンの攻撃シーンなんですが、エムバペがCBにプレスに出るんですが、この時、同時にフランスのボランチが前に出てアルゼンチンのボランチ捕まえるか、ジルーがボランチ捕まえてないと守備が間延びするだけなんです。しかし、フランスのラビオはSBとCBの間にいるメッシを気にしてるのか前でれてないんですね。
そして、この後はフリーになったボランチに出されて、そこからアルゼンチンは前に当ててサイドのディマリアに展開。ディマリアはドリブルを始め、デンベレがそのディマリアを倒してしまい、アルゼンチンはPKを獲得。
このシーンは単純にデンベレのやらかしです。ディマリアがPK貰いにいったのは明らかなんですが「ぶち抜かれた後にPA内で手と足を出す」ってのは絶対やってはいけないプレーです。PK取られるに決まってます、あんなの。フランスは中に人数いたわけですから、あそこで手と足出す必要性はゼロなんです。でもデンベレはやっちまったんです。この後、デシャンにデンベレは懲罰交代させられるんですけど、その他のプレーも酷かったのでしょうがないですね。
この試合、攻撃時にはムバッペの裏に必ずアルゼンチンのボランチかメッシが入り込む試合でした。そこを使われてディマリアに展開。そんな攻撃をフランスは受け続けました。
しかし、この試合のアルゼンチンの二点目はカウンターでした。
前半35分からアルゼンチンのカウンターなんですが、これは「王様のいるサイドを攻めるのはカウンターが怖い」という典型例です。王様のいるサイドでボールを失うと止められないカウンターを喰らうことがあるんです。フランスはここでアルゼンチンの右サイドを攻撃していたのですが、雑なフィードをカットされてメッシにボールが入った所からアルゼンチンのカウンターがスタート。メッシのポストプレーからアルバレス、マクアリスター、ディマリアという綺麗なワンタッチパスが繋がり、最後はディマリアがワンバウンドさせてGKの上を超すというシュートを決めてアルゼンチンは二点目。
王様のいるサイドは守備が弱い、だからそこを狙ったら良い。それは全くその通りなんですが、ボールを失ったときが怖いのです。これは教科書みたいな素晴らしいカウンターでしたが、多くのチームがアルゼンチンの右サイドを攻めるのを躊躇う理由でもあります。ボールロスト時、メッシ経由のカウンターが怖いのですよ。アルゼンチンのカウンターの起点はメッシですからね。
皮肉な話ですが、これをアルゼンチンも後半にやってしまうのですがね。でもそれはまだ先の話。
さて、ここで決定的といえる二点目を奪われたデシャンですが、最早我慢できないと見たのか、ジルーとデンベレを前半41分で二枚替えにでます。代わりに入ったのがコロムアニとテュラム。ムバッペをワントップに動かし、両サイドにきちんと守備ができる選手を投入。これでムバッペの裏のスペースは消えましたから、アルゼンチンは前半ずっとやってた攻撃が出来なくなり、フランスはペースを取り戻すことになります。
しかし、この時にすでに2点ビハインド。デンベレとジルーがいないと右サイドから左サイドへのサイドチェンジや、ジルーのポストプレーが無くなるので、ムバッペが上手く使えず、フランスは攻撃面で厳しくなります。見てた時は、「デシャン、どうやって点取る気なんだろう?」と思ってみてました。
フランスは前半戦でシュート0本。全くといっていいほどフランスの良い所がでてない前半でした。ここまで一方的な展開になるとは思ってませんでした。フランスのほうが若干強いかなあと思っていたので。
勿論、アルゼンチンのゲームプランは見事でした。ムバッペの裏を使い、そこからディマリアへ展開し、フランスを押し込む。これは攻守両面で機能しました。ムバッペのカウンターを喰らう事なく試合を一方的に有利に進めれましたから。
アルゼンチン対フランス、後半戦
フランスにとって非常に難しい試合になってしまった前半戦でした。アルゼンチンの右サイドを直接攻撃するのはカウンターのリスクが高い。ですんで比較的守備が緩いアルゼンチンの左サイドを攻撃し、そこから右サイドのムバッペへサイドチェンジを入れたい所なんですが、そこでの頼みの綱といっていいグリーズマンはアルゼンチンの執拗なマークに苦しんでおり、上手くいかない。もう一つの攻撃手段であるデンベレはベンチに。
こうなるとカウンター狙いをしたいのですが、すでにアルゼンチンは二点リードを持っているし、左サイドのディマリアを集中的に使って攻めてくる。ムバッペを左サイドに置いておくとカウンターは難しい。だからムバッペを中央に移してカウンターで使いやすくする。デシャンの采配は理に適ったものですが、問題は二点ビハインドって所です。カウンター狙いで二点取るのは中々に難しい。
デシャンが何かしないといけない。交代カード使って試合を動かさないと難しい。二枚替えで守備は安定しましたが、ジルーとデンベレがいないチームってのは攻撃面では難しい状況です。違いを作れるのはムバッペしかいない。しかしアルゼンチンはムバッペにボールが行かないようにゲームを進めてんです。
多分、多くの人はこう思うでしょう。「ムバッペをベンチにして守備できる奴いれるだけでいいんじゃね?二枚替え必要なくね?」とかね。
しかし、デシャンはそれをしなかった。ジルーでもなくデンベレでもなくグリーズマンでもなく、前半消えてたムバッペを選んだ。その理由を我々は後半に知る事になるのです。
ちなみに恐ろしい話ですが、フランスは後半20分すぎまでシュート0本に抑え込まれました。前半の二枚替えは守備の安定のためのものですから、それはしょうがないんですけどね。
この試合の転機の一つとなったのはアルゼンチンがディマリアを下げてアクーニャを投入した所からです。これはアルゼンチンのスカローニ監督がよくやる奴なのですが、スカローニ監督はリードをしていると基本的にこの時間帯からは守備固めに入ります。2点リードしててフランスはシュート0本。それなら後は守備固めして逃げ切る。当たり前のゲームプランでした。
だがしかし。
この交代を待っていたのがデシャンでした。よく我慢したと思います。ディマリアがいなくなったのを見て一旦エムバペを左サイドに戻して様子見。そこから更に二枚の交代カードを切ります。Tエルナンデスに代えてカマヴィンガ、グリーズマンに代えてコマン。攻撃時のシステムを424に変更。中盤が機能しない試合のため、中盤を飛ばして前線にボールをつけるシステムに切り替えました。肉弾戦ですね、これは。
そして、この時間帯、アルゼンチンはちょっとしたミスが出ます。それまではフランスの右サイドを中心に攻めていたのですが、この時間帯からフランスの左サイドを攻めるようになったんです。ディマリアを下げてアクーニャにしたせいでしょうが、これはね、やめたほうがいいんですよ。エムバペ経由のカウンター喰らう可能性があるから。
そして、それが起きちまったのが、後半33分です。アルゼンチンはフランスの左サイドを攻撃してたのですが、そこでのボールロストからエムバペにボールが入ってしまい、フランスのカウンターが発動。コロムアニが抜け出した所をオタメンディが手をかけてしまい、それでフランスはPKを獲得。これをムバッペが決めてスコアは2-1に。
「王様のいるサイドを攻撃するとカウンターが怖い」、まさにこれが起きた瞬間でした。守備固めでいれたアクーニャでしたが、それが原因でアルゼンチンがフランスの左サイドを攻撃するようになり、結果としてエムバペ経由のカウンターを喰らったとすると、かなり皮肉な結果だったと言わざるをえません。他にもミスがあるのですが、最大の原因はムバッペから遠いサイドを攻撃しなかった所だと思います。
そして、悪い事は重なるもんで、後半35:39。フランスの攻撃でボールがこぼれた所に前からメッシが戻ってきてアルゼンチンにボールが移ります。こうなるとアルゼンチンは攻撃のスイッチが入るので、一斉にアタッカーが前に向かって走り出し、メッシのパスコースを作ります。ところが、その時にコマンが守備に戻ってきてメッシからボールを奪う事に成功するんです。
これによってアルゼンチンのカウンターに対するフランスのカウンターが発動することになりました。そしてコマンからラビオにボールが渡り、ラビオはそこからサイドを変えてムバッペへ。フランス相手に一番警戒しないといけない右サイドから左サイドへのサイドチェンジというのをアルゼンチンは許す形になってしまいます。右から左へのサイドチェンジというのはフランスの形であり、ムバッペはテュラムとのワンツーで抜け出して、最後はスーパーボレーでゴール。これでスコアは2-2に。
ここまで殆どシュート打ててなかったフランスだったんですが、ほんの3分の間にアルゼンチンから二点を奪い、試合を振り出しに戻したわけです。なんというドラマ、なんという試合。
これこそが、ジルーでもなく、デンベレでもなく、グリーズマンでもなく、デシャンがムバッペをフランスの王に選んだ理由です。たった一人で試合を振り出しに戻すフランスの真の王。これができる選手だからこそ、あそこまでデシャンに特別扱いされているのです。
アルゼンチン対フランス、延長戦前半
こうして試合は振り出しに戻りました。デシャンの交代は機能し、デシャンが選んだ王は試合を振り出しに戻した。しかし、デシャンはその為に4枚のカードを切ることになりました。もう交代カードは切れません。一方でスカローニは交代カードを1枚しか切っておらず、ここからアルゼンチンのターンが始まります。サッカーって、時々ターン制バトルのように見える事があります。
スカローニが延長前半最初に行ったのがSBの変更です。モリーナからモンティエルへ。これはムバッペにワンツーで抜け出されたのを見ての変更でしょう。あそこでついていけないようだとフレッシュな選手に変えたほうが良いですからね。
そしてもう一つ、アルゼンチンは延長前半から攻撃時のフォーメーションを3421に変更。
こういう形で攻撃する形に変更してます。綺麗に3421出来てますよね。
これを見て延長前半6分、デシャンはボランチをラビオからフォファナに変更してます。
これ、それぞれにどういう意図があるのかって話なんですが、アルゼンチンのほうは明確です。
これです。アルゼンチンは中盤中央で数的有利を作れるんです。これに対しては「テュラムとムバッペがアルゼンチンのボランチ見れば良くね?」とか思うでしょ?そこで再びムバッペ問題が出るんです。ムバッペは守備適当だからアルゼンチンの中盤中央での有利は揺るがない。そのため、延長前半、アルゼンチンは中盤中央の数的有利を活かして左サイドへ展開という、フランスが一番やられたくない攻撃が再び可能になったんです。
だからデシャンはラビオに変えてフレッシュなフォファナ入れざるを得なくなったんです。ムバッペの分まで守備してくれるフレッシュなボランチが必要だったんです。
そしてそれを見てから延長前半12分、スカローニは疲れが隠せなくなっていたデパウルに変えてパレデス、アルバレスに変えてラウタロ・マルチネスを投入。ここ、パレデスがアンカーに入ったのが肝でして、アンカーが最終ラインに下がって3バックポゼになるので、ここにはフランスがプレスに来ないのです。
狙いとしてはこうですね。そして、延長前半13分、この采配がすぐ当たってデパウルから縦パス入れてアルゼンチンはシュートまで持ち込んでます。
このあたりの時間帯は仕掛けるスカローニ、守るデシャンという形ですね。この試合の隠れた見所の一つに両監督の采配がありました。
ここからはずっとアルゼンチンのターンで、延長前半終了までの間に3本シュート打つのですが、どれも入らず。スカローニの采配は上手くいっていたのですが、結果が伴わずという形でした。ここで点取れないと、延長戦のハーフタイムでデシャンに対策されてしまうので良くない奴なんですが、残念なことにアルゼンチンは勝ち越せないまま、延長前半は終わります。
アルゼンチン対フランス、延長戦後半
さてアルゼンチンペースで延長前半は終了したわけですが、デシャンが何もせずに後半に入るわけもなくという奴です。デシャンという監督、守備に関しては修正がクッソ速いんですよ。
延長戦後半開始直後、フランスは高い位置からプレスに行き、アルゼンチンの433が3421に変形する前にボールを奪うという守備を試みます。自陣に押し込まれて3421に変形されてしまうとアルゼンチンに中盤制圧されてやられるってのは延長前半でわかっていたので、そういう形にしたのでしょう。
ところが、これ、裏目にでちまいます。
高い位置からプレスに行くという事は裏のスペースをアルゼンチンに提供するという事であり、アルゼンチンは裏へのフィードに攻撃を切り替えます。このあたりの判断の速さはアルゼンチンの攻撃が優れている理由です。このチームはものすごく頭が良いのです。相手の最終ラインの高さによって攻撃方法を変えられるチームなんです。これができるチーム、実はそんなに多くありません。
延長後半1:32にはフランスは裏へのフィードでラウタロ・マルティネスの抜け出しを許してしまいます。これはロリスが出てくれたので助かりましたが、延長後半2:47、フランスの最終ラインが高いのを見てアルゼンチンは再び裏へのフィードを試みます。これがラウタロ・マルティネス→メッシ→Eフェルナンデス→ラウタロ・マルティネスと繋がって、ラウタロ・マルティネスの打ったシュートをメッシが押し込んでアルゼンチンは再び勝ち越しに成功。
デシャンが前から行く守備に切り替えたのは気持ちはわかります。痛いほどわかります。延長前半の凹られ具合を見たら、守備のやり方変えるしかないと思うのは当然です。でもあの時間帯で前プレは無理がありすぎました。しかも前プレの起点はムバッペですよ・・・・無理ですがな・・・・
これで試合は決まった、そう思いました。見ていた時はね。
ただ、フランスというチームは監督の采配が外れたとしても、ムバッペが息をしている限りは死なないチームなんです。
延長後半10:32、フランスのCK。ファーサイドのテュラムに出されたボールをムバッペが拾い、そこからミドルシュート。これをアルゼンチンのモンティエルがハンドしてしまい、フランスはPKを獲得。これをムバッペが決め、再び試合は振り出しに。ムバッペはW杯決勝でハットトリック、得点王がこれで確定ですよ、狂ってる。
しかもこの後、両チームがプレスかかってないのにラインを高くして守るもんですから、しょうもない裏へのフィード合戦になり、決定機が量産される事態が発生。
延長後半のATにはフランスがGKとの一対一作りましたがEマルティネスのスーパーセーブ、その後にはラウタロ・マルティネスが決定機までいったものの、両チームともにゴールは奪えず、最後はPK戦に。
アルゼンチン対フランス、PK戦
PKの話をするのは好きじゃありません。自分は運ゲーだと思ってます。
単純に確率の話をしましょう。PKの成功率80%のチームと、PKの成功率50%のチームがPK戦したとします。どっちが勝つと思います?
確率でいいましょうか。PK成功率50%のチームが勝つ確率が20%程度はあります。
要するにどんだけPK練習頑張ろうと運ゲーなんですよ。5回勝負じゃ運の要素がでかすぎる。
これが10回だと50%のチームが勝てる可能性はぐっと減り、100回ならばほぼ0です。
PKから運ゲー要素をなくしたいなら100回は蹴るゲームに変更するべきですね。
だからPK戦なんて戦術語るほどのモンじゃないんです。
この試合、あの時、あの場所で、アルゼンチンがPKで勝ったのは、メッシにちょっとだけ、ほんのちょっとだけサッカーの神様が優しかったから。
それだけで良いと思います。
メッシの旅の終わりをこの目で見られた。それだけで俺は十分幸せです。
最後に、これからのサッカーの新時代について
このカタールW杯はムバッペとメッシという、史上最高の選手同士が死闘を繰り広げた大会として、長く語り継がれるであろう大会となりました。
史上最高の選手、そう呼ばれる選手は多くはありません。ディ・ステファノ、ベッケンバウアー、クライフ、ペレ、マラドーナ。そして今、そこにメッシが加わりました。やがてはムバッペもそこに加わるでしょう。これらの選手が直接戦った試合として有名なのはベッケンバウアーとクライフが戦った西ドイツ大会決勝ですが、今回の決勝はそれに匹敵するか、それを上回る試合だったんじゃないでしょうか。ま、自分はその試合を見たことはないんですがね。
メッシの旅は終わり、クリスティアーノ・ロナウドの夢も終わりを告げた大会でした。
それは寂しいものですが、すでに時代に選ばれた次世代のスターが出現しています。一人は今回の主役であったフランスのムバッペ。もう一人はノルウェーのハーランド。
クリスティアーノ・ロナウド、彼はW杯を取れなかった事で史上最高と呼ばれることはもうないのかもしれません。ただ、彼に憧れ、彼を手本にした選手たちは沢山います。ムバッペもハーランドも彼を自らの手本と呼び、彼のおかげでプロ選手になれたとまでいうほどです。その功績は誰も彼から奪えないものなのです。
ムバッペもハーランドもこれからのサッカー界を引っ張っていくスーパースターとなる選手です。この二人のプレーは一見の価値があります。とんでもないプレーをする選手たちなので、是非見てください。きっとファンになると思います。
ではでは。
2022年カタールW杯、日本対クロアチアのレビュー、PKの話はないぞ念のため
はい、皆さん、こんにちは。
本日は先日行われた日本隊クロアチアのレビューをやっていきたいと思います。
PK戦での決着だったので、皆さんも消化できない部分も沢山あるでしょうが、PKは試合内容と全く関係がない要素なので、レビューでは扱いません。今回は試合内容の話にフォーカスしてお届けします。
クッソ長いので、暇な時に読んでください。チェンソーマンのアサの話並に長いです。
日本対クロアチア、スタメンと両国の守備の違いについて
まずスタメンから。
スタメンですが、日本は3421で冨安と遠藤がスタメンに復帰してます。ワントップは前田、シャドーは鎌田と堂安。右WBに伊東が入ってる所が特徴ですね。試合前、「前半から堂安を使ってくるならポイチさんは前半をクロアチアに譲らない」と思ってたのですが、堂安がスタメンなのを見て、ポイチさんは前半から点取りにいくつもりだと確信しました。
ここまで日本代表はドイツ戦、コスタリカ戦、スペイン戦で前半は相手に譲り、後半勝負という形を取っていたのですが、クロアチア戦では前半から勝負をかけてきました。理由は後述します。
一方のクロアチアですが、最大の武器である中盤の三枚モドリッチ、ブロゾビッチ、コバチッチは変わらず。他も前節から変わらずですが、左SBはパリシッチでなくソサが入ってます。いつものクロアチアの433ですね。
さて、この試合の話なんですが、最初にまた守備の話から入ります。退屈かもしれませんが、この試合の話になると避けては通れない話になるのでお付き合いください。
基本的にポイチさんの3421は541で自陣内にブロックを敷く守備を好み、「バイタルを相手チームに取らせない」「バイタルエリアで受けさせても絶対に前を向かせない」という事を徹底します。スペイン戦がまさにそれでした。これはJリーグだと鹿島が伝統的にやってる守備であり、鹿島はブラジル式守備の影響が色濃いチームです。ブラジル式守備は「バイタルエリアを相手に取らせない」事を非常に重要視します。何故、ブラジルがそういう守備をするかというと、ブラジルでバイタル空けると、
半端ないって。。。 pic.twitter.com/sjXFYsYrBF
— 大迫はんぱないbot (@osako_hanpa) December 5, 2022
こういう攻撃喰らうからです。バイタルエリアのワンタッチのコンビネーションで中央突破。こういうのブラジルは大得意なんですね。
この守備はバイタルエリアを守るために中盤コンパクトにしてDFラインをPAの外側5m~10mくらいの位置で踏ん張る必要があります。韓国はこのシーン、DFラインはPA内の内側まで下がってしまっている上にバイタルがスカスカになってますから、これだとブラジルに中央突破喰らう・・・という奴です。
この守備方法ですが、今回のW杯では日本対スペイン、日本対モロッコの試合でモロッコや日本がとったやり方です。この二試合でスペインは日本とモロッコに完全バイタル封鎖を喰らって、得意のバイタルエリアを使った攻撃が殆どできませんでした。
韓国対ブラジルはちょっとしか見てないのですが、「この守備方法だとブラジル止められない・・・」というやり方でして、後述しますが、守備のやり方が欧州式だったんです。
一方、この守備、サイドアタックにはどうしても弱くなります。中央のスペースを消す関係上、サイドとサイドの裏のスペースがどうしても弱点になります。
さて、DFラインの守備方法として、もう一つメジャーなのが欧州式と呼ばれる方法です。こちらはバイタルエリアの守備が緩い事が結構多いです。何で?と思うかもしれませんが、欧州式は「バイタルは多少取られてもいいからGKとCBの間にクロスを上げさせない」事を重要視してんです。
どういう事かというと、今大会の日本対ドイツ、日本対スペインの試合で起きたケースを極端に嫌うんです。
三笘からなんだよなぁ✨#サッカー日本代表#サッカー#ゴール#日本代表#ドイツ戦 pic.twitter.com/ay5WnBZuQH
— つかれたまん (@mfd_fq) November 23, 2022
田中の逆転ゴール!!
— 麹 (@oryzae1824) December 1, 2022
ドイツ戦と全く同じ流れ来てる!!pic.twitter.com/Q2ZuZgRGoh
これです。どちらもゴールもそうなんですが、GKとCBの間に早いクロス上げられて押し込まれる奴です。これを極端に欧州のチームは嫌うんです。
欧州のDFはほぼ全員背が高く屈強です。その為、
こういうクロスには極端に強いんです。一方で、GKとCBの間のクロスを上げられてしまうと彼らの強みが発揮できないので困るのです。だから最終ラインを低く設定し、裏のスペース消すんですね。これは必然的にバイタルエリアでスペースが生じやすく、そこからのコンビネーション、ミドルシュートに弱くなるという欠点があります。サイドアタックには強いが、中央が弱くなる。これがこの守備の問題です。
こういう守備をJリーグでやってるのは名古屋が代表的で、あそこは伝統的に欧州系の監督を多く使ってきたチームでして(例外もありますが)、そういう守備の伝統があるんです。これはチームカラーと言ってもいいですね。
お隣の韓国なんですが、日本よりもフィジカルなスタイルでイングランドみたいなスタイルで伝統的に戦ってきた国です。そういうサッカーしてる国なんで守備の方法も欧州式なんですよ。ただ、それでブラジルとやるのは悪手なんですよね。ブラジルやスペイン相手はバイタルを閉めないといけない。相手によって守備方法は変えないといけないんです。
今回、日本がぶつかったクロアチアというチームは、守備方式としては欧州式、あるいは名古屋式と言っていいシステムです。「ある程度バイタルは取られても良いからDFラインの裏を取らせない、GKとCBの間にクロスを上げさせない」という事を最重要視するチームでした。
そういうチームなので、クロアチアは基本的にDFラインを深めに取り、自陣で451でブロックを作るチームでした。このあたりはフォーメーションは違えどコスタリカと同じですね。
クロアチアは、その守備の関係上、どうしてもバイタルが緩い事になるチームです。なのでバイタルエリアを使うのが上手いチームとやるとボコボコにされる危険性が常にあります。2018年にスペインに6-0で凹られたり、ユーロのベスト16でも5-3で負けてますが、バイタル使うのが上手いスペインとやると、まあそういう事にもなるかなと思う守備です。コスタリカもスペインとドイツに大量失点してますが、守備方法の関係上、バイタル使うのが上手いチーム相手だとしゃーないすね。
さて、こういう守備やってくるチームなんですが、現在の日本代表にとっては結構困るチームなんですね。
現在の日本代表の攻撃がWGの突破力、つまり三笘と伊東のスピードとドリブル突破に極端に依存してるって話は前々回のエントリで扱いましたが、深い位置でブロック敷かれてしまうとWGってのは裏のスペースが無くて苦しくなるんです。特に伊東は前のスペースが欲しい選手なので難しくなるんですね。
クロアチアに対して伊東が縦に突破してGKとCBの間にクロスを上げる攻撃は非常に有効なんです。相手はでかくて屈強なCBで、GKとCBの間にボール入れられる攻撃には対処しにくい連中ですからね。
それが嫌だからDFラインを深い位置に取ってそれをいれられないようにしてるんです。これは今回の日本代表にとっては非常にやりにくい。
4年前の日本代表は大迫のポストプレー、香川と乾のコンビネーション、柴崎のゲームメイクがありましたから、こういうチームウェルカムなんですよ。ハッキリ言って、こういうチームは四年前のチームにとっては良いカモです。しかし、今大会の日本代表にとっては非常に難しいチームです。
日本対クロアチア、スタメン起用の堂安について
さて、クロアチアみたいな相手に対してはポイチさんは広島時代、どう対応してたかというとボランチの配給からの中央三枚のコンビネーションになります。広島式の王道、1トップ2シャドーのコンビネーションですね。
この試合、最初に堂安がスタメンでした。堂安はスペイン戦で目の覚めるような120キロのミドルシュートをバイタルから打っています。コンビネーションも上手い。さらに堂安はレフティです。つまり、右サイドの高い位置からカットインできる。
クロアチア代表はラインを深く取ってGKとCBの間にクロスを上げさせない守備をやってます。そしてコバチッチの裏にスペースが頻繁に出来るチームです。であれば、そのスペースを堂安に使わせて、コンビネーションとミドルシュートを狙う。相手がそれを嫌がってラインを上げてバイタルのスペース消して来たら、伊東に縦突破させてGKとCBの間へクロスを上げさせれば良い。
自分が、この試合は堂安がキーとなると考えていた理由がコレです。ポイチさんが攻撃をこれで組み立ててくるのは間違いないと思ってました。
そして同時に試合前に久保が欠場というニュースを見て「あかん、これはあかん」と思った理由でもあります。堂安が疲れてきたら同じレフティの久保を入れたい試合なのですが、交代カードで久保が使えないのですよ。この試合で久保使えないのは本当に痛い。
さらに残念な話なのですが、急造3421で1トップ2シャドーの中央3枚のコンビネーションが上手く行ってません。その上にバイタル攻略に不可欠な中盤のゲームメーカーを日本代表は欠いています。
そして、これらの懸念は試合中に現実化してしまったのです・・・・
日本対クロアチア、前半戦
この試合の録画へのリンクは↓から。
日本 vs クロアチア|決勝トーナメント1回戦|FIFA ワールドカップ カタール 2022 | 新しい未来のテレビ | ABEMA
先に言っておきます。「クロアチアのバイタルの守備が緩めなら柴崎を何で使わないの?」という疑問があるでしょう。
サッカーは相手がいるスポーツです。そしてクロアチアの中盤はモドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチという欧州屈指の3人です。これを柴崎とマッチアップさせてしまうと事故が起きる可能性が非常に高いのです。これは非常に難しい判断です。やるならギャンブルと言っても良い。ポイチさんは守田と遠藤に託しました。その判断を自分は尊重します。
さて、この試合の前半なンですが、ひじょ~~~にオープンな展開になりました。ドイツ戦、コスタリカ戦、スペイン戦とはまるで様相の違う試合になりました。本田3が解説で「オープンなので怖い」みたいな事言ってましたが、自分も同じ感想でした。これまでの3試合では日本は前半は塩漬けにする事を選び、相手に主導権を渡し、前半を相手に譲るサッカーをしたのですが、この試合は前半から打ちあう事を選んだんです。
前半1:25、日本がまずFKを貰います。この試合の最初から日本代表の狙いはGKとDFの間でした。単純に高さ勝負だとクロアチアに分があるため、CBとGKの間にボールを入れたい訳です。堂安はGKとCBの間にボールを蹴りこみ、それに選手が合わせるって形を取ります。ここ、冨安が触ってれば日本がここで先制できたんですが・・・・
次に前半2:25、日本のCKになるんですが、ここで日本はショートコーナーを選択。伊東から遠藤にパス。ショートコーナーをするとクロアチアは最終ラインをちょっと上げます。そこで遠藤がDFとGKの間にボールを入れるんですが、これを谷口がヘディング、これは惜しくも反れてしまいますが、非常に良い攻撃が出来てます。
そして前半4分あたりからクロアチアの攻撃が始まるんですが、クロアチア代表の特徴として、サイドのワンタッチのコンビネーションからの突破が非常に上手いってのがあります。スペイン戦みれば、日本代表のバイタルエリアの守備が非常に硬いってのは相手もわかってるので、そこは使わずサイドからという意図は見えてきます。
これ、試合前から怖かったのですが、日本の左サイドがワンタッチのコンビネーションで抜かれて、逆サイドの伊東のところにクロス上げられるとスペイン戦みたいな事故が起きる可能性が低くないんですよ。実際にこれは後半に起きてしまうのですがね。
本田さん、このあたりの解説で「クロアチアは(スペインと比べると)雑い。けどその雑さが怖い」って話してるんですが、伊東のところは雑なクロスでも失点してしまう可能性があるんです。本職のDFでなくアタッカーをWBに使う代償として受け入れないといけないリスクなんですけども。
今回のエントリで「インスイングのクロスはDFがマークとボールを同時に見れるので対処しやすい」って話をしましたが、それは本職がDFの選手の場合です。本職アタッカーの伊東にそれを求めるのは酷です。
試合の話に戻りますが、前半7:26秒、冨安がペリシッチに押されてパスを空ぶって抜け出され、GKとの一対一が出来てしまいます。ここは権田がビッグセーブ。これ、マジでビッグセーブでした。こういうシーンほどVARしろよって話なんですがね。なんのためのVARなんだか。VARについては言いたいことが沢山あるのですが、今回は関係ないので止めときます。
さて、話を試合に戻ります。前半8:21の所なんですが、動画みてもらうとわかるんですけど、日本代表は自陣内からのビルドアップから長友までボールを出すことに成功します。ここでクロアチアのDFラインはPA内までラインが下がっていて、さらにコバチッチの裏のところで堂安がフリーなんですよ。バイタルスッカスカ。あそこを使いたいのです。
このシーンなんすけどね、クロアチアってこういうシーン本当に多いチームなんです。画面右下にいる堂安がフリーなんです。あそこはコバチッチが埋めないといけない場所なんですけど、あそこが空くんですよね。
クロアチアなんですが、日本相手だからあそこ空いてても何とかなりましたが、次はブラジルです。あそこ空いてたらブラジル代表はCFとSBがワンツーして間違いなくあそこまでボール運べます。どうするんでしょうね。
クロアチアの守備方法だとブラジルのアタッカー抑えきれないと思うんですよね。
話が反れたので話を試合に戻します。
前半9分、ここでクロアチアは日本の最終ラインが高いのを見て裏へのスペースにポーンと蹴ってきます。それを見て本田3が「ラインが高かったら平気でああいう所なんぼかやってくるんでちょっと嫌ですよね」って話してるんです。本田3がいうようにスペインはこういうボール蹴ってこないのですが、クロアチアはやってくるんです。これはクロアチアの特徴と言っていいですが、良い意味で雑です。雑にクロス入れて来るし、雑に裏へのフィード出してきます。ポゼッションにはそれほど拘らないんです。スペインは秩序だったポゼッション、崩しの形を持ってるのですが、クロアチアは綺麗な形にはこだわらないのです。点に直結するプレーがあれば、雑であってもやってくるんですな。
これ、どういう事かというと、日本はワンミスで失点する可能性が常にあるって事です。ミスが多いチームにはこういうの非常に有効だったりします。多分ですが、日本はミスが多いって思われてますね。実際そうなんですが。
前半11:36、ここ、日本がやりたい攻撃ができたシーンです。ここは見事な攻撃で遠藤からブロゾビッチの脇に降りてきた前田に楔をいれて、それを鎌田に落とし、それをブロゾビッチの脇のスペースでフリーだった堂安につける。ここからサイドの伊東の展開して、伊東はクロアチアのDFとGKの間にクロス。これ最後に長友が滑り込んだんですが触らず。この形なんですよね、日本がやりたい攻撃。ここは本当に見事な攻撃でした。こういう攻撃はクロアチアみたいなチームにとって一番嫌な攻撃です。
前半14分。ここも雑なクロアチアの攻撃なんですが、日本代表がライン高いのをみて、その裏にモドリッチがポーンと蹴ってくるんです。これで日本の左サイドを抉って左足でファーの伊東の所へクロス。本当に雑な攻撃なんですけどね、日本はこれが嫌なんですよ。
双方のチームの狙いはこの時間帯ではっきりしてきていて、日本はブロゾビッチの脇を取ってサイドに展開し、そこからGKとDFの間へのクロス。クロアチアは日本の左サイドからファーの伊東の所へクロス。試合はかなりオープンな展開で、双方のチームの弱みをはっきりと狙う展開です。そして、そのどちらがそれを成功させるか、それが問題でした。
前半25分、ここで本田3が解説で「見てください(日本の)ラインめちゃくちゃ高いですよ、で蹴ってきた時が怖いんです、ホラこれオフサイドないですよ」って言って、その通りに日本のDFラインの裏に抜け出されます。ここ、クロアチアは良い意味で雑なんです。裏にスペースあったら雑に最終ラインから蹴ってくるんですよ。綺麗なサッカーにこだわらないのです。スペインは日本戦、モロッコ戦で綺麗で上品なサッカーに拘って自滅しましたが、クロアチアは拘らない。
クロアチアのサッカーって、スペインとは明確に違います。中盤三枚がポゼッションのキーとなっている433という点では同じですが、「得点に直結するプレーは雑でも良いからやる」チームです。だから最終ラインから裏に蹴る事を躊躇なくやってきます。スペインはやってこないんです。
前半27分、クロアチアの攻撃がまたいい形で決まるんですが、日本が中盤をコンパクトにしたバイタル封鎖守備をやってるので、雑にサイドの裏に蹴ってくるんです。そして、そこからファーへのクロスに繋げてます。これね、スペインがやってこない攻撃なんですが、中盤コンパクトにしたサッカーにはコレが効くんです。本田3が「ウザいなー」って解説してますが、「雑だがインテリジェンスがある攻撃」をクロアチアはやってます。
そこからクロアチアの攻めが続くんですが、もう徹底して伊東の所を狙ってきます。ニアの伊東とペリシッチを競らせて、ペリシッチが中央に反らす、さらにこぼれたボールを伊東の所に放り込む。徹底して伊東狙いです。あそこが日本の穴だとわかってますから、そこを徹底して突くんです。攻撃は雑なんですが、明確な意図がある。伊東はクロスの対応に難がある。だったらそこを狙えばいい。堅い中央は使わない。クロアチアの狙いはハッキリしてます。
前半28分のクロアチアの攻撃も同じです。中央から斜め外に動くペリシッチの動きで裏を取り、そこからサイド攻撃。スペインはこれやってこないんですよ。スペインはひたすら中央にこだわる。日本とモロッコは中央封鎖守備してたのにね。スペイン対モロッコの試合見てて「スペインのサッカーには知性がない」とかtwitterで言いましたが、相手の強いところに突っ込んで弱い所に行かないからです。バッカじゃねぇのって思ってました。イングランドもサイド封鎖されてるのにひたすらサイド攻撃する脳筋サッカー国ですが、クロアチアはそうじゃありません。日本の弱いところを集中的に狙ってきてます。
中央封鎖されてるのに中央にいくスペイン、サイド封鎖されてるのにサイドに行くイングランド。これを極東の島国では馬鹿の一つ覚えと言います。
前半30分前後、クロアチアは中央のコンビネーション試すんですが、それはあっさり日本の守備の網にかかってます。こういう攻撃は日本は怖くないんです。中央封鎖してるので。
前半32分、これ画像でやりますが、
クロアチアって、こういう風に守備の時に最終ラインをPA手前くらいまですぐ下げるんですよ。日本はバイタル封鎖守備なのでPA手前5~10mあたりに最終ライン設定するんです。一方クロアチアはさっさとPA手前まで下げます。これは最初にも述べましたが、両国の守備方法の違い、やられたくない攻撃の違いによります。クロアチアがすぐ最終ラインを下げるのはGKとDFの間にクロス上げられたくないからです。日本はスペインとドイツに、そのクロスで得点を奪っており、クロアチアがそれを警戒しているのがよくわかるシーンです。
で、ここねえ、日本はボール一回戻して伊東を裏に走らせるんですが、それはあまり良い手ではないんですよね。
クロアチアのアンカーの両脇にスペースあるんですよ。バイタルにスペースあるなら、そこを狙って欲しいのですがね。うーーん、という奴です。この手の守備をやるチームに伊東を裏に走らせる攻撃はあまり効かないのですよ。あまり良くないという奴です。ブラジルやスペインだったら間違いなく中央に来てます。クロスにこだわりすぎてないか、そういうシーンでしたね。実はこの試合、こういうシーンが多かった試合でもあります。
次、前半33分のシーン、ここも画像でやりますけど、
これ、日本の攻撃シーンなんですが、クロアチアってチームは最終ラインを深い位置に設定します。だから日本のボランチは割と簡単に相手陣内で前向いてボール持てるんです。動画で見て欲しいのですが、ここから日本は中央でのコンビネーションを開始。遠藤が堂安に当てて前田に落とし、それをバイタルに走りこんだ遠藤に戻すというプレーで絶好の位置でボランチが前を向ける所まで行ったんですが、惜しくも繋がらず。
これねえ、クラブチームなら間違いなく中央ぶち抜いてます。今回の代表、準備期間が短い中で3421に変更したので1トップ2シャドーとボランチのコンビネーションがちょっとズレるんですよ。こういうシーン何度もありました。
急造の3421だからしょうがないんですが、本当に惜しいです。こういう攻撃ね、柴崎とかが大得意な奴なんです。相手陣内でボランチが割と簡単に前向ける試合なんで、柴崎がいればなあ、1トップ2シャドーの連携がしっかりできてればなあ、って何度も思いました。
ちゃんとしたゲームメーカーがいて、1トップ2シャドーのコンビネーションがしっかりしてれば二点以上取れて勝てた試合なんです。本当に惜しい。そこが惜しい。
クロアチアのインサイドハーフは、アンカーの裏をウロウロしてる2シャドーを気にして日本のボランチに積極的にプレスに出れない試合でした。そのため、日本のボランチは高い位置で簡単に前を向ける。柴崎が欲しいんです。日本がボール持ってる時は。
そんな中、前半40分には鎌田が決定機を迎えるのですが、シュートは枠の上に。あそこ、決めといて欲しかったです。もうマジ決定機逸脱。このあたりはずっと日本の時間でした。
前半42:48秒、日本はCKから先制します。ここ本田3が「あの立ち位置みても(ショートコーナー)対応できんですよ、そうそうそうやってみ」と解説いれてて、その後に実際に日本代表はショートコーナーを選択。
これ、前半2分にみせたのに近い形なんですが、ショートコーナーで相手のDFラインを上げさせて堂安にGKとDFラインの間に巻いて落ちるボールを入れさせるという形。ここは遠藤が触って前田が押し込みました。これは守備を頑張ってた前田へのご褒美です。高さで勝る相手にはこういう形でのショートコーナーは非常に有効なので覚えといてください。
リアタイしてた時は本田さんの言う通りになってて画面の前で笑ってましたけどね。
日本代表、アジア最終予選ではセットプレーからの得点ゼロのチームだったのに、まさかのCKからの得点です。クロアチアもびっくりだったでしょう。これ、スペイン、ドイツ、コスタリカでは見せてなかった形だったのでクロアチアは対応できなかったですね。ベスト16の試合まで、セットプレーの形を隠してた訳で、ポイチさんもここぞという試合まで手札伏せてたわけです。アジア最終予選、W杯GLの死の組で手札を使わず、いけるかどうかもわからないベスト16まで温存とか、控え目に言って頭がおかしい。
前半32分以降、日本の時間が来てたのですが、その時間帯にしっかり点が取れました。今の日本代表には決定力はあるんです。自分達の時間にしっかり点とりますから。
日本はこの一点リードをもって後半に入る事になります。
日本対クロアチア、後半戦
ここから先は書くのは気が重いです。日本が上手くいかなかった後半の話です。
日本代表は1点リードで折り返したので、ここまで常に行ってきた後半開始頭からの二枚替えを行わず。相手のクロアチアも交代枠は使わず、そのままのメンバーで後半に入りました。
双方のチームが明確な狙いを持って攻撃を組み立てており、それはどちらのチームも上手く行っていました。あとはクロアチアの伊東狙いがハマるか、日本の攻撃がハマるか、それの勝負でした。
さて、最初は日本でした。後半0:22分、相手陣内で日本はボールを奪い、そこから速攻。相手のバイタルはスカスカで鎌田はそこからマークに来たブロゾビッチを華麗に外して(ブロゾビッチは背中を見せてターンさせらてます)、ミドルシュート。これは枠を外れるんですが、良いシーンでした。
あんですねえ、ここ、「日本はミドルシュートもうちょい頑張ろうや」という奴なのですよ。
バイタルにスペースできるし、ボランチが簡単に前向けるチーム相手なんですよ。ボランチ、シャドー、WBのミドルシュートで点取りたいのです。強力なミドルがあるチーム相手だと、DFラインはミドルが怖いのでラインを上げざるを得なくなります。そうすると、今度は裏にスペースできます。そしたら日本の二枚看板、三笘と伊東のスピードが活きるんですよ。
後半2分あたりで本田が解説で三笘の話を始めます。「三笘さんどうします?」ってね。本田3は三笘を一列前で使いたいようでした。WBだと守備に追われるからというのが理由です。
自分もここが気になってまして、クロアチアがWBのところを狙ってきてるのに両WBを「伊東・三笘」にしてしまうのは悪手だと思ってたんです。クロアチアは日本の両サイドの裏のスペースを狙い、そこからファーへのクロスを上げるってのを前半からしつこくやってました。こういう攻撃をするチーム相手に両WBをアタッカーにするのはリスクが高すぎるんです。
後半8分、日本の攻撃シーン、ここ大問題起こしてて
このシーンです。ここ伊東がサイドからGKとDFの間を狙ってクロスを上げてるんです。これは確かにクロアチアは嫌な攻撃なんですよ。でも、これが嫌だからDFラインを深くしてるんです。こういう相手にそこを狙うのは悪手なんですよ。で、バイタル見てください。堂安がフリーなんですよ。バイタルスカスカ。ここねえ、伊東が堂安に出してたら決定機です。伊東からのパスを堂安は左足でトラップしてシュートか、DF引きつけて逆サイドにいる鎌田にパスすれば一点取れたシーンなんですよ。
あのね、わかるんです。気持ちはわかるんです。クロアチアみたいな相手はDFとGKの間にクロスが有効。その通りです。しかし相手はそれが怖いからDFラインを深く取り、バイタルにスペースが出来るリスクを取ってるんです。だったら中央攻めるべきでしょってね。
見返すとこういうシーンがあって悔しくなるんですよ。こういうシーンが出来た時の為のレフティの堂安なんです。でも使えてない。こういう所なんです。こういう所で駄目押ししてれば勝てた試合なんです。
そして皆さんご存じかとは思いますが、後半10分、日本は失点してしまいます。
日本が失点したのはマジで雑なクロスなんです。日本の左サイドで裏取られたわけでもないし、クロアチアのSBがインスイングでゴールに向かう軌道の雑なクロスをファーに上げました。これをペリシッチにヘディングで決められて失点。
これ、しょうがないんです。伊東がクロス対応に難があるってのは最初からわかってた事で。本職のSBなら失点しないタイプのクロスです。でもポイチさんは伊東を選んだ。右サイドの堂安と伊東で点を取りたかったんでしょう。実際、ひとつ前の後半8分のシーン、伊東が堂安にボールつけてたら日本が二点目取れてたかもしれない。そうすればポイチさんは何の迷いもなく伊東を一列あげて酒井を投入したでしょう。
サッカーの試合って、こういう事よくあるんです。ほんのちょっとした事で全部変わってしまうのです。鎌田がバイタルで前を向いて打ったミドルが入っていれば、伊東が堂安にボールをつけていれば、そういう所なんですよ、勝負を分けるのは。PKなんてどうでもいいのです。試合内容のほうがよっぽど重要です。
そして、ここから両監督が試合に介入を始めます。
最初の交代カードはクロアチアでした。後半17分、CFのペトコビッチを下げてブディミルを投入。これはもう一点取って勝ちに行くってメッセージです。
それを見てポイチさんも交代カードを切ります。後半19分に長友に代えて三笘、前田に代えて浅野。相手が点取りに前にくるなら、打ち合いに応じるというメッセージです。これ、滅茶苦茶リスクがあります。両WBが伊東と三笘。クロアチアは前半から両WB狙いを続けている。相手が利用できる場所がこれで両サイドに出来たわけです。ポイチさんがこの采配した時は「リスク高すぎる、止めた方が・・・」と思いました。
これもう、どっちが先に点を取るか、そういう勝負を選んだという事です。全力で殴りあうって監督からのメッセージです。
最初にチャンスを作ったのはクロアチアでした。やはり三笘のところ狙ってきました。日本の右サイドから三笘のところにクロス。これは相手のヘディングが反れてくれて助かりましたが、三笘も結局アタッカーです。クロスの対応には難があるんですよ。
ただ、ピンチの後にはチャンスも来るもんで、後半24分、日本にもチャンスが来るんです。
ここ、三笘がサイドの高い位置でボール持てました。この時ね、クロアチアも「三笘のドリブルはやばい」ってわかってますから、モドリッチがサイドのヘルプに来てます。つまり、バイタルエリアはアンカー一人。クロアチアのバイタルはスカスカなんです。
ここ三笘は縦に突破して、GKとDFの間にクロスいれようとするんですけど、そっちは可能性が低いんです。クロアチアはDFラインをPA内まで下げており、GKとDFラインの間のスペースはほとんどなくなっている。これじゃ縦に突破しても難しいんです。それより中使うべきなんです。サイドにモドリッチ釣りだしてるんですから、アンカーの両脇使いたい。
本当にこういう所なんですよ、こういう所。相手が警戒してる所じゃなくて、相手の弱い所狙わないと。伊東も三笘もGKとDFの間へのクロスにこだわりすぎてんです。相手はそれを滅茶苦茶警戒してんです。だからDFラインが非常に低くてバイタルにスペースがある。そっちに行って欲しいのに、そっちに行かない。こういうディテールの部分が大事なんですって本当に。PKじゃなくてね。
この試合、三笘は滅茶苦茶警戒されてました。でもね、それなら相手のインサイドハーフをサイドに釣りだして、バイタルでフリーになってるボランチやシャドー使えばいいんですって。
俺はね、この試合についていえば、こういう所が話題になって欲しいんですよ。でもみんなPKの話ばっかしてる。そうじゃないだろって思うんですよ。だからPK戦が嫌いなんです。PKは運ゲーです。試合は自分達でコントロールできる。なら試合の話しようやって事です。
さて、後半30分、ポイチさんはここで動きます。もう露骨にクロアチアがファーへのクロスを狙っているを嫌ってか、鎌田に代えて酒井を投入。これでクロアチアに集中的に狙われていた伊東を一列上げてシャドーのポジションに移動させました。
これは恐らく、ポイチさん的には逃げ切りのプランだったはずなんです。これをやってしまうと日本代表の右の攻撃が機能しなくなる恐れがあるからです。実質、左の三笘に攻撃は全てを託すって形になってしまうんですね。
この試合、日本代表のメインの攻撃プランは右サイドの堂安と伊東でした。理由は最初に話した通りです。クロアチアはコバチッチの裏にスペースが出来やすいチームで、そこを堂安と伊東で攻略したい試合なのです。そのチャンスはあった。しかし、そこで点は取れなかった。
酒井でも出来ないことはありません、しかし精度は落ちてしまう。さらに堂安は後半30分も過ぎると体力的に厳しくなってくる時間です。ここで交代枠で使える久保が欠場してるんです。久保がいれば、もう無理やりの殴り合いを続けても良かったんです。しかし、その久保がいない。ここにきて久保の欠場が痛い事になったんです。
日本代表は、クロアチアの最大のウィークポイントといっていい右サイドの攻撃をここで諦めざるを得なくなりました。
ポイチさんはここで伊東を左のシャドーに回し、左サイドからのクロアチアの攻略を試みることになります。しかし、ここでは日本代表の構造的問題があり、日本は左サイドの底にゲーム作れる奴がおらんのです。谷口は右利き、守田も右利き。左のシャドーだった鎌田も下げました。鎌田は頻繁に下がってきて日本のビルドアップ助けてたんですが、その鎌田も下げてしまった。代わりに入ったのは伊東です。彼はビルドアップを助けられる選手ではありません。
これでは三笘に良い形でボール持たせるのは非常に難しい。しかも三笘はガチガチに警戒されてます。
このあたりの時間帯から、見てて「もう攻め手がない・・・」という感じでした。
そして後半31分、日本の左サイドのビルドアップのミス(吉田が事故りました)からペリシッチにボールが渡ってしまい、日本は大ピンチになります。ペリシッチは右利きなんですが、左足も同じくらい上手い選手で、対応した冨安は右足のシュートコースは消してましたが、左足のシュートコースは空けざるを得ない状況。終わったかと思いましたが、冨安がシュートに触って軌道を変えてくれました。本当に冨安は現在の日本代表で最高の選手です。彼じゃなかったら、あそこでこの試合は終わってましたね。
こういうプレーこそ称賛すべきなんです。本来はね。PKの話とかどうでもええねん。
後半34分、日本はFKを獲得。ここでFKのこぼれ球を三笘が拾って、そこから中の冨安にスルーパス。DFラインの裏へ冨安が抜け出すんですが、ここでシュートでなく中へのクロスを選択・・・・冨安、そこ打ってええねん。GKとDFの間のクロスにこだわりすぎやねん。そういうとこだぞ、日本代表。本当にそういうところだぞ、馬鹿の一つ覚えみたいにGKとDFの間にクロスばっかいれるな。
見返すと本当にこういう所が悔しくなるので嫌になるんですよね。
スペインは中央閉められているいるのに中央に行って自滅。
イングランドはサイド閉められているのにサイドに行って自滅。
日本はGKとCBの間閉められているのにそこにクロス入れまくって自滅。
こういうの、専門用語でサッカーインテリジェンスがないといいます。
ただ、このあたりからクロアチアもサッカーインテリジェンスがない攻撃始めるんですよ。
日本の右サイドは酒井のWBに変わったんですが、後半36分、そこに雑なインスイングのクロスいれてくるんです。酒井は本職のDFであり、クロス対応は万全です。インスイングのクロスで失点を許すような選手じゃありません。それなのに、クロアチアはそこにいれちゃうんです。その後もクロアチアはそんな攻撃を続けることになります。怖いのは三笘の所を狙ったクロスだけでしたが、右WBはすでに酒井です。そう簡単には抜けません。
後半42分、ポイチさんは疲れが見えていた堂安に代えて南野を投入。本当はここで久保を入れたいのです。コバチッチの裏にスペースがあるんだし。しかし久保はいない。ここに来て久保がいない事が響いてきます。南野では右サイドの攻撃は作れないんですよ。これで日本の交代カードは四枚目。
ここで双方のチームが攻め手を失いました。日本は攻め手がない。クロアチアもない。事故が起きない限り、これは延長戦です。そして、試合は延長戦に突入することになります。
日本対クロアチア、延長戦
もうこの時点で双方のチームが攻め手がない状態でした。クロアチアの頼みの綱といっていいコバチッチ、モドリッチは疲れが隠せなくなっています。左サイドの攻撃も右WBに酒井が入ったので難しい状態です。三笘も抜けてなかったのでクロアチアに唯一残った攻め手としては三笘の所になんとかしてクロスを入れる。それしかない。しかし、ポイチさんは伊東を右に動かしており、その対応をさせてますからクロアチアは難しい。
日本もそれは同じでした。交代カードは残り一枚でもう切れない。選手に託すしかない。そうなると、日本はほぼ三笘にかかってきます。そこしかない。だからクロアチアにガチガチに警戒されてて難しい。
お互いに残った攻め手は一枚のみ。当然警戒されるわけです。だからお互いに点取るのは難しい延長戦です。ミスしたほうが負ける。
そして最初にミスがでたのはクロアチアでした。
延長前半3分、クロアチアは雑なフィードを日本にカットされ、三笘がドリブルでボールをもって持ちあがる展開になりました。この時、日本のアタッカーは五枚。クロアチアは最終ラインの所で五枚。決定機になる奴です。ここで三笘は中央にカットインしていき、CFの浅野とのワンツーを試みます。
ところが浅野にボールが入りそうな所でクロアチアのCBが浅野を後ろから手で押して倒したんですよ、PA内で。
これで浅野がボールを受けることが出来ず、三笘とのワンツーは失敗。ワンツー成功してれば決定機でした。そしてファウルは勿論無し。ま、VARなんてこんなもんですよね。HAHAHA。このW杯、VARでどうでもいいプレーでPK与えるケースが散見されるんですが、こういうプレーは許されるみたいです。
全国のサッカー少年へ。PA内でCFがポストプレーを試みたら後ろから手を使って全力で押し倒せ!!!CFは手で押されても倒れちゃ駄目だぞ!!!
そういう事ですね。それが審判のジャッジならそれが全てです。でもプッシングでPK取る審判もいるからCBは気をつけてね。
そして延長前半9分。ここでクロアチアの監督は二枚替え。モドリッチとコバチッチを下げてインサイドハーフを二枚追加。この交代なんですけど、クロアチアはインサイドハーフが日本のボランチに行けなくなっていて、日本にボール支配されるような状況になってたんですよね、この時間帯。だから日本のボランチへのプレスを復活させたかったんでしょう。
クロアチアの看板ともいえるモドリッチ、コバチッチが下がりました。そうなるとですね、ポイチさん、柴崎を使っても良いんじゃ?となるわけです。相手の怖いインサイドハーフは下がった訳だから、柴崎を入れてゲームメイクさせるってのも手です。
前半14分、日本はカウンターから三笘が中央にカットインしてミドルを打つんですが、これはGKの守備範囲、そこから日本は波状攻撃かけるんですが、最後の守田のボレーは残念な形に。ここが延長前半二度目の最大のチャンスでした。
本当に日本は三笘次第なんですが、警戒されまくってて中々使えない。そういう展開です。
日本対クロアチア、延長後半
さて延長後半、ここでポイチさん、最後の交代カードです。守田に代えて田中碧。
うーん、ここが最後に柴崎を使うチャンスではあったんですが、ポイチさん、最後まで柴崎使いませんでした。そんなに練習でのパフォーマンスが低かったんでしょうか・・・・
クロアチアの監督はここで最後の交代カードを全部切ってます。日本に中盤にプレスがかかりきらず、危険な状態が続いていたので、前の選手を代えて中盤へのプレスを復活させた形です。こうなると日本の攻め手が更に難しくなるわけです。嫌な交代です。明らかにPK戦みてる交代です。
延長後半3分、最終ラインのロングフィードのこぼれ球を日本代表はクロアチア陣内で拾いました。バイタルで拾ったボールを左の三笘に展開、ここ、延長後半最大のチャンスになりました。
この所。大外で日本は一枚余ってます。延長後半は出オチです。ここで点取れなかったのが全て。日本は大外で一枚余っているんです。こんなチャンスもうない。そして三笘はパスを選択。浅野につけようとしましたが、CBにカットされて終わりました。
うん。三笘、自分で打て。「三笘は視野が広すぎた」とか海外で言われてたシーンですけどね、自分で打てよという奴です。打っていいんや。エゴが無さ過ぎる。打って良いんだよ三笘。
クロアチアのDFラインはPAの中央まで下がってるだよ。だったらミドル打ってええんや。打って良かったんや・・・
ミドルの精度云々の話しましたがね、あの位置なら自分で打って良いという話を最後にしたかったからです。
今回のレビューで言いたいのはココなんです。三笘、自分で打て。エゴ出していいんだ。クロアチアみたいな守備やるチームにはミドルで良いんだよ。
この後はクロアチアがサイドからクロス放り込む、日本はボール取ったら裏に浅野走らせるみたいな感じで泥仕合になり、最後はPK戦に突入。結果は皆さんご存じの通りです。
クッソ長くなりましたが、最後にエムバペの話
日本代表の今回の冒険は終わりましたが、選手たちのキャリアは今後も続きます。
最後にエムバペの話させてください。
自分はフランスのエムバペを現在世界最高の選手と評価してます。「止める手段がない選手」だからです。
Kylian Mbappé - All 52 Goals & 24 Assists in 2021! - YouTube
エムバペってスピードが異常なのでライン高くする守備は通用しません。動画みればわかると思うのですが裏にポーンと蹴られたらエムバペにやられちゃいます。誰もついていけないから。これが何を意味するかというとハイプレスとブラジル式守備は通用せんって事です。裏にスペースあったらエムバペに抜け出されるだけです。
じゃあ引いてスペース消す欧州式やればいいじゃん?と思いますよね。でも駄目なんです。エムバペはカットインドリブルとミドルがあり、強烈なミドル撃てます。ライン下げちゃうとカットインドリブルかミドルでやられます。対処のしようがないんですよ。対処のしようがないから2021年シーズンは52ゴール24アシスト。W杯で通算9ゴール。止める手段がないです。
フランス代表を相手に試合するならエムバペ対策はただ一つ。ジルーをフリーにしてジルーにシュートさせろ、以上です。それ以外ない。それじゃ勝てないだろって?エムバペにシュート打たせるよりジルーにシュートさせる方が得点期待値は低めですから、それ以外に俺は対策思いつかないです。
三笘、鎌田、遠藤、守田はワンランク上のクラブに行きたいなら、強力なミドルシュートを身につけないといけません、本当に。特に三笘には言いたいのですが、ビッグクラブに行きたいならミドルシュートのレベル上げないといけません。エゴもってシュート打て。パス選ぶ事が多すぎ。お前が決めろ、いいね?WGは強烈ミドルがないとライン下げられて終わりだからね。
視野が広く、パスがだせることは大事です。でも同じくらいミドルシュートも重要です。
今後の日本代表にはミドルシュートで点取れるWGとボランチがマジで必要なんです。いなきゃライン下げられてブロック作られて塩試合に持ち込まれてアジアカップですら相当苦戦します。このままだとね。
では皆さん、ごきげんよう。こんなクッソ長いエントリ読んで頂き、ありがとうございました。
2022年カタールW杯、日本対スペインの祝勝会、でなくレビュー
はい、勝ちましたね、皆さん。
今日一日ハッピーな気分でした。私です。こんだけ爽快な勝利であれば、別に国民の祝日とかなくても一日中ハッピーな気分なので十分です。素晴らしい勝利でした。
前回のエントリでも述べましたが、あれだけの悪条件の中でスペインに逆転勝利をおさめるというのは並大抵の事じゃありません。そんなわけですので、本日はあの試合のレビューを書いてまとめておきたいと思います。
試合の方はabemaで動画がいつでも見れます。
日本対スペイン、前半戦、日本代表の451守備ブロックについて
先にフォーメーションとスタメンから。
この試合、スペインのブスケツが出ないんじゃないかとか前情報があったのですが、この試合では普通に出てました。そしてスペインはお家芸の433。中盤のペドリ、ガビ、ブスケツは三試合連続ですね。違いはワントップにアセンシオでなくモラタ、右WGがウィリアムズだったって事でしょうか。
一方で日本はこの試合、最初から3421で入りました。ここまで日本は前半は4231から入ってたんですが、この試合では最初から3421です。これはいわゆる広島型ですね。ここ8年くらいかな、この形を採用するチームは増えてます。このシステムは前からプレスにいく場合は343、後ろに引いて守る場合は541、ボール持ってる時は3421となる可変式フォーメーションになります。
日本はこの試合、最初から伊東が右WBに入り、左CBには谷口が入ってます。前田のワントップに鎌田と久保の2シャドー。他はいつも通り。
でもって、この試合なんですが、つまらないと思いますが、最初は日本の守備の話から入ります。これは退屈な話かもしれませんが、この話は避けて通れません。
日本代表はここまでの二試合、前半の最初の10分はハイプレスを行ってました。しかし、この試合ではそれを行いませんでした。前半の入りからいきなり541を自陣で組んで守るという形で入りました。ここは正直言って「おや?」と思った部分です。いつもの日本代表らしくないな、と。ゲームの入り、いきなり「攻めてこい守ってやるぜ」という形から入ったんです。
この試合の守備のポイントとしては、
この円で囲った中盤の3枚、ブスケツ、ガビ、ペドリを試合から消すという戦術上の目的です。この三枚がスペインのポゼッションのキーです。なんでこの3人を試合から消したいかというと、この3人が簡単に前を向いてボール配給できる状態になるとコスタリカみたいな事になるんですよ。ブスケツからサイドに配給されても駄目ですし、ガビとペドリにバイタルで前向かれたら世界中のどんなチームだろうと守れません。この3人は試合から消す必要があるんです。
スペインの中盤三人を試合から消してしまう事、それがこの試合の前半の日本の戦術的目標でした。
さて、その為に日本がどういう事やってたかというと、まず前田にブスケツ見させました。これでブスケツを試合から消せます。次の問題がガビとペドリになります。この二人は通常であれば日本のボランチ二人とマッチアップしており、特に問題はないのですが、実際の所、この二人はちょっと引いてボール受けにくる事があります。この時に誰が見るか、結構気をつけないといけないんです。
なんでここで久保なのかって話なんですが、ここでね、田中碧が出てってしまうと、
スペインはこーいう動きしてくるんですよ。田中碧を前に引っ張り出して、空いたスペースにCFか左WGが入ってくるんです。そしてSBが高い位置を取る。ここで円で囲ったスペース、バイタルエリアというんですが、ここでWGかCFがボール受けて前を向ければそこから一気に決定機に持っていけます。前回のエントリで扱いましたが、これも所謂一つの「中盤のゲームメイクを使った戦術」です。コスタリカはこれでまんまとやられました。スペインに好き放題にバイタル蹂躙されてましたからね。
この試合なんですが、日本の前半の戦術目標は「スペインにバイタルエリアを使わせない」、ここに集約されてました。その為にはどうするべきか?答えは「出来るだけダブルボランチを中央から動かさない事」なんです。スペインはあの手この手で日本のダブルボランチを引っ張りだそうとしてきますが、それに乗ってボランチが引っ張り出されるとやられちゃうんです。
こういう戦術を取った結果、日本の前三人、つまり前田、久保、鎌田の守備負担は異常なレベルに膨らみました。つまり、常時二人の選手を見てないといけない状態になりました。
もうずーっとこんなんです。滅茶苦茶です。でもしょうがないんです。スペインはグループEでもっともバイタルを使うのが上手いチームであり、それに対抗するにはここまでやらないといけないんです。
さらに言えばボールがSBにでた時とかも
こんな感じで対応します。とにかくバイタルエリアの番人である日本のダブルボランチを動かされたくないんです。動かすとやられちゃうんです。逆にいえば、ダブルボランチがバイタルエリアにいる限り、スペインはそうそう中央使えません。
もうね、この試合、スペインは日本のボランチが動くと必ずその裏に入ってくる選手がいました。その裏に入ってくる選手は必ずケアしないといけない試合でした。3バックはその動きのケアに最新の注意を払っていた試合です。注意深く試合見てみてください。ボランチが出た後のスペースに入ってくる選手、CBが前に出て捕まえてます。これは徹底しないと絶対やられる奴です。
さて、これで最初の日本代表の守備ブロックの話は終わりです。
ちなみに、この守備戦術を取る代償は何かというと「前3人が異常に体力を消耗する」って所です。ずっと一人で二人を見てるような状態なんでどうしようもないのですがね。
一方で、この試合、日本では体力を温存できる選手も出ます。だれかというとWB。本田さんも解説で言ってましたが、スペインはゆっくりポゼッションします。後ろで回せる時はゆっくり回してサイドチェンジしてました。ポゼッションは8割方スペインです。そうなるとWBは後ろで対面の守備してるだけで良くてそんなに疲れないのですよ。ずーっと後ろで対面見てるだけでサイドをアップダウンする機会はそんなにありません。だから日本代表の二枚看板の片割れである伊東の体力は温存できるんですね。
ちょっと話題は反れますがね、この守備のやり方、やられるとクッソむかつくんです。ポイチさんが広島の監督やってた頃、時々アウェーの試合でやってたんですが、やられると一番ムカつくタイプの守備でした。本当にムカつくんです。やられるとバイタル取るのは殆ど無理で、サイドで勝負するしかなくなるからです。高確率で541ブロックによる塩試合に持ち込まれるんですよ。
見てて「前半は塩試合に持ち込む気だぜえ・・・」って感じでした。
ただ、スペインもやっぱり世界最高レベルのチームです。あっさりと先制しちまいました。前半11分にあっさり先制。これねえ、日本の守備ブロックで誰がどう考えても不味いポイントがありまして、右WBに入ってる伊東の所、あそこ狙われると困るんですよね。
日本の一失点目なんですが、日本の左サイドからファーサイドの伊東の所狙われたんです。日本は本職のWBじゃありません。クロスへの対応は難がある。サイドアタックされて、伊東がファウルでしか止められなかったり、あるいは逆サイドから伊東のところにクロス打ち込まれると困るんです。正直、伊東のWBは守備面で絶対に問題がでるってのはスタメン見た時から思ってた事で、前半11分の失点については、まあしょうがないかなと思ってました。あそこはしょうがないです。
前半から堅く行きたいなら、スペイン戦の前半は酒井使いたいんですよ。でも怪我で使えない。遠藤も使えない。冨安も使えない。スタメンの守備の要3人がいないのに、前半一失点で済んだ訳で、日本は前半、ほぼゲームプラン通りの試合が出来たと評価してよいと思ってます。
スペインの前半もゲームプラン通りです。ポゼッションは8割越えで一点リード。完璧ですね。一方で日本はポゼッションは2割。一点ビハインドですが、ここまではゲームプラン通りです。スペインに殆どバイタル使わせませんでしたから狙い通りの守備は出来てます。
日本対スペイン、後半戦の話
この試合、ポイチさんは後半始まると同時に切り札を投入しました。久保に代えて堂安、長友に代えて三苫です。
ちょっと早いんじゃないかと思いましたが、エースの三苫を後半頭から投入です。そして久保の交代については妥当でした。前半終了間際、abemaのマイクから「タケー頑張れー」って声が聞こえてるんですが、ちょっとね、久保は守備で問題がありましてね、見てて「おいおいそこのスペースは埋めなきゃ駄目だろ」って場所を空けちゃう事があったんです。「あれ、ひょっとして久保もうバテてる?」と思ってしまうシーンがあって気になってました。なのでフレッシュな堂安に代えたのは大変妥当な判断だったと思います。ただ、その代えた堂安がいきなりゴール決めるとは思いませんでした。
さて、この布陣、みればわかりますが、日本のWBは本職じゃありません。中央の守備は前半上手く行ってましたが、サイドの伊東と久保の所だけは怖かった。ところが後半頭から左WBは三苫です。スペインはこれ、サイドアタックしてファーにクロス上げれば良いだけです。そこに本職のDFはいないんだから、そこを狙えばいいだけなのですよ。
後半頭からポイチさんはリスクを取りました。勝負をかけるってメッセージです。塩試合はここまで。リスクを取ってでも点を取るってメッセージです。
そして後半頭、試合は大きく動くことになります。前半開始直後、日本はハイプレスをしませんでしたが、後半開始直後、日本はハイプレスをかけて前からボールを奪う守備に切り替えます。
驚いたことに、これがハマったんですよ。
日本の先制点、動画貼るのでこれで解説いれます。
動画2:34秒のところからですけど、鎌田、三苫、前田のプレスでGKまでボール戻させて、そこに前田がもうチェイスを入れます。ボランチへのパスコースは前田に切られていて、CBのところも堂安が狙っている。なのでGKは空いてるSBへのパスを選ぶんですが、そこにWBの伊東が自分のマーク捨ててプレスに出たんですね。これプレス抜けられたら大ピンチって事なんですが、ここは伊東はリスクを取りました。本田さんはここの伊東褒めてましたが、あそこの判断は本当に良かった。日本はギャンブルに勝ったんです。
そして2:44秒のところでボールがこぼれます。
ここでスペインにやらかしが出ちゃったんです。
堂安の所にボールがこぼれたんですが、そこにスペインのペドリが飛び込んじゃったんです。さらに背中を見せてターンしてしまうというおまけつき。これは絶対やっちゃいけない守備です。あそこは堂安の中へのコースを切って外に追いやらないといけないシーンなんです。
結果として堂安は中央へカットインしてミドルシュートをフリーで撃ち、これがキーパーのニアをぶち抜いて日本は同点。
まー、ペドリやっちまったというシーンですね、見返すとありえない守備でした。もちろん、堂安のシュートはスーパーでしたけどね。
そして立て続けに日本は得点を重ねました。
動画で4:25の所からですが、右サイドの高い位置で伊東がボールもてた所からです。
図でやると、こういう状況が出来ました。この時点ではスペインの守備に特に問題はありません。
で、この時、日本のボランチの田中碧がバイタルに走りこんだんですね。これもリスクのあるプレーなんですが、この時にペドリが、
カットインしてくる伊東に対して中へのコース切る守備やっちまったんです。そして田中碧のマークを捨てた。その結果、何が起きたかというと、
こうなるわけです。ドフリーの田中碧にパス出され、「バイタルエリアで日本のボランチがフリーで前を向く」という状況が突然出来ちまったんです。これ、もうスペインは大ピンチです。一人がおかしな守備やった事で、何でもない状況が突然ピンチになりました。伊東は右利きのWGです。右サイドから中へのカットインはそれほど警戒すべきプレーじゃありません。あそこは田中碧のマークを外してはいけないんです。
そして田中碧は堂安へのパスを選択。
ペドリは一つ前の失点で堂安に中にいってミドル決められてますから堂安の中へのコース切ってます。あの場所ではレフティの中を切って外に行かせて右足でのプレーを強いるのは当然なんですが、ここで大問題。スペインのシステムと日本のシステムのかみ合わせの関係上、大外で三苫が一枚余るんです。あそこにクロスが届いたらスペインはお終いです。
で、その通りの事が起きちまったんです。堂安はGKとCBの間にクロスを入れ、それはこの試合を象徴するプレーに繋がりました。
Sometimes you can't beat a good cover... tomorrow's The Game from @TimesSport pic.twitter.com/mIy0ADtQoK
— Tom Clarke (@_TomClarke) December 1, 2022
こいつです。今現在も議論を呼んでる奴。スペインとドイツは認めたくねーでしょうが、入ってますからね、コレ。インプレーです。三苫の折り返しのクロスを田中碧が決めて日本は逆転。
これで日本は2-1ですから、虎の子の一点を守りきれば無条件で突破確定です。あとは守るだけ。
後半、スペインが日本のサイドを狙ってくる事はわかりきってました。そしてポイチさんはそれに合わせて交代カード切っていけばいいだけです。主導権はこちらにある。そして、その通りの采配をポイチさんはやりました。スペインはサイドのアタッカーを交代で強化して、日本の両サイド、WBの所を狙ってきましたが、スペインの交代カードを見てから、ポイチさんは後半23分に鎌田を下げて右のWBに冨安を入れてスペインの右のサイド攻撃を封殺。これで日本の右サイドが突破されて三苫のところにクロスいれられる可能性はなくなりました。
唯一ポイチさんが怖いのは三苫がぶち抜かれる事や三苫が対面止められずにファウルしてしまい、FKやCKから失点する事位でしたが、三苫はサイドの一対一では負けなかった。これはマジででかかったです。
ただ、後半15~40分あたりは、試合そのものより、ドイツ対コスタリカの試合の経過情報のほうが面白かったです。後半13分にコスタリカが同点、後半25分にコスタリカ逆転という激アツ展開。ここで「スペイン、ドイツの同時予選敗退」というまさかの状況が生まれてました。
twitterのTLが物凄い熱気に包まれており、「スペイン、お前予選敗退するのか?」という異常な状況。この状況は日本にとってはうれしくないのです。スペインが最後にギャンブル仕掛けてくる可能性が出てくるので。個人的には「ドイツ、クッソ役にたたねぇ!!」と毒づいてました。
そして、後半28分にドイツ同点ゴール。ここで再びスペインの二位通過が復活。これでスペインは終盤にギャンブルしなくてよくなったんですね。
ここで又ドイツがリードされたら、もうTLが爆発してましたが、この後はドイツが立て続けにゴール決めていって最終的に4-2に。ドイツは二点リードであればスペインが日本と引き分けてくれたら得失点差で突破できたので宿題は済ませました。
もし、コスタリカがリードを保ってたら、スペインはギャンブルに出たでしょうが、何もしないでも二位通過は確定してたのでスペインはギャンブル無しで試合を終わらせました。日本は一位通過。どちらにとっても良い結果でしたね。日本は突破できれば良かったし、スペインも二位通過できればブラジルと違う山に行けるし、初戦はモロッコです。クロアチアよりやりやすい相手です。
悲惨だったのはドイツです。スペインが負けてる以上、ATに6点入れないといけなかったのですが、それは不可能だろって話で。
本当に後半は面白かったです(月並み
次はベスト16なんですが
タイトルで祝勝会とか言ってますが、個人的には「もう十分勝ったから後はボーナスステージ(はぁと」という状況です。
W杯優勝国の二つをぶっ倒しての16強進出です。もう十分楽しませて頂きました。あとはボーナスステージという気分なのですね。自分はあとは気楽に見ます。