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ビジネスジャーナル > 企業ニュース > PS4、マニア以外をどうやって取り込む?
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ソニーPS4、マニア以外を取り込みヒットなるか?カギ握る「シェア」「実況」の壁

文=多根清史
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ソニーPS4、マニア以外を取り込みヒットなるか?カギ握る「シェア」「実況」の壁の画像1PlayStation 4(「PlayStation公式サイト」より
 3月4日、ソニーPlayStation 4(PS4)の販売台数が、全世界で600万台を突破したと発表された。そのうち、2月22日から始まった日本での販売は37万台で、初週は約32万台。PS3の初週販売が約8万8000台だったことを鑑みると大健闘といえるが、現在低迷が続く任天堂のWii Uも初週は約30万8000台売り上げており、それをわずかに上回る程度でしかない。

 今でこそ失敗作といわれているPS Vitaも、初週は約30万8000台も売れた実績があり、Wii UやPS4と大差ないスタートを切った。つまり「どんなゲームハードであれ、新製品が出れば必ず買うコアゲーマー層が国内に30万人はいる」という仮説が成り立ち得る。その層を逃しては立ち上げもままならないが、それ以上の広がりがなければVitaの二の舞いだ。さらなる成長のためには、発売日に無条件で飛びつくマニアの外にいる「さほど熱心ではない人たち」へのリーチがなくてはならない。

「ゲームマニアの外側」にアピールする上で足がかりとなるのが、PS4に標準で搭載されたシェア機能だろう。ゲーム画面のスクリーンショット(静止画像)や動画をネットにアップロードしてSNSで公開したり、リアルタイムで動画を配信して、他人とプレイ内容をシェア(共有)する機能だ。このためにPS4は専用チップを搭載し、メインチップに負担を掛けてゲームの速度を落とすことのないよう設計されている。追加の機材は一切不要で、ボタン一発でシェアできる手軽さだ。汎用パーツから構成されたPS4が「割安のゲームPC」以上の存在感を放つためのカギであり、ここに「ソーシャルゲーム機」のアイデンティティがある。

盛り上がりを見せるゲーム実況

 ゲームはハード・ソフトともに市場の縮小が急速に進んでいるが、それに反比例するようにゲーム実況は盛り上がりを見せている。その考えられる理由は、「自らゲームをプレイしなくてもゲームを楽しみたい」というゲーマーの矛盾した願いがまず一つ。今でもゲームは好きだが、やり込む時間もなくソフトを買うカネもない−−ということで、市場のさらなる縮小に働きかねない要因でもある。

 もう一つは、実況が、ゲームという文脈を離れて「面白いコンテンツ」として成熟しつつあるということ。人気の高いゲームの実況は、テレビ番組との共通点が多い。ふだん行かない場所を探索して偶然の出会いを楽しむのは『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)や『ちい散歩』(テレビ朝日系)的であり、敵の熾烈な攻撃を軽々としのいで全滅させるスーパープレイは『筋肉番付』(TBS系)などスポーツバラエティに近い。

 また、ゲーム実況をする本人がうまくなくても許される空気ができていることも、送り手・受け手ともに間口を広げている。それは今年で10周年を迎え、劇場映画も公開された『ゲームセンターCX』(フジテレビ系)の影響も大きいだろう。お笑い芸人・有野晋哉(よゐこ)扮する有野課長がお茶の間で人気者になり、「絶妙にヘタ」が褒め言葉として広まった。凡ミスを繰り返してもボヤキやツッコミといったプロの話芸でエンターテインメントになり得ると証明した有野課長は、さほどゲームがうまくない人たちに「自分も実況してみよう」と勇気を与え、ゲームに興味が薄かった人も「ソフトを買って同じ難所にチャレンジしてみよう」という気にさせたはずだ。

ゲーム実況の環境整備がカギ?

 しかし、実況を取り巻く環境は決して平穏なものではなかった。恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』(コナミデジタルエンタテインメント)の裁判の判例などが示すように、ゲーム画面はメーカーの著作物であり、無許可の実況は「著作権侵害」という本質的な問題がある。それでも見過ごされてきたのは、メーカー側がプロモーション効果を期待して黙認してきたからにすぎない。ストーリーのネタバレがゲームの核心にかかわるノベルゲームの実況について断固たる措置と「徹底抗戦」を宣言したメーカーもあり、害悪と見なされればいつでも取り締まれる「水道の蛇口」状態だった。

 そうしたネックを、PS4はきれいにクリアした。ソニーが提供している機能だからメーカーも公認であり、シェアボタンで配信・共有できる動画や画像はすべて合法。訴えられるリスクを冒さず、誰でも実況プレイヤーとなれる。

 しかし、まだ実況に立ちはだかる壁はある。まず、メーカー公認=彼らが認めたシーンしか許されないということ。PS4本体と同時発売のゲームソフト『龍が如く 維新!』(セガ)では「プレイスポット闘技場」などミニゲームだけが許可され、本編はシェアできない。『真・三國無双7 with 猛将伝』(コーエーテクモゲームス)も、声優などアーティストの著作権がかかわる音声シェアが制限されて無音となる。

 そして実況プレイヤーがモチベーションを維持するのも難しい。一部のプレイヤーはメーカーと交渉して報酬を得ているが、基本的には金銭的に還元するシステムは日本にはない。実況のために高価な機材が必要だった頃は「視聴者がコストを払ってくれれば続ける」といった殺伐としたやり取りがあったものだ。PS4のシェア機能をハードの成功につなげるには、そうした「魅力的なゲーム動画」と「魅力あるゲーム実況者」を集める仕組みの整備が急務だろう。
(文=多根清史)

多根清史

多根清史

京都大学大学院法学部・国際政治学修士課程修了。著書に『ガンダムと日本人』、『教養としてのゲーム史』、『ガンダムがわかれば世界がわかる』、共著に『超クソゲー』シリーズや『超ファミコン』『ゲーム制作 現場の新戦略』など。アニメやゲーム、政治やIT関連など、ジャンルを超えて幅広く活躍。

Twitter:@bigburn

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