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Windows Webマガ編集長の独り言。だからどうした?

伝説のプログラマ、カトラー氏はなお健在だった

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前回ともちょっと関係があるお話。

今から13年前の1992年、月刊雑誌のヒラ編集者時代だったときのこと。私は幸運にも、DEC VAXのOS、VMSの開発者で、後にMicrosoft社に移籍して、Windows NTの開発を手がけたデビット・カトラー(David N. Cutler)氏にインタビューする機会を得た。Windows OSの父といってよい存在の、伝説のアーキテクト&プログラマだ(古い雑誌をお持ちの方は、月刊スーパーアスキー 1992年10月号を参照)。

時はWindows NT 3.1開発の最終段階に入っていたところで、一部のユーザー向けにベータテストが開始され始めたころだ。

インタビューが始まる前は、どこにでもいそうなアメリカのおじさんという感じだったが、いざインタビューが始まると、とたんに目つきが鋭くなり、OS開発にかける思いや新OSの自信のほどを熱く語りだした(いまにして思えば、記者になど話してはいけない秘密もたくさんあったような気がする)。

Windows NTのアーキテクトであるカトラー氏は、てっきり概要設計やプログラマのマネージメントが専門で、実装などは無縁なのかと思いきや、カーネルの奥深くにあるコア・ルーチンの多くを自身で実装していると聞いて驚いた。質問に答える面持ちは、「こんな大事なものを誰にまかせられるというんだ?」といった表情。いま原稿を書いているWindows XPでも、カトラー氏が実装したコードが常に実行されているんだと思うと感慨深い。上流デザインもさることながら、完成したソフトウェアのコストパフォーマンスを左右するのは、実装によるところが大きいと思う。

時は流れて現代。

先日、とあるマイクロソフト主催のパーティで、同社で長年開発者として働き、米本社の開発者と、日本とを橋渡ししてきた人物とお話しする機会を得た。仮にここでK氏としよう。

私:「私はその昔、デビット・カトラーさんにインタビューしたことがあるんです」
K氏:「へぇ、そうでしたか」
私:「13年も前の話です。カトラーさんはもうMicrosoftにはいらっしゃいませんよね?」
K氏:「とんでもない。今でも現役のプログラマとして、64bit Windowsのコアをゴリゴリと開発していますよ」
私:「えぇっ! あの伝説のプログラマ、カトラーさんが第一線でコードを書いているんですか!」
K氏:「そうです。本当は私も現場で開発がしたいんですが…。まったく、うらやましいかぎりですよ」

何と彼の伝説は過去のものではなく、いまなお新たなる章が書き加えられていたのだった。

優れた実装には、実装ならではのクリエイティビティがある。彼のプログラマとしての生き方がそれを実証していると思う。

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