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知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

「ポケットU」についてもう少し詳しく検討してみる(1)

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NTTドコモの「ポケットU」に関する前回のエントリーやはてブのコメントを見ると「カラオケ法理」を知らないで議論している人がいるようなのでまず説明しておきます。

カラオケ法理とは、「店がカラオケ機器を提供・管理し、客のカラオケ歌唱により店が盛り上がって利益を得ているのであるから、客がカラオケで歌っていても、店が歌っているのと同じにする(歌唱の主体は店)」という理屈です。重要な点は、店の管理の度合いと利益を得ているかどうかがポイントとなるということです。

なお、Wikipediaのカラオケ法理の項目には「店側は『著作権を侵害しているのはカラオケ機器を利用して歌を歌う客...』と主張した」と書いてありますが、これはちょっと不正確です。客が歌う分には著作権侵害行為は発生しません。入場無料・ノーギャラ・非営利での上演は許諾なしに行なえます(そうでなければ、銭湯で歌を歌うのにもJASRACの許諾が必要になってしまうので当たり前)(著作権法38条1項)。そこを「現実には客が歌ってるけど店が歌ってるのと同じ。店は営利行為をやってるので著作権侵害」という強引な理屈で侵害に持って行ったわけです。適法な行為に間接的に関与しているだけで違法とされ得るわけです。この辺については、小倉弁護士のブログ・エントリー参照ください。

過去にカラオケ法理が適用された事件として、ファイルローグ事件がありました。ファイルローグとはNapsterみたいな中央ディレクトリーがあるタイプのP2Pです。P2Pを使って許諾なしにファイル交換をやっているユーザーが著作権侵害をしているのは当然ですが、この事件ではソフトとディレクトリーを提供している会社が著作権侵害をしていると認定されました。実際には、ファイル交換は個々のユーザーが自分の所有するパソコンを使ってやっているわけですが、ファイルローグの提供会社がサービス全体を管理して、ソフトウェアも提供しているので、カラオケ法理が適用され、会社が許諾なしに公衆送信しているのと同じとされたわけです。実際のファイルの置き場所や機器の所有者には関係なくカラオケ法理が適用され得ることがわかります。

前述のとおり、カラオケ法理が適用されるかどうかのポイントは、サービス提供者の管理の度合いと利益を得ているかどうかです。一番極端な例ですが、ユーザーが汎用の機器(VPNルーター等)やソフト(mobile2pcやVCN等)を自分で買って自分で運用している分には、ドコモは回線を提供しているだけなので、カラオケ法理が適用されてサービスの主体となることはないでしょう。ロケフリを自分で買って自分で使う分にはまったく問題ないのと同じです。

これに対して、サービス提供者が専用ソフトを提供したり、サービス料金をユーザーから徴収したりしているとカラオケ法理が適用されてサービス提供者が送信の主体となる(ゆえに、公衆送信権の侵害とされる)可能性が高くなってしまいます。

(続く)

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