「粘菌(ねんきん)と芸術の融合」をテーマに活動する「粘菌研究クラブ」が3月で活動5周年を迎えた。
移動する動物的な性質と胞子によって繁殖する植物的な性質を併せ持つアメーバのような生物「粘菌」。粘菌研究の先駆者として知られる博物学者の南方熊楠(くまぐす)の研究が専門の秋田公立美術大学大学院准教授の唐澤太輔さんが呼びかけ人となり、2020年にクラブを立ち上げた。現在のメンバーは、同大生や教員、卒業生などを中心に54人。
以降、粘菌にまつわる文献の研究や採集・観察、粘菌が題材の美術作品の制作、ワークショップなどに取り組む。2024年7月から、南方熊楠記念館(和歌山県白浜町)で「粘菌ねぶた」が展示されているほか、昨年12月発行の美術専門誌「美術手帖」でクラブの取り組みが紹介されるなどして注目を集める。活動記録冊子「コスモグラフィア」の5冊目を3月10日に発行した。
同クラブメンバーで同大学院2年の羅雪薇(ら・せつび)さんは「粘菌が何なのかを知らずに入部した(笑)。頭と手を使って作業する作品の制作や、顕微鏡でミクロの世界を探索できる活動が楽しい」と話す。
唐澤さんは「大学構内にある資材置き場の朽ち木に生息する粘菌を見つけたのが活動のきっかけ。5年間で制作や展示の規模、活動範囲が広がった」と振り返る。「来年度は、音に着目した作品の制作に挑戦したい。秋田を拠点に世界へ目を向けた粘菌の発信ができれば」と意気込む。
活動記録冊子は、秋田県内の図書館に備える。