11月1日、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」第3のプラットフォームとして「ニンテンドーDSi」が発売された。BB WatchではDSiのネットワークやセキュリティ機能を中心にレポートする。
■ WPAや11gに対応。ネット機能を強化した「ニンテンドーDSi」
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ニンテンドーDSi(左)とニンテンドーDS Lite(右)。DSiは背面のロゴが無くなり、カメラが搭載された
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カメラ搭載やSDカード対応など機能が大幅に強化されたDSiだが、ネットワーク機能の充実も大きな特徴だ。ニンテンドーDS/DS Liteでは最大2MbpsのIEEE 802.11だった無線LAN機能が、DSiでは最大54MbpsのIEEE 802.11gに準拠。セキュリティ面でもWEPのみ対応していたDS/DS Liteに対し、DSiではWPA(TKIP/AES)、WPA2(TKIP/AES)と、Wiiと同等のセキュリティに対応した。ただし、パッケージや本体にWi-Fiのロゴはないため、Wi-Fi Allianceの認証は取得していないようだ。
新たにメモリも内蔵し、「ニンテンドーDSiショップ」(以下DSiショップ)からソフトをダウンロードして本体に保存できるようになった。ただし、発売日時点で提供されているソフトは無償のブラウザソフト「ニンテンドーDSiブラウザー」(以下DSiブラウザー)のみ。メモリ容量は説明書などには記載されていないが、任天堂の経営方針説明会では本体メモリ容量を256MBと説明。また、DSiショップのサービス開始時期も12月下旬と明言している。
SDカードスロットはSDHCカードにも対応するほか、miniSDカード、microSDカードをSDカードアダプタに装着しての利用も想定されている。SDカードにはカメラ画像や音楽などを保存できるだけでなく、DSiショップで購入したソフトをSDカードに保管することもできる。ただし、SDカードからはソフトを起動できず、利用には必ず本体へデータを戻す必要がある。
液晶はDS/DS Liteの3インチから3.25インチへと大型化したが、解像度は共通の256×192ドット。このほか本体仕様は音量が2つのボタン式になる、電源を入れたままDSカードの交換が可能になる、電源を切らずにメニュー画面に戻れるリセット機能なども搭載。一方でDS Liteと比較してゲームボーイアドバンススロットが廃止され、電池持続時間もDS Liteの約15~19時間から約9~14時間へ下がっている(最低輝度の場合)。
さまざまな機能が搭載されたDSiだが、BB Watchではネットワークとセキュリティ関連の機能を中心にレビューする。本来の機能であるゲーム機能についてはGAME Watch、ハードウェアについてはPC Watch、音楽関連の機能はAV Watchのレポートを参照して欲しい。
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左側面。DSiは音量ボタンを新たに搭載。厚さはDS Liteがやや上
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背面。仕様はほぼ共通だがACアダプタ接続端子の形がDS Liteと異なる。なお、DSiとニンテンドーWi-Fiネットワークアダプタは接続端子が共通となっている
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右側面にSDカードスロットを搭載。DS Liteでは右側面にあった電源スイッチは本体十字ボタン付近に移動
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操作部比較。ランプの位置が左右異なり、電源ボタンが十字ボタン右下に移動。上下画面の間にはカメラを搭載した
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■ 上級者設定でWPAサポート。通常設定はWEPのみ
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初回には本体更新を促される
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ネットワーク設定は、「本体設定」から「インターネット」を選択するか、メニュー画面の「ニンテンドーDSiショップ」を選択すると本体の更新を促され、インターネット接続の設定画面に誘導される。
設定画面のインターフェイスはDS/DS Liteから一新。これまで通り接続先設定を3つ登録できるほか、「上級者設定」を選択することでさらに3つ、合計6つの設定が可能になった。
通常の接続先設定と上級者設定では利用できるセキュリティに違いがある。通常設定では暗号化キーをWEPしか選択できないが、上級者設定ではWEPのほかにWPA/WPA2が設定可能。また、通常設定では無線LANの設定システムがらくらく無線スタートとAOSSのみだが、上級者設定ではこれに加えてWPS(Wi-Fi Protected Setup)」も利用できる。
なお、通常設定は暗号化キーがWEPのみのため、アクセスポイントがWPA/WPA2に設定されている場合、らくらく無線スタートは利用できない。また、AOSSはネットワーク内で最も高いセキュリティレベルを自動で選択する仕組みだが、こちらも通常設定を利用するとWEPで接続されてしまう。WPAで設定したい場合は上級者設定を利用しよう。このほか、上級者設定ではこれまでのDS/DS LiteではできなかったプロキシやMTUの設定もできるようになっている。
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インターネット設定画面。設定1~3は通常設定、4~6は上級者設定
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通常設定で利用できるのはAOSSとらくらく無線スタートのみ
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通常設定ではWEPしか設定できない
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上級者設定はプロキシも設定可能
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設定方法にWPSが追加
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上級者設定ではWPA/WPA2が設定できる
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通常設定でAOSSを選択するとWEPで接続される
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上級者設定でAOSSを選択するとWPAで接続
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■ 「ニンテンドーDSiショップ」でブラウザを無料配信
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ニンテンドーDSiショップ
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無線LAN設定が完了すると、DSiの利用が可能になる。初回利用時には任天堂の会員システム「クラブニンテンドー」の登録設定に続き、DSiブラウザーがダウンロードできる。DSiブラウザー以外のソフトは提供されていないため、その他の機能はほぼ利用できない状態だ。
本体メモリの容量はWiiと同様「ブロック」という単位で表現され、DSiブラウザーの容量は本体メモリ容量の1024ブロックに対して85ブロック。SDカードに保存してPCで確認したDSiブラウザーの容量は8.57MBだったため、1ブロックは0.1MB程度で、ブロック全体の容量は約102.4MBということになる。本体メモリ自体の容量は256MBとのことだが、DSiショップで配信するソフトウェア「DSiウェア」用の容量はその半分程度を使用しているようだ。
DSiブラウザーはブラウザエンジンに「Opera 9.5」を採用し、ユーザーエージェントは「Opera/9.50 (Nintendo DSi; Opera/446; U; jp)」。日本語入力はATOKで予測変換機能も搭載する。通信プロトコルはhttp/httpsをサポートし、CSSにも対応。画像はGIF/JPEG/BMP/ICO/PNGに対応するが動画は非対応で、Flashの再生にも対応しない。
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発売日時点ではニンテンドーDSiブラウザーのみ無料でダウンロードできる
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DSiブラウザーの容量は85ブロック
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受信中のアニメーション。Wiiではファミコン版マリオだったがDSiではスーパーファミコン版のキャラクターが登場する
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■ DSブラウザーをベースに機能向上。Wiiに近い画面構成
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DSiブラウザーのスタートページ
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任天堂はDS/DS Lite用にもOperaベースのブラウザソフト「ニンテンドーDSブラウザー」(以下DSブラウザー)を発売していたが、画面のインターフェイスはDSブラウザーと比べて大幅に変更。画面下部に10以上の機能アイコンが並んでいたDSブラウザーに対し、DSiブラウザーは「進む」「戻る」「再読み込み」「お気に入り」「ホーム」「上下画面入れ替え」「文字サイズ変更」「拡張ツールバー表示」の8つに集約。アドレス入力や履歴、画面表示の切り替えなどの機能は「拡張ツールバー」から行うようになった。
また、スタートページもDSブラウザーは公式サイトへのリンクと検索ウィンドウのみだったが、DSiブラウザーではアドレス入力や検索、お気に入りボタンが画面中央に表示されるなど、全体的にWiiの「インターネットチャンネル」に近い画面構成。本体設定もDSブラウザーは専用アイコンでどこからでも変更できたが、DSiブラウザーはスタートページの「設定」ボタンでのみ変更できるようになっている。
Cookieの扱いも大きな変化で、電源を切るたびにCookieがリセットされていたDSブラウザーに対し、DSiブラウザーはCookieを保存できるようになった。このほかDSiブラウザーは初期設定の検索がYahoo! JAPANのみで、任意の検索を手動で追加できたが、DSiブラウザーではYahoo! JAPANとGoogleの選択式となった。
一方、DSブラウザーに搭載されていた画面のズーム機能はDSiブラウザーでは省略され、代わりに文字サイズを3段階で変更できるようになった。また、DSブラウザーでは縦長表示の際に新しいWebページにアクセスするごとに機能説明のヒントを上画面に表示していたが、DSiブラウザーでは設定画面で各機能の詳細を上画面で説明するようになっている。
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DSiブラウザー(左)とDSブラウザー(右)のスタートページ比較
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設定画面。DSiブラウザーはWiiに近い画面構成
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BB Watchを表示したところ
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■ 表示速度は高速化。自動折り返しなど閲覧支援機能も
Web閲覧の速度はDSブラウザーと比較して非常に高速。BB WatchのトップページもDSブラウザーではロゴが表示されるまでに相当時間がかかるが、DSiブラウザーであればURLを入力した直後にロゴが表示される。読み込み中に先を読み進められるので便利だ。
通信速度はDSiブラウザーがFlash非対応のため、BNRスピードテストの「画像読み込み版」で計測。5回計測の平均は約350Kbpsで、DSブラウザーの2倍程度だった。画像読み込み版はCPU性能などにも大きく影響されるため数値はそれほど高くないが、データを読み込みながら閲覧できるためにそれほど遅いとは感じない。
ハード |
1回目 |
2回目 |
3回目 |
4回目 |
5回目 |
平均 |
DSブラウザー |
148.30kbps |
169.03kbps |
178.77kbps |
148.30kbps |
148.97kbps |
158.67kbps |
DSiブラウザー |
323.03kbps |
368.03kbps |
384.13kbps |
387.65kbps |
329.86kbps |
358.54kbps |
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BNRスピードテストの測定結果 ※DSブラウザーの数値は前回レビュー時のもの
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表示形式はDSブラウザーと同様に上下の片方を通常表示、もう片方を縮小表示するモードと、2画面を1画面として縦長で表示するモードを搭載。表示の切り替えも高速化されており、それほど待たされている感はない。
また、新たな機能として文字の自動折り返し機能も搭載。通常表示では文字列が画面をはみ出す場合も、折り返しを設定していると画面幅に合わせて自動で折り返してくれるため、閲覧性が高まる。このほか任意の文字のドラッグして検索する機能も搭載した。
ズーム機能は非搭載だが、縦長表示モードでは文字サイズを3段階に設定可能。ただし、解像度が低いこともあって文字サイズを小さくすると文字の判別が難しい。
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通常表示。下画面をタッチペンで操作する
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上に拡大画面を表示
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縦長モード
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折り返し表示オフの場合、長い文字列は画面からはみ出す
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折り返しがオンの場合はDSiの画面に合わせて文字を折り返す
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特定の単語をドラッグして検索できる
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文字サイズ「大」
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文字サイズ「中」
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文字サイズ「小」
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■ 文字入力はソフトキーボード。ファイルアップロードは非対応
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文字入力はソフトキーボード
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文字入力はソフトキーボードと手書き入力の2種類。ソフトキーボードは50音のひらがな配列と英文字配列が選択でき、英文字配列ではローマ字入力も可能。インターフェイスはWiiのソフトキーボードと似ているが、Wiiで搭載されている10キーは非搭載。
手書き入力はすべての入力を受付ける標準モードのほか、ひらがなもしくはカタカナ、英数字だけ認識するモードも搭載し、認識率を高められる。
漢字変換は予測変換機能が利用できるが、通常の漢字変換機能は備えておらず、連文節変換にも対応しない。予測変換に変換した漢字の候補があればいいが、そうではないときは文節の指定などができないため、こまめに文字を変換して入力していく必要がある。
基本的にはタッチペンで操作するが、十字ボタンなどでも操作は可能。B+左右ボタンで「進む」「戻る」、Yボタンでカーソル移動範囲をWebとツールバーで入れ替える、RLボタンでカーソルを移動するなど、ボタン操作を組み合わせた機能がいくつか用意されており、ブラウザに内蔵された説明書からこれら機能を確認できる。
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英語配列キーボードでローマ字入力の日本語も可能
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手書き文字認識機能
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手書き認識は似た字の候補を表示できる
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いくつかサイトを表示したところ、mixiは読み込みに時間はかかるものの日記投稿なども可能で、Gmailも簡易HTMLモードでメールが送信できた。ただし、ファイルの添付やファイルのダウンロードは非対応。また、Flashも搭載していないため、YouTubeやニコニコ動画などは視聴できない。
カメラ機能が搭載されただけに、撮影した写真をブログやSNSに投稿するといった利用ができないのは残念。また、DSi発表時には岩田社長がポッドキャストについて言及していたが、DSiはダウンロード機能がないためにポッドキャストのファイルを直接ダウンロードできず、PCでダウンロードしたファイルをSDカード経由で再生するしかない。このあたりもせっかくSDカードを搭載しただけにダウンロード機能が欲しいところだ。
このほかDSiブラウザーやWiiと同様、デジタルアーツのWebフィルタリングサービス「i-フィルター」にも対応。有害と思われるサイトの表示をブロックできる。月額料金は315円だが、2009年10月31日まではキャンペーン期間として無料で利用できる。
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mixiで日記投稿が可能。ただし画像はアップロードできない
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Gmailは簡易版を表示
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ニコニコ動画やYouTubeは「表示・再生できないもの」として動画が視聴できない
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■ Wi-Fiコネクション対応タイトルは現時点でWPA非対応
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DSiと同時発売の「歩いてわかる 生活リズムDS」。Wi-Fiコネクションの設定は従来のソフトと同様WEPのみ
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ブラウザ以外のネットワーク機能として、任天堂のゲーム向けネットワークサービス「ニンテンドーWi-Fiコネクション」(以下Wi-Fiコネクション)の動作も確認。Wi-Fiコネクション対応の第1弾タイトル「おいでよ どうぶつの森」をDSiに装着してWi-Fiコネクションに接続したところ、上級者設定のWPAのみの場合はエラーが発生してWi-Fiコネクションに接続できず、上級者設定に加えて通常設定でWEPを設定しておくとWi-Fiコネクションが利用できた。
また、DSiと同日発売のWi-Fiコネクション対応タイトル「歩いてわかる 生活リズムDS」も、WPA設定のみではWi-Fiコネクションに接続できない。エラー画面から表示されるWi-Fiコネクション設定画面は従来と同様の画面が表示された。
DS/DS Liteの場合、Wi-Fiコネクションの設定は本体で直接行うことはできず、対応ソフトの設定画面から本体のWi-Fiコネクション設定を呼び出して行っていた。WPAに対応したDSiだが、通常設定がWEPのみとなっているのは、こうした旧ソフトに対応するための施策のようだ。
■ ネット機能は大幅拡充。今後のWPAサポートに期待
IEEE 802.11gの採用で通信速度を高速化し、WPA対応でセキュリティも高まったDSi。標準搭載ではないものの無償でDSiブラウザーを配信するなど、ネット関連の機能は大幅に拡充された。DSiブラウザーも以前のDSブラウザーをベースにより操作性などが高められており、Web閲覧が中心であれば十分に使えるレベルだろう。
また、現時点ではサービスが開始されていないが、DSiショップでソフトを購入し、本体メモリに保存できる機能も期待したい。Wiiではすでにバーチャルコンソール配信専用タイトルなどが登場しているが、こうしたソフトの拡張によって自分ならではのDSiを作り出せるところが、DSiの大きな魅力の1つと言える。
その一方で、せっかく対応したWPAが活かし切れていないのが非常に残念。現時点では現行のDSソフトでWi-Fiコネクションを利用するにはWEPで接続せざるを得ず、かねてから指摘されているWEPの危険性が未だ残り続けることになる。
過去に発売した作品をWPAに対応させるのは難しいという面もあるだろうが、DSiと同時発売の生活リズムDSは、任天堂のホームページで掲載されているインタビューによれば「DSiのために設計をやり直した」という発言があるだけに、DSiを前提として設計されている。さらにはDSiと同時発売のWi-Fiコネクション対応タイトルであるにも関わらず、WPAのサポートは考慮されていなかったのは残念だ。
とは言え、DSiブラウザーはWPA接続で利用でき、今後はWPAでWi-Fiコネクションが利用できるタイトルも登場してくるだろう。少なくとも現状のDS/DS Liteのような「WEPでしか接続できない」という状況は改善されてはいる。今後WPAが利用できるWi-Fiコネクション対応ソフトがDSi専用ソフトのみとなるのか、DSとDSi両対応のソフトでもWPA対応となるのかは現時点ではわからないが、できるだけ早いWPA対応タイトルの登場を待ちたいところだ。
■ URL
ニンテンドーDSi
http://www.nintendo.co.jp/ds/series/dsi/
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(甲斐祐樹)
2008/11/01 17:21
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