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■アメリカのドッキリ番組は、現実を直視させる


 「モニタリング」(TBS系)というドッキリ番組では、芸能人に幽霊(もちろん役者)を見せて驚くようすを面白がったり、素人の自宅に芸能人を呼んでとまどう姿を面白がらせてる。
 日本のテレビ番組制作者には、「とにかく芸能人を出さないと数字(視聴率)がとれない」という思い込みがあるようだ。
 しかし、同じ時代を生きていながら、アメリカでは『What Would You Do?』(おまえだったらどうするよ?)というドッキリ番組が制作され、人気がうなぎ上りになり、Youtubeではそれに日本語字幕をつける人が出てきて、密かなブームになっている。

 すでに観た人もいるだろうが、未見の方はYoutubeに飛び、「wwyd」と「日本語字幕」の2語で検索してみよう。
 日本のドッキリ番組と大きく違うことに、まず驚くはずだ。
 とにかく1本、観てみようか。
 たった約9分間の番組だ。



 日本でホームレスをテレビ画面に映すのは、ドキュメンタリー番組ぐらいだ。
 テレビ業界全体で、ホームレスの話題をドキュメンタリー番組の枠内に押し込んでるような印象すら受ける。
 しかし、上記のアメリカの番組では、ホームレス役の役者が飲食店に入ってくると、役者ではない一般の客たちがそれぞれ異なる態度を見せる。
 これが現実だ。
 しかも、バラエティ番組として知的な好奇心を刺激する。
 なぜ、これと同じ番組が日本では作れないのか?

 日本のテレビでは、素人にカメラを向ける際、その素人がいかにもバカな女子高生だったなら、彼女に料理をさせ、その料理がおそろしくバカな方法であることを見せ、ディレクターと女子高生が一緒に笑ってみせることで「番組として成立させる」。
 成人式で暴れる田舎のヤンキーにカメラを向けるのも、同様。
 つまり、最初から見下ろせる相手を限定してカメラを向けることで、番組制作者自身が安心して作れる差別的な方法を平気で採用してしまっている。
 それゆえ、一般市民と向き合い、どんな素人にカメラを向けても番組を成立させる度胸とスキルが、日本のテレビ番組制作者には乏しいのだ。
 その結果、僕ら日本の視聴者は、子ども騙しのような番組ばかり見せられ、現実から目を背けさせられている。


●報道より予算の多いバラエティこそ現実を浮き彫りにせよ

 日本の番組制作者には、現実にある問題を正面から捉える覚悟がない。

 だから、LGBTの当事者も平気で笑い者に仕立てあげる。
 それが大きな人権侵害であることを、笑いでごまかしてしまうのだ。
 そこで、「おまえだったらどうするよ?」で子連れのレズビアンカップルが飲食店に入ってきた回を観てみよう(7分間ちょっと)。



 この映像には、ドッキリ番組を越えた感動がある。
 実際にレズビアンである女優をキャスティングしたところにも、番組制作者の現実から目を背けない意思を感じる。
 いろんな意見があっていいし、差別を自覚したなら改めればいい。
 そういう番組制作の方針を日本のテレビ局も分かち合えるなら、堂々と一般市民にカメラを向けてほしい。

 もっとも、東京キー局であるNHK、Eテレ、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日には無理だろうと考える人は少なくないはずだ。
 それなら、テレビ東京が率先して、この低予算で制作できるドッキリ番組を作って、視聴率をとってしまえばいい。
 テレビの視聴率自体がどんどん落ち込み、広告収益の増収が危ぶまれているのだから、テレビ東京が低予算で視聴率を取れば、他局もどんどん同様の番組を作るようになる。
 実際、海外の日本人を訪ねて行く番組や、日本の伝統技術を外国人が驚いて評価する番組などは、テレビ東京が真っ先に作って数字をとったから他局もどんどんパクるようになったものだ。

 最後に、黒人が住宅を買うのを嫌がる白人の不動産屋に対して、地元市民がどんなリアクションをしたかを伝える番組を紹介しておこう。
 日本ではいまだに、連帯保証人がいなければ外国人・未成年・女性に賃貸物件を貸さない。
 買えないどころか、貸してもくれないのだ。
 人種だけでない多くの差別が当たり前にある現実に、僕らはあまりにも慣れすぎてしまっている。
 下記の映像は、自分の意志を伝えることがどれだけすべての人の尊厳を守るために必要なのかを教えてくれる。



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