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2014.02.26
“コードを書かない選択”で生まれる価値|ヤフーCMO 村上臣のエンジニア論

“コードを書かない選択”で生まれる価値|ヤフーCMO 村上臣のエンジニア論

ヤフー社CMOの村上臣氏へのインタビュー第二弾。『エンジニアとして、いかに業界をサヴァイブしていくべきか』というテーマのもと、村上氏の考える「これからのエンジニアの可能性とキャリア」について話を伺った。

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▼ヤフー CMO・村上臣氏へのインタビュー第1弾
ヤフー CMO 村上臣の“イマ”を支える3つの転機。

エンジニアとしていかにサヴァイブしていくか

WEB・IT業界の黎明期から今なお第一線で活躍するリーダーは、自らのキャリアから後進に何を伝えるのか?

今回お話を伺ったのは、ヤフー社CMO(チーフモバイルオフィサー)村上臣さん。

移動体通信とプログラミングというバックグラウンドを持つ彼は、学生時代に電脳隊を立ち上げ、新卒で野村総合研究所に入社。その後所属していた、ジョイントベンチャー・PIM社がヤフー社に買収されたのを機に、ボーダフォンジャパン(現ソフトバンクモバイル)やヤフーのモバイル戦略を率いてきた人物だ。

インタビュー第二弾となる本稿では、『エンジニアとして、いかに業界をサヴァイブしていくべきか』というテーマのもと、村上さんの考える「これからのエンジニアの可能性とキャリア」について話を伺った。

技術的バックグラウンドを活かす仕事

― 数々の転機があり、全てがいまの村上さんの“糧”となっているとのことですが、手を動かすエンジニアというより、企画や組織をつくったりマネジメントする、プロデューサー・ディレクターの側面が強いようにも感じます。


村上臣氏

ヤフー CMO 村上臣氏

改めて思っているのが、エンジニアの能力をプログラミング以外で発揮すると非常に大きな価値になるということです。

例えば、僕はちょっと特殊な仕事も経験してきています。ヤフーは様々な買収案件がある会社なのですが、技術的なデューデリジェンスを行なうことで、対象会社の技術に値段を付けなきゃいけないことがあるんですね。

普通は社内の経営企画の人だったり、外部コンサルのアドバイスがあって成り立つもの。でも何故か僕に声がかかるようになって(笑)、対象会社に出向いてコードを見て、エンジニアのレベルを判断して資料にまとめたりしてました。

人材・技術の獲得が買収の主目的に入っていると、ヤフーにフィットするのか、本当に使えるのか、そしていくらまでなら払えるのか。わかりやすく例えると、不動産鑑定士みたいな仕事ですね(笑)。

もちろん専門的な勉強も必要でしたが、エンジニアとしての技術的なバックグラウンドを別の仕事にうまく活かせることができました。

社内外のメンターを意識的に獲得せよ

― より「エンジニアのキャリア」にフォーカスを当ててお話を伺いたいと思います。エンジニアが日頃から自身のキャリアについて意識すべきことはありますか?


バードビューの視点は、常日頃持っておくべきですね。

波に例えてお話すると、日常の業務、つまり進行形で波に乗っているときは100%集中した自分自身でいるべき。しかし、一歩引いた立場で自身の状況を俯瞰して見る意識をすべきだと思います。

そうすると、なんとなく盛り上がってるカテゴリ・ダウントレンドになっているカテゴリが分かってくると思います。


― 自身のアンテナをより高めるためにはどうしたらいいのでしょう?


社内外の先輩・メンターのネットワークを作ることですね。自分以外の信頼する人のアドバイスを受けられる環境は非常に貴重です。まずは自分が“すごい”と思う人には会いに行くべき。ソーシャルネットワークもあるし、イベントもたくさん開かれているので、チャンスはいくらでもあるはずです。

僕の印象ですが、名の通ってる方、すごい経歴を残している方ほど、自身の先輩に対して恩を感じています。そして彼らは、その恩を自分の後輩・後進に対して返そうと、本気で思っているんですね。

だから、熱意でもなんでもいいから素のままで、自身の魅力や人となりをアピールすべき。今の時代、友だちの友だちの友だち…までなら会えますよ(笑)。

その意識を持ち続けると、新しいつながりが出来て、いろんなコトに誘ってもらえたり、人生で迷った際に貴重なアドバイスが貰えるようになる。その中で精度を高めて取れるチャンスを取っていくことが重要かなと。

事業の撤退戦に付き合うことで得られるもの

― 転職という括りでいくと、エンジニア職は業界の拡大とともに需要過多の状況が続いています。


確かに乱暴なオファーも多いと聞きます。ただ僕自身はエンジニアの価値が高まっていることに関しては、非常に良いことだと思います。

転職を考える際にやってはいけないことの一つが、「小さな波も乗りこなせないのに、次の大きな波に行ってしまう」こと。それでは身につくものは何もないです。



違った視点で考えると、事業の成否と自身のキャリアは別物なんですよね。成功した事業に携わる経験は確かに貴重です。しかし、重要なのはどんな役割で何を成したか。失敗する事業というのは山ほどありますが、事業の失敗・撤退戦に付き合えるのことは、すごく貴重な経験なんです。

特にエンジニアは、サーバーを撤収したりいろんな声を聞いたり。アクセスログとかリアルに見ているのですごく実感するんです。僕もヤフーに買われて自社のサービスを閉じたんですが、データセンターにいってラックを解体する時は非常に感慨深かったですね。ほとんど徹夜仕事だったんですが、一緒にプロジェクト進めたエンジニアとプロジェクトを振り返ったり、次も一緒に頑張ろうと誓ったり。モノ創ってるからこそ味わえる体験。そういうところは逃げちゃいけないと思いますね。


― 特に今、エンジニアが引く手数多な状況下では。


そもそもエンジニアってお金だけじゃ続かないんですよね…。みんなモノ創りをしたくてエンジニアになったはずなんですよ。年収が一気に上がって転職するってなると、大概すぐ終りが来るし、いいことってあまりないんですよね。

確かにジョブホップするのも、ひとつの生き方だとは思います。でも個人的にはおすすめしてないですね。待遇面の向上で転職するのであれば、年収換算で決めるのではなく、固定給を下げてストックをもらうとか、自身の発揮した能力に応じて賞与をもらうとか。仕事とリンクしたパッケージを求めるべきではないかと思います。オファーが過多になっている現状を捉えると、そこはしたたかにいくべきなのかなと。

利益責任を持ち、事業が見れるエンジニアが最強

― それでは最後に、村上さんの考える「いま最も価値のあるエンジニア像」について伺いたいと思います。


営利企業で働かれている職業エンジニアでいうと、“お金・利益”の視点はめちゃくちゃ重要です。一方で、職人肌でコーディング極めたいっていうエンジニアにとっては研究開発をやっている企業やアカデミックな世界に行ったほうが幸せかもしれないですね。

利益を生む人間は絶対に食いっぱぐれない。エンジニアリングができて利益を生める人間は絶対にどの会社も大事にするはずです。

それを最近の言葉で『グロースハッカー』と呼ぶのではないかと思っています。小手先のTipsはあるかもしれませんが、シンプルにグロースハッカーとは「利益を生めるエンジニア」だと思うんですね。

利益=売上-コスト。広告宣伝費を乱暴な方法で使えば、売上はトップラインで伸ばせます。しかし利益を最大化させるには、売上を最大化し、コストを最小化しなければいけない。バランス感覚が必要です。

だから、グロースハッカーはクライアントサイドだけの話ではないんですね。クラウドサーバ使うにしても、最も効率よくトラフィックをさばいて、安定を確保しつつコストを最小限に抑える。こういう思考法をもてるエンジニアは絶対に重宝されます。


― 例えば、どんな人が当てはまりますか?


nanapiのわだっぷ(nanapi社 取締役 執行役員 CTO・和田修一氏)はまさにそのタイプかな。彼は経営と技術、どちらも高いレベルで理解・実践してるから、けんすう(nanapi社 代表取締役・古川健介氏)は絶対手放さないよね(笑)。

繰り返しになりますが、「エンジニア=コードを書いてます」っていうのはあくまでも1パートにすぎないんですね。エンジニアも成長すれば自ずと事業に関わる。事業が見れるエンジニアをみんな目指すべきです。事業を語り、利益責任を持てるエンジニアが最強ですよ。

結局のところ、企業から求められるエンジニアは、ユーザーからも求められると換言できるんじゃないかな。ユーザーのことを考えると、良いサービスをずっと享受できることが一番大事。つまり、事業継続性が最も重要で、そのためには利益が必要という話なんです。

こんなふうにサービスのエコシステムを語れるエンジニアをヤフーでも求めてるので、ご興味ある方は是非応募してみてください(笑)。



(おわり)

[取材・文] 松尾彰大



編集 = 松尾彰大


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