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2014年01月26日

三期連続赤字の任天堂がこの先生きのこるには


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任天堂が第3四半期決算を前にして、今期の業績予想を下方修正し、三期連続の赤字がほぼ確定となった。第4四半期に膨大な売上をあげれば巻き返しもできるだろうが、年末商戦を終えた1〜3月にゲームソフトやハードがバンバン売れるということは考えにくく、おそらくは下方修正後の数字通りの結果となるだろう。

そもそも当初の業績予測の見積が甘すぎたし、下方修正が遅すぎたし、とんでもない下方修正ぶちかましたのに株価が思いのほか下がらなかったのは投資家からも「ああ、下方修正?分かってたよ」としか思われてなかっただろうし、投資家向けの広報面で重大な問題を抱えている感じが見受けられる。

ダメダメIRはともかくとして、ゲーム会社として任天堂は今現在どういう状況に陥っているのだろうか?

主力製品となるはずだったWii Uの不振については詳しく説明するまでもないが、全体的に見て好調だったニンテンドーDS/Wii全盛期と比べると、あらゆる面でバランスを失っている印象を受ける。

日本にいる限り、ニンテンドー3DSの好調っぷりは明らかだが、実はニンテンドー3DSについても従来予測から下方修正を行っている。3DSの何がダメだったのか、それは海外市場だ。

国内ではたしかに好調だが、海外での3DSの売れ行きはそれほど好調ではない。
長く続いた円高からようやく抜け出し、円安に向かっていく中で海外での売上が伸び悩むのはダメージが大きい。

続編タイトルと新規タイトルのバランスも悪い。出来はいいんだけど、マリオ、ゼルダ、マリオ、ゼルダと続けられるともういいよと言いたくもなる。
全くの新規タイトルでのチャレンジがなくなったわけではないが、フルプライスではないダウンロード専売ソフトという逃げ道が出来たせいで、こじんまりと収まってしまい、以前のようなアグレッシブなタイトルが減ってきている印象を受ける。

他にも、自社タイトルとサードパーティのバランス、リリース時期とクオリティのバランス、質と量のバランス、あらゆる面で戦略がうまくかみあっていない。

しかし、なによりWii Uの不調が痛い。
せっかく標準搭載したゲームパッドが「テレビを付けなくても遊べて便利だよね」「マップが常時見えててわかりやすいね」程度の活用しかされていない。Wii発売時にWii Sportsで強烈に示した新ハードのビジョンがWii Uでは未だに見えてこない。パーティゲームで一人だけ専用の画面があるという非対称性は分かるが、それはDSでもできていたことだ。

ビジネスとして失敗に終わったゲームキューブとWii Uが重なって見えてくる。ゲームパッドは、ゲームキューブの底面にあった何に使うのかよくわからない端子群と同じようなものなのだろうか。

ゲームの開発コストがそれほど大きくなかった頃は、「まずは自社タイトルでハードをけん引し、ハードが売れてくればサードパーティは勝手に集まってくる」という考えても良かっただろう。だが、自社ハードがずっとSD画質だった任天堂にとって、数年遅れのHD画質転換はWii Uのスタートダッシュを大きく遅らせる要因となってしまった。しかもゲームパッド対応でさらなる負担が必要になる。

Wii Uも3DSも、国内も海外も、新作も続編も、フルプライスもDL専売も、任天堂1社で全部やっていける時代ではない。以前と違い、自社タイトルを外注することも増えてきたがそれでも全然追い付いていない。

そんな中で、任天堂はどうすればこの先生きのこれるだろうか。

…と、ここで任天堂の未来に光が差し込むような具体的なビジョンを華麗に提示できれば誰も苦労しない。
いや、ほんと、どうしたらいいの。

長年任天堂を眺めてきたファンとしては「DSとWiiなんて夢だったんだよ」と成功した日々を忘れてしまって、暗黒時代に戻るだけの話なので、別にそれはそれでいいかなという気がしないでもないが、ほとんどの人は納得しないだろう。

このままずるずると沈んでいくのなら、いっそビデオゲーム以外のビジネスに乗り出すのもありかなと思う。
任天堂がビデオゲーム以外のビジネスを手がけるという話をすると、先代社長の山内氏のことを持ち出す人がいると思う。彼は岩田社長に「異業種には絶対手を出すな」と言って社長の座を譲ったという。

一代で任天堂を世界的企業に押し上げた人の言葉は重い。
力強いアドバイスであるのと同時に、呪いの言葉でもある。

しかし、社長交代から10年以上過ぎた今、岩田社長はそのことを「ビデオゲーム以外の業種に手を出すな」という意味では捉えていないのではないだろうか。
岩田社長は山内氏の葬儀において、以下のような弔辞をしている。

山内さんが若い時には多くの失敗を経験したとお聞きしたことがあります。 数多くの失敗と、小さな成功を繰り返しながら、任天堂自身はカードゲームの会社から玩具の会社に変身し、さらに、電子玩具の会社に変身し、そしてゲームアンドウォッチなどの電子ゲームの会社に変身し、そしてさらに、ファミコンの誕生によってビデオゲームの会社に変身していきました。 任天堂の歴史は、任天堂自身の変身の歴史でもあります。

数多くの失敗と、小さな成功の中には広義の"ゲーム"以外の娯楽も多数含まれていることは周知のとおりだ。
それも含めて、任天堂の変身の歴史だと言っている。

そして、弔辞は以下の言葉で締めくくられた。

山内さんの大切にしてきた娯楽の本質を見失うことなく、同時に、山内さんがされてきたように、これからも環境に合わせて柔軟に変化する任天堂であり続けることを、ここにお誓いし、お別れの言葉とさせていただきます。

山内氏と同じように任天堂を変化させる決意の言葉だ。
もはや、岩田社長は山内氏の「異業種には絶対手を出すな」をビデオゲーム業界に任天堂を縛り付ける呪いの言葉だとは思っていない。人々を喜ばせる企業でありつづけながら、常に変化することが任天堂の存在意義だと考えている。

今月末には第3四半期決算が出る。そこで、岩田社長は今後の見通しについて意見を述べる予定だ。
任天堂はどう変化するのか?楽しみにしたい。


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