結構な頻度で、ウェブ上の求人に「優しい先輩が、懇切丁寧に指導します。」と言った謳い文句で求人が出されている。

 

これは、取りも直さず、「懇切丁寧に教える組織」は、求職者にとって価値が高いようにみえることを意味する。

しかし、逆説的なようだがこの「懇切丁寧な指導」が、結構な割合で人をダメにするのだ。

 

理由は3つある。

 

1.「教えてもらえる」に慣れてしまう

懇切丁寧に教えることのできる技術、というのは、かなりの割合で「標準的なやり方」「正解のやり方」が確立してしまっている作業である。そしてそれは多くの場合、だれでもできる簡単な作業であることが多い。

初心者のうちはこれでも良い。

だが、有能な人材とは「やり方がよくわからないものを、工夫してやりきる能力」が高い人材であり、もっと言えば「何かのウマいやり方を生み出せる人物」だ。

 

だが「懇切丁寧に教えてもらうことに慣れてしまった人」は、「自分で工夫してやって」と言われると、かなり戸惑う。そのため、

「やり方がわからない仕事はできません」

「イメージが湧きません」

と、仕事が止まってしまう。

 

つまり、「懇切丁寧に教えてもらえること」はむしろ例外に属する事項だと認識しておかなければならないのだが、時に「教えてもらえること」に慣れきってしまうのである。

 

2.教えないほうが人を育てるケースがある

人は「教えること」が大好きだ。「教育関係に携わりたい」という人が大勢いることからも、それはわかる。

だが「教えること」と「相手が成長すること」は、全く別の次元にある。時に「明示的に教えないほうが良いこと」もたくさんある。

 

例えばコンサルティングの仕事では、「顧客にやり方を示さない」という手法がよくとられる。

「やり方を教えてもらうために、お金を出して雇っているのでは?」と言われることもあるが、話はそんなに単純ではない。

 

よく人を育てる人は必ず知っている事実なのだが、殆どの人にとって「教えてもらったやり方」は、自分のやり方ではないので「実行しない」のだ。むしろ「自分で考えて、生み出すように仕向ける」のが、ほんとうに人を育てる人のやり方である。

したがって、当事者の感覚では、よく人を育てる人は「懇切丁寧に教えている」ようには見えないことも多いのだ。

 

3.教えるほうが「頼られたく」なってしまう

実は多くの場合、「丁寧に教える」ことはとても気持ちが良い。「頼られる」ことが大きな充実感を生むからだ。

もちろん、この充実感が先輩にとってはきちんと教えようというインセンティブとなるのだが、極端な話、これが行き過ぎると「頼られること」が目的化し、相手が一人前にならないことを望むようになる。

実際「よく人を育てる人」は、「人を育てることは、すごく寂しいことですよ」とよく言う。

 

私の知る、ある教師はいつも言う。

「もちろん教え子が巣立っていくのはとても嬉しいですよ。でも、いつも「私を必要としなくなっていくこと」を人の成長のゴールに置くのは、寂しいことです。もう慣れましたけどね。」

 

 

優しい先輩が、懇切丁寧に教えてくれるのは、実はそんなにありがたいことでもない、と思っておくくらいが丁度よいのだ。

 

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(Nicolas Alejandro)