1977年生まれ、名古屋工業大学工学部社会開発工学科卒業。マンション施工の現場監督を経験したのち、葬儀社を経て、編集プロダクションに所属。2007年に独立し、現在はフリーランスのライターとして活動している。ITmedia PC USERでは「古田雄介のアキバPickUP!」などを連載。近著に『中の人 ネット界のトップスター26人の素顔』(アスキー・メディアワークス)がある。自ブログは「古田雄介のブログ」。
厚生労働省の人口動態統計によると、2011年に亡くなった日本人は125万人を超える。これは全人口のおよそ1%に達する値だ。100人に1人。その1人がインターネットにブログやSNSのページ、写真やイラスト、あるいは口座や有料サービスのIDなど、何らかの痕跡を残したまま亡くなることは、今の時代、よくあることだろう。
では、それらの遺産はどのように扱われるのだろうか。そして、死後も本人や遺族が意図するように扱えるようにするには何をすべきなのか。この疑問を明らかにすべく、さまざまな現場の声をもとに「死とインターネット」の現状をリポートしていきたい。第1回では、国内のブログやSNSサービスの現状を探ってみよう。
個人の“遺産”の中でもブログやSNSなど比較的オープンなものなら、誰でも簡単にアクセスできる。検索ボックスに「管理人が亡くなったサイト」などの言葉を入力してクリックするだけで膨大に見つかるはずだ。
しかし、それらをよく見ると、管理が行き届いた“お墓”もあれば、スパム書き込みなどで荒れ放題になった空き家、すべての動きが止まったゴーストタウンのようなWebサイトなど、複数のタイプに分かれると気付くはず。さらに、切れたリンク先から、すでに姿を消した別のWebサイトの存在も思い出すかもしれない。
管理人が不在になったという出発点は同じなのに、なぜそうした差が生まれるのだろう。
近年は、TwitterやFacebookが亡くなったユーザーを遺族や知人が通知する機能を追加するなど、会員の死後を想定したサービスを盛り込む動きが世界的に生まれている。だが、国内向けのブログやSNSではそこまで踏み込んだサービスを提供するところはまだない。
利用規約を見ても、会員の死亡時の対応について明記していない場合が多く、業界全体で標準的な対応法のようなものはまだ固まっていないのが現状のようだ。
サービス | 死亡時の言及 | 規約の詳細 |
---|---|---|
アメーバ | ○ | 運営側の裁量で退会を含めた措置ができる(第7条) |
エキサイト | ○ | 会員死亡を知り得た時点で、削除申請があったものとして取り扱う(第11条) |
ココログ | ○ | 会員死亡を知り得た時点で、削除申請があったものとして取り扱う(第12条) |
Yahoo! JAPAN | △ | 長期間更新が滞り、連絡がとれない場合は運営側の裁量で削除することもある(投稿などの削除、サービスの利用停止、ID削除について) |
mixi | × | 言及なし |
はてな | × | 言及なし |
livedoor Blog | × | 言及なし |
Seesaa | × | 言及なし |
では、会員が死亡した時、現場ではどんな対応をしているのだろうか。死亡時の措置について利用規約に明記していないlivedoor Blogの場合、「ご遺族様からのご連絡により確認しております」(NHN Japan広報)とのことで、能動的な確認は特に行っていないという。遺族からの連絡もまれで、過去半年の当該対応は0件。ほぼノータッチに近い状況だ。
規約上、会員死亡後に退会措置がとれるアメーバブログも「我々が積極的に退会処理に動くことは一切ありません。規約としてはあるものの、それが適用されるケースはほぼないと考えていただいていいのかなと思います」(Ameba広報)と語る。こちらも、遺族や関係者から削除の要望を受けた場合のみ、身元照会をした上で処理するというスタンスで、その実績はサービスを開始した2004年から2012年現在までで1ケタという。
SNSは少し事情が異なるようだ。mixiの場合、ユーザーが死亡しても能動的に削除に動くことはないが、一時的に非公開の措置をとるケースはあるという。
「mixiはプライベートなコミュニケーションの場であることに重要な価値があると考えています。そのため、例えばニュースで報じられるような事件や事故に巻き込まれてしまった方など、普段のプライベートな場とは別のところで話題になる危険がある場合は、一時的に該当ページを非公開にする可能性があります」(ミクシィ広報)。ただし、その場合もページを抹消するわけではないため、遺族などから要望があり、規定の手続きを取れば、復活させる(または完全に削除する)こともできる。
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