2012年2月26日夜7時頃、フロリダ州で、17歳のアフリカ系少年トレイヴォン・マーティン君が射殺された。
犯人はケンドー・コバヤシ似のジョージ・ジンマーマン(ペルー系)。
警官に憧れ、半年ほど前から拳銃を携行して近所を勝手に見回りしていた私設自警団の一人だった。
トレイヴォン君は喉が渇いたので、父親の家を出てコンビニに行き、アイスティーとキャンディを買ってまた家に帰る途中だった。携帯とアイスティーとキャンディと携帯しか持っていなかった。
彼はフードつきのパーカーを着て、フードをかぶっていた。
ジンマーマンは自動車で近所を走りながら、トレイヴォンを見つけ、犯罪者と推測し、車を降りて、拳銃を持って少年を尾行し始めた。
トレイヴォン少年は、ガールフレンドに携帯で「どうもさっきから誰かに後をつけられている」と伝えた。
ここから先はジンマーマンの証言以外に何も確かなところはわからない。
トレイヴォン少年は振り返って尾行してきたジンマーマンに「何か問題あるのか?」と言った。
その際、ジンマーマンは拳銃を背中側に隠しており、トレイヴォンには拳銃を持っているのが見えなかった。
ジンマーマンは「銃を持っている」などと警告していない。
それがあれば、トレイヴォンは抵抗しなっただろう。
つかみあいになり、ジンマーマンは周囲に聴こえるよう悲鳴を上げた。
そして銃を出してトレイヴォンの胸を撃った。
その際もジンマーマンは「撃つぞ」などと警告したり、威嚇射撃などはしなかった。
フロリダの陪審員は、ジンマーマンを無罪とした。
過去に起こった日本人少年射殺事件では、自宅をノックした少年(武器不携行)を背後から射殺して無罪になった。
根拠となったのは、個人の家は城と同じであり、その内部に入った者が撃たれても仕方がないという法律が、銃所持者が多い南部にはあるからだ。
その後、Stand Your Ground(立ち位置を死守せよ)という法律が、南部各州で施行された。
それは家の外でも、立っている場所が家と同じであり、そこを守るために銃撃も許されるという法律だ。
正当防衛について、それまでの法律には「回避義務」というものがあった。
逃げられる場合は逃げよ。逃げられるのにそこに残って銃で撃ったなら過剰防衛になる。
ところがStand Your Ground法によって、回避義務がなくなった。
逃げないで、相手を撃ってもよくなったのだ。
この州法によってジンマーマンは無罪になったが、逆にいえば、この州法が無い地域だったら、
回避どころか自分から絡んでいったジンマーマンは有罪だったろう。
そもそも、ジンマーマンがトレイヴォンを尾行しなければ、何も起こらなかった。
ジンマーマンが銃を持っていることをトレイヴォンに示していれば、彼は殴りかかってこなかった。
ジンマーマンはトレイヴォンを尾行し、それで彼を怒らせ、銃を持っていることを隠して、トレイヴォンの暴力を誘った。
銃を見えないように携行することも、州によっては違法である。
この判決で、拳銃を隠し持って誰かの後をつけ、その人を怒らせて暴力を誘発し、そこでいきなり撃ち殺しても、罪に問われない前例ができてしまった。
ウィクレフ・ジーンはこの判決に抗議して「ジャスティス(正義)君が17歳なら」という歌を発表した。
君が17歳で、フードつきのスウェットを着ていたら
君が携帯で、彼女と話するのに夢中になってたら
気を付けるんだぞ
君のような男の子はどんな街にも大勢いる
あの話を知ってるだろう
あいつは背後から音もなく近づいてきたんだ
君がこの世を去るべき時よりも早く
あいつはバンバンと撃ってくる
あいつは「私は怖かったんです」と証言するだろう
だから君を撃ち殺したんだって
17歳で無意味に殺されたトレイヴォン君は
もしかしたら次の大統領になるかもしれなかった
スティーヴ・ジョブスみたいになるかもしれなかった
宇宙飛行士にだってなったかもしれなかった
だから僕らは正義のために力を合わせよう
僕らは負けないぞ、自称自警団よ
君が17歳なら、自称自警団に気を付けろ
君が安全な住宅地にいて
運悪く自称自警団と出くわしたら
彼女への電話は、それが最後になるかもしれない
自称自警団め