昨今のWebブラウザのトレンドはずばり「高速化」。最新のブラウザにページを読み込ませ、実際の速度を測ってみよう。
ここ最近、Webブラウザ戦争と言っていいほど、各陣営のメジャーバージョンアップが盛んだ。HTML5やCSS3への対応に加え、省スペース化の傾向が目立つインタフェースも話題になることが多い昨今のブラウザだが、ユーザー側からしてもっとも大きな注目点はずばり「高速化」ではないだろうか。
近ごろメジャーバージョンアップが行われたブラウザ、具体的には「Firefox 4」や「Internet Explorer(IE)9」はいずれも特徴の1つとして「高速化」を掲げている。なぜ各社は、こぞって動作の高速化に注力するようになったのか。その原因が「Google Chrome」にあることは、ほぼ間違いないだろう。
2008年9月に登場し、いまや全世界で10%以上のシェアを持つに至ったGoogle Chromeは、GmailやGoogle Readerを読み込む際に独自の高速化プロトコル「SPDY」を採用するといった、自社サービスならではの高速化に取り組んでおり、これらサービスを利用するユーザーにとっては大きなインセンティブとなっている。
豊富なアドオンでIE追撃の一番手にいながらGoogle Chromeの登場で足踏み状態のFirefoxは、最新バージョンである「Firefox 4」において、前バージョンの7倍以上と言われる高速化をアピール。機能重視よりも軽さを前面に出した戦略に転換し、巻き返しを図っている。
またライバルであるIEも、日本語版IE9の4月26日公開を控え、HTML5やCSS3など標準準拠に加え、GPU連携などによる高速性をアピールしている。
一方、従来から高速性には定評があったものの、拡張性の面で他のブラウザに一歩劣っていたOperaも「Opera 11」からは待望のエクステンションに対応し、さまざまな機能拡張が行えるようになった。
まだ数は多くはないものの、携帯電話やスマートフォンとの連携も含めて愛用者が多いだけに見逃せない存在だ。またシェア上はIEやFirefoxを追う立場にあるGoogle Chromeもエクステンションが急速に増加しつつあり、弱点と言われた拡張性の面で先を行くFirefoxにじりじりと迫りつつある。
ところで「ブラウザが高速」といっても、その内容はさまざまだ。純粋にレンダリングが高速な場合もあれば、何十個ものタブを立ち上げても重くならずに利用できるという意味での「高速」もある。JavaScriptの実効速度が高速という場合もあるし、前述のGoogle Chromeのように特定サイトで高速に動作するようチューニングされている場合もある。
今回はその中から、主にタブブラウジングを想定した4つのシチュエーションを想定し、表示にかかる時間を測定した。実験にあたってはクリーンインストールのWindows 7マシンに各ブラウザを導入して測定を行っている。Flashプラグインを導入したほかは原則としてデフォルト設定のままだが、なるべく実環境に近づけるためにFirefoxには「Configuration Mania」「Tab Mix Plus」の2つのアドオンを導入している。またIE9は執筆時点で正式版のリリースがまだのため、製品候補版を利用している。
PCのハードウェア構成は、CPUがCeleron M、メモリが512Mバイト、OSがWindow 7 Ultimate 32bitとなっている。機材の関係で、Window 7マシンとしてはややハードウェアスペックが低めになっていることをご了承いただきたい。
また言うまでもないことだが、ブラウザの速度はここに挙げた以外の条件によっても大きく異なる。例えば今回はクリーンインストール状態のPCで実験を行っているが、その他のアプリケーションをインストールした状態であれば違った結果になることも考えられる。キャッシュにRAMディスクを利用することで速度が一変する可能性もあるし、GPUによる高速描画をうたった今回のIEやFirefoxは、旧来のハードウェア構成ではレンダリング速度が遅いといった場合もある。今回の実験は、あくまで特定条件下での参考程度として見ていただければ幸いだ。
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